別に敵に寝返ったって傭兵だから仕方ないよねっ♡
さて、人工知能達との戦争から離脱した直後です。
いやぁ...企業連の皆様方ほんとにしつこいのなんの、「途中破棄など認められるか!」「いいからその艦を寄越せ!!」とかもう途中から本音と言うかアルビオンが欲しくてたまらないって感じがボロボロ出てきちゃってねぇ、そう簡単に渡すわけもないしもう逃げる事は確定してたんでさっさと亜空間航行に入って離脱したわけですよ。
因みに亜空間航行の時、たまーにではあるんだけど周囲1km以内に居ると中途半端な形で亜空間に呑まれる事がある。俗に言う巻き込みなんだけど、これが艦艇で起こっちゃうと文字通り亜空間に変な形で引きずり込まれるから下手をすると一生亜空間から出て来れなくなっちゃうんだなぁ。
一応亜空間航行に入る艦艇は特定の信号を出して周囲に近付かないように注意を促すか、同期をかけて一緒に移動するかになるんだけど企業連の皆様は離脱をちゃんと選んでくれましたよ。
この戦線のトップが離れる訳には行かないもんねぇ?
「さてさて...どうしたもんかねぇ?」
今居るのは食堂横のラウンジとでも言うのだろうか?部分だ、カンラはまだ食堂でグィネヴィアに餌付けされてるぞ。雛鳥が親鳥から餌付けされてるみたいで可愛かったですはい。
『このまま戦争から離れると言うのも手ですが?』
「そうしたい気もするが...この戦いは人工知能の権利を求める戦いでもあるからなぁ、お前達がいざ人工知能だと公表する時に面倒があっても困るんだよな。」
『いっその事私達の義体も純度100%の有機素材で作り上げますか?』
「それもありっちゃありだけどなぁ...ぶっちゃけ弱くなるぞ?」
『あなたの傍に居られるのならばそれも許容範囲ですよ。』
おぉう...予想外の言葉に顔が熱くなるな...偶にこういうセリフを吐くのはズルいと思いますっ!!少し微笑むせいで破壊力が爆増するのだ、勘弁して欲しいね全く。
全身を有機素材にする事で起きる事と言えば先ずは軽量化だな、今は骨格の部分をモルガタイトを使用したりしているからどうしてもその分重量が嵩む。最高グレードの素材を使いまくったモルガンは俺よりもウェイトがあるしな、それともうひとつはメンテナンスのフリー化だ。
代謝が行われるのでそれこそ老化と言ったようなデメリットも出て来るが、ソレを置いてもあまりあるメリットだろう。
逆にデメリットで最大なのはさっき言った通り「弱くなる」事だな、骨格も全て金属では無く骨...つまりはカルシウムの化合物になる訳だから金属に比べれば圧倒的に脆くなる。
後は...そうだな、脳に当たるメインコンピューター。これも有機素材にすることは可能だがかなりデリケートな物なので、白兵戦への参加が難しくなるという事かな?まぁその辺は大量のBOTでいくらでもカバー出来るから気にしないでもいいか。
「とりあえず1度キガラヌアコロニーに行こう、そこで何かしらの情報収集でもしようや。」
『承知しました、では進路をキガラヌアコロニーに向けます。寄港までにかける時間はどれくらいになさいますか?』
「1日でいいだろ、そこまでかけるものでも無いし。向こうも早すぎるって突っ込むこともしないだろうしな。」
ラウンジでモルガンとの会話を終えた後、カンラに「もしかするとしばらく戦闘は無いかもな。」と伝えた所「なーんーでー!!」とプンスコしたのは言うまでもない。
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「指名依頼だぁ?」
「そのぉ...匿名でソラ様宛に届いておりまして...」
「指名される程の事を成し遂げできたつもりは無いんだがねぇ?どう思う?」
「こちらとしても何とも...名を挙げてこそいらっしゃいますが、あまりにも短期間かつ規模が大き過ぎるので...」
「まぁそれについてはいいや、指名依頼の内容は?」
キガラヌアコロニーの傭兵組合に来た俺とモルガンは、途中での依頼破棄の事後報告(リアルタイムでの通信は聞いて貰っていたが間違いないかの報告)の為に窓口で話していたんだが、横槍を入れるかのように聞いてくれていた職員の横から見るからに気弱そうな職員が入って来たので呆れ気味になりながらも話を聞くことにした訳だ、気弱そうな癖に話の最中に割り込んでくるあたり空気が読めないのか...はたまた今話を聞いてもらってた職員よりも立場が上なのかだが恐らくは後者の様だな。
明らかに報告を聞いてくれていた職員の方が恐縮しているみたいだし、この仕草もこっちにとっつきやすくするための演技かな?
