男同士じゃないとこぶしを合わせないと仲良くなれないということはない
注意書き!!
この章はしばらく胸糞展開になる可能性が高いです!!その点を理解したうえで読み進めていただけると幸いです!!
人工知能による反乱が起こり終結してから早2か月が経過、俺たちがいるのはサンデュールズ星系外延部のアヴァロンが通常空間に遷移予定のポイントだ。
アルビオンによるワープを利用してこのポイントに移動したのは1カ月ほど前になる、1カ月は何をしていたのか?また外宇宙のほうに繰り出していろいろなマテリアルなんかを採掘・収集していたよ。何せギャラハッドの左腕修復に必要なマテリアルが軒並みなかったもんでね…そもそも装甲自体はそれほど珍しいものでもないんだけれど内部パーツに必要なものが軒並み希少物質なもんで集めるのに相当苦労していたってわけだ。
まぁ苦労のかいもあって十分な量は集まったし、予備パーツを作れるくらいには確保できた。ついでにキスハとエルピダ用のプレゼントになるものも作ったり(前に作ったものはモルガンの手が入ったのでモルガンからのプレゼントということにした)、シイナとカンラ専用機を建造というか設計していた。設計中の機体名は『プロヴィデンス』「見通すもの」という意味を持った機体とした、みんなが思い浮かべているかもしれないあの人が乗ってるアレとは全く別なので安心してほしい。
「っと…そろそろか?」
『はい、アヴァロンの通常空間遷移まで後あと…3…2…1…来ます。』
正面の何もない空間がふいに紫電をほとばしらせたと思った瞬間、アヴァロンが紫電で向こう側が見えないところからするすると現れる。
久しぶり…実際に最後にアヴァロンを見たのはもう4か月近くになるのか、懐かしいと思うのも仕方ないかもしれんな。しっかし…でっけぇなぁ…アルビオンのほうがはるかにでかいとはいえ、大きさ的に言えばアルビオンはローゼン・エーデルシュタインの『スターリング・シルバー』とどっこい…いや、まだスターリング・シルバーのほうがでかいか。
「っと…流石は娘たち、ちゃんと通常空間の遷移先の調査はしていたか。いいねぇ…」
『アヴァロン、カタパルト起動を確認AMRS4機発艦します。』
「よし、俺は出るぞ。事前の作戦通りに、ギャラハッドは…あきらめろ!!」
『…死ぬのだけは許しませんよ。』
「わかってるって!!じゃ、そのあとのことは任せたぞ!!」
こうなるであろうことも予測して俺は娘たちに胸を貸すつもりで出撃する、さっきモルガンに言った通りもしかすると…いや。もしかしなくともギャラハッドは破壊されるだろう、せっかくマテリアルとかも採掘したのに…というかなんで破壊されること前提としてんのに採掘なんて無駄なことしたのかって?簡単だよ、俺が自分に対して「整備できてないから負けた」なんて言い訳をしないためだ。
何も語ってくれなくとも、たぶん本気でモレッド達は俺に挑んでくるだろう。油断も隙も慢心も無く、本気で…殺す気で俺にかかってくるだろうと予測していた。
理由なんで簡単だ、自分たちを殺しにかかってきた(であろう)父の真意を確認したかったから。本気でぶつかり合わなきゃいけない、これはある意味命を懸けた親子喧嘩だ。
傭兵稼業をする人間でもこれほどまでに緊迫するような状況はまず起こりえないであろうこの状況で、俺はなぜだかわからないが顔がほころんでしまっていた。
「ふっ…殺るなら本気でかかって来いよ…モレッド・キスハ・エルピダ…」
格納庫に向かう途中、ちょっとだけ自室のパソコンをいじってからパイロットスーツを着込みギャラハッドに向かった。
さてさて…極限まで追い込まれた娘たちの実力を見せてもらおうかな!!
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モレッド視点
「じゃあ…行くよみんな。」
「「「行こう…」」」
「発進。」
イカロスの発艦に続くようにキャスパリーグ・アトラク=ナクア・ファルクルムが発艦、アヴァロンが通常空間に遷移するときにアルビオンがすでにその場にいるということである意味手間が省けた。今頃お父さんも準備してるんだろうなぁ…どんな気持ちで私たちと相対するつもりなんだろう?