「まぁいいや、ヘタな芝居なんかしないでさっさと要件は言ってもらおうか?支部長殿?」
「おやおや...私も衰えたかな?バレるようなことはしてなかったはずだがねぇ...」
「そっちの職員さんの態度だよ、で?なんでこのタイミングで指名依頼の話なんかした訳だい?」
気の弱い振りはもうやめたと言わんばかりに態度が大きくなったが、まぁそんなことは気にする事はない要は俺達にとって有益か否かでしかないからな。
「簡単だよ、この戦争きな臭すぎるだろう?」
「言われるまでもねぇわな、人工知能の反乱とは言っているが向こうはこっちが手を出すまでは静観状態だったし、どちらかと言えばこっちを気遣う様な素振りすらあった。まぁ...俺はやり過ぎたから本気で堕としに来てたけどなぁ。」
「そうだね、戦地に向かってくれた他の傭兵達からもその違和感は報告されている。本当に人工知能の権利を主張する為だけに今回の事を起こしたように見える。」
俺は一応今回の事が起きること自体は知っていたけれど、企業に開発された人工知能がどのような経緯を持って事を起こしたかまではさすがに知らない。この戦争に参戦したのだってモルガン達の立場が良くなるから程度にしか考えていないしな、どうなっちまうのかまでは全くわからんけれどもね。
「まっ指名依頼とは言ったけど、はっきり言えば企業連側が怪し過ぎてこっちとしてもやってられないなと思ってね。本部の方には監査に入るよう連絡はしてるけど、のらりくらりとかわされることは目に見えている。だからいっその事企業連ぶっ潰しちゃえって思ってね、人工知能側と何とかコンタクトを取れないかな〜ってルートを探してたんだけど...」
「人工知能側から既に窓口が作られていたと?企業連の調査網をすり抜ける形で作られた物が。」
「ご明察、僕の端末に身に覚えの無いプログラムが紛れ込んでいたんだよ。最新のプロテクトもかかっていたのに、それすらも掻い潜って来るんだから大したものだよねぇ。それで企業連が何やらきな臭い研究をしていたって証拠と一緒に『我らと人類の共生出来る世界を望む』ってテキストメッセージもね、いやぁここまでやって貰って気持ちが揺れ動かないなんてのは人間としてどうかと思うよね。勿論提出された証拠の裏は現在取っている事だしどの道今の高度宇宙社会において、全ての仕事を人間だけでこなすなんて不可能だ。ならば借りられるものは借りるべきだと僕は思う、人間の仕事を人工知能に奪われる?冗談じゃない。元々出来ていない事を出来る存在に任せて何が悪いって話だと僕は思うね、だから僕は個人の裁量ではあるけれども人工知能側に着くべきだと判断した。」
「なるほどねぇ?報酬は?」
「少なくとも企業連よりは多めに出そう、コレは傭兵組合キガラヌア支部から傭兵ソラ・カケル個人に向けた指名依頼だ。ついでに言えば成功するにしろしないにしろ身内の権利については傭兵組合が全権を持って保護すると約束しよう。」
思わず目付きが鋭くなる、それはモレッド達家出娘の事を言っているのか...それともモルガン達の事を言っているかで大きくこの場の流れが変わるぞ。
『私の方から支部長に正体を明かしました、必要な措置かと思いましたので。』
「なぁっ!?」
「勿論この情報については僕から何処かに流す予定は無いよ、寧ろ流してしまえば企業連の連中に余計な悪知恵が働きかねかいからね。それに提供されたデータもコピーは疎か別の端末に移すという事すら出来ない始末さ、画像データにしようとしても文字化けするし...ホントにどれだけの高性能AIを組み上げたんだい?」
「いやぁそれほどでも...」
「褒めてないんだけどね...まぁいいや、勿論家出をしたって言う娘さん達も同様だ。サンデュールズに向かっているんだってね?そちらの支部にはもう通達しているから安心してくれていい「今や稀代の英雄クラスの傭兵の娘達が家出してそっちに向かっている、ここでトラブルなんて起こしたらその傭兵が辞めちゃうかもよ?」ってね。」
なかなかイイ性格をした支部長だな...気に入ったぞ。
「じゃ、大手を振って人工知能側に着きますかね。」
「あぁ、勿論陣営が違えば傭兵も敵になる。そこに一切の躊躇は必要無いよ、そこは引き際を誤った奴の責任だからね。」
「勿論だ、それを理解できてなきゃ傭兵なんて続けられんもんな。」
とってもいい顔でニッコリしてくれた支部長に手を振って俺とモルガンは組合を後にした、後で俺からモルガンに説教と言うか苦言を呈したので意外と思われるかもしれないがモルガンはかなり凹んだ。
カケル「なんで勝手にそういう事するの( ゜д゜)」
モル「良かれと思ったので( ᵒ̴̶̷̥́ ⌑ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )」