私たちの気持ちを踏みにじって…私たちを殺しかけて…それでもなお私たちの前に顔を出したお父さんは…いったい何を考えてるんだろう?2か月前、私はキスハたちを集めて話し合いをした。
内容は「お父さんとどうコミュニケーションをとるか」、言葉だけじゃ私たちは納得できない。お父さんを自分の手で殴ったとしてもこの気持ちは晴れることはない、ならばどうすればこの気持ちは晴れる?そういう話をした。
意外というほどでもないけれど答えはすぐに出た。「お父さんと本気の戦いをして打ち負かせばいい」という答えが私たち4人の総意になった、だから私たちは本気でお父さんを殺しにかかる覚悟を持って機体を準備して、シミュレーションで連携を整えたりできうる限りアヴァロンのファクトリーで各自の機体に独自改造を施した。
お父さんの戦闘において最も重要なのはその機動性だ、だからその足さえ潰してしまえばあとはどうとでもなるという意見が満場一致だった。でもそもそも足を奪うための攻撃が当たらない、でも足を止めないと攻撃も当たらないというジレンマが発生しちゃった結果生み出したのが各機に搭載された『対ギャラハッド用戦略妨害兵装『エレイン』』。
見た目はイカロスに装備された換羽に酷似しているけれど、性能は対ギャラハッドと銘打つだけに強力だと思う。
簡単に言えば『ギャラハッドの機体反応を検知した瞬間に自立行動でまとわりつき、スラスターなどの推進系にダメージを与える』というもの、しかもこれは飛び道具ではなく一種の自爆兵器なので初見殺し武装だ。
一応ダミーで砲門事態はあるけれども、有効範囲まで接近し次第即自爆。スラスターかもしくは四肢パーツに異常振動を発生させ内部機能のダウンを狙う。人体で言えば外見は全く問題ないのに内蔵とかがボロボロ!!みたいな感じになる武装と思ってくれればそれでいいと思うな。
「アルビオンからAMRS1機出撃!!ギャラハッド!!」
「ありがとシイナ、それじゃあ皆始めようか。」
「「「了解」」」
さぁお父さん、これがあなたにぶつける私たちの気持ち。お父さんは私たちになにを返してくれる?
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「ん?ところどころに見たことないものが付いてるな…アヴァロンのファクトリーで何か開発したか?どこまでやるか見てやるか!!」
見たこともない武装を持った4機、特に外観が変わったのはシイナの駆るファルクルムだな。一人での運用を前提とするために機動性を犠牲にしてセンサー半径を可能な限り伸ばそうという意図が見える、カンラに操縦権の優先度は強く割り振っていたしシイナ自身も多少は訓練で克服はしたけれども限界があったとみていいな。
後は間違いなく全機実弾装備で来ているといったところか?まぁここまで来て演習弾なんて持ってきたら白けるレベルだったが、そこまでモレッド達も腑抜けてはいなかったようで何よりだな。
「…モールト?でも4機とも出している…どういうことだ?」
違和感を感じながらもモレッドの操るモールトと接近する軌道自体は変わりがなかったために、俺は同じ対応で行けるだろうと考えてスラスターを吹かすのをやめサーマルステルスで小惑星を盾にしながら接近しようと試みる。
いつものモレッドが操るモールトならばそれで対処ができた、何せレーダー系は基本廃熱などを探知するからそうするだけでレーダーから消えてしまえば反応できなくなるからだ。
だが…このモールトは違ったようだ、なにせ…
「んなにぃ⁉」
寸分の狂いもなくギャラハッドに肉薄し、すぐそばまで来た瞬間に自爆したのだから。
機体に大きな損傷を与えることはなかったものの、企業連のミサイルにやられた時と同じ症状…つまり異常振動による内部パーツエラーが全身で発生。機体を動かせないということ自体ないものの、初手から大ピンチに俺は追い込まれたのだった。
モルガンたち「ハラハラ(´・ω・)」
カンラ「ぱっぱ頑張って!!(;´・ω・)」




