戦場は何時でも予想出来ない事が起こる
「よく見とけよカンラぁ!!」
「あいっ!!」
周囲を中隊規模のAMRSに囲まれる中俺はカンラにこれから行う機動をよく見ておくように伝えると、一気にフルブースト。一直線に真正面に陣取るAMRSに突貫する、当然直線的な動きであれば偏差射撃を持ってすれば簡単に被弾するだろう。
だが直線行動をしたのはほんの数秒、敵機のマズルフラッシュを確認した瞬間にギャラハッドは機体を下にスライドさせながらバク宙の要領で180度方向を転換してこっちには来ないと思っていたであろうAMRSに再度急接近する、流石にこの動きには初見での対応は不可能だろ?未だ明後日の方向を向いている敵機の銃口を見て俺はニヤリと笑う。
「先ず1機目ぇ!!」
アロンダイトを逆手に持って振り抜くように胴体を横なぎに直ぐ次の標的に、有難いのは俺を囲む様に布陣して居たので1箇所穴さえ開けてしまえばそこからは流れ作業で行けちまうことだな。
多少列に幅が出来ていてもそこは頭部バルカンやアロンダイトの砲撃でどうとでもなる、例えさらなる援軍が来てもマーゾエ達も居ることだしな。
モ○ハ○の双剣で出来る乱舞の様に敵をちぎっては投げちぎっては投げを繰り返せばそれだけで中隊規模程度余裕のよっちゃんですわ、バッテリー駆動方式な為に大量のエネルギー消費を前提としたパッケージを使えないというデメリットこそあれどそれさえ気にしなければむしろ扱いやすいレベルではある。
弱点と言えば連続稼働時間が1日しかない、しかもそれは戦闘などを行わない通常運転時の場合なので機体の各所に負荷をかける戦闘機動の時は大体稼働時間は3割は短くなる。それと機体に外装式でくっ付けた補助バッテリーが地味に重たいので余計なモーメントがかかるのも気になるな、慣らし運転の時はここまでの機動戦しなかったからかも?
「えぇい!!友軍機は何してる!?こっちにどんどん流れて来るぞ!!」
短時間にバカスカ堕としまくりすぎたせいかものすごい量の敵が俺に群がってくるのだ、物によっては中破してるような奴すら俺に寄ってくるぞ!?
『方位150から中隊規模集団接近!!』
「えぇい!!まだ終わらんのか!!グリトネアぁ!!」
『ターゲットロック…集中砲火!!』
流石にこの機動のままでい続けるのは幾らサブシートの性能が良くてもカンラがキツイ!!
「…うえぇ…」あぁっ!?カンラっ吐くなっ!!
「ちきしょうてめぇらァ!!」
『っ!?全機有効範囲から退避っ!』
「これでも持ってけぇ!!」
使ったのはアロンダイトから放たれる反応弾の1種素粒子『アーテル』を利用した広範囲爆破弾頭だ、本来のアロンダイトであればフルチャージを行う事でMBHを発生させ周囲を巻き込むと言う事が出来るが今のバッテリー駆動ではそんな事しようとしてもそもそも容量不足で出来ない。
それを補う用として開発されたのがアーテルを用いたこの弾頭って訳だな、アーテル自体はアルビオンの外殻に使われてるアルバスと似たようなものなんだが違う点は「アルバスが単体で安定していて他に影響を受けない」という事に対して「アーテルは解放状態に居る時、周辺からエネルギー(種別を問わない)を無作為に取り込んで消滅する」という点だな。
有効範囲は炸裂した中心点から500m程度だが威力はぶっ飛んでいる、実際炸裂した有効範囲内の敵機は全滅してるしな。ただし弱点も勿論ある…それが…
『ちょっとパパ!?あれ1発にどれだけコストかかってると思ってんのさ!!』
マーリンからの怒りの通信が入った様に、この弾頭めちゃくちゃコスパが悪いのだ。1発当たり単純比較で新品のファントム1機分だ…マーリンが怒るのも無理はないだろう、大量生産も出来ないし困った物だぜ。
ここまでコスパが悪いのはアーテルを閉鎖状態にする為の技術的問題が大きい、エネルギーを与えない為に常にアーテルは冷却され続けているのだ。
僅かな熱エネルギーでも加えてしまえばそこから解放状態へと転移するので、弾頭には専用の冷却機構が備わっていて小型化するのには苦労したそうだ。
アーテルの発見はアルバスの生成途中だったらしい『なんかめちゃくちゃ爆発してね?』とマーリンがたまたま小さな爆発を確認した事で発見出来たとか、そこから危ない橋を何度かわたって何とか実用化出来た貴重な1発をしょうもないところで使われたらそりゃ怒るよな。
「すまん!!でもしょうがないだろ!?周りの傭兵に行ってた分が全部俺の方に来るんだから!!」
『もう少しくらい出し渋ってくれてもいいじゃん!!まぁ...カンラちゃんが居るから無理もないけどさぁ...』
マーリンもカンラに負担をかけすぎたくは無いと言う気持ちはあるので理解はしてくれる、だがそれはそれこれはこれという事でムカムカしているんだなきっと。
「ふおぉ!!ぱっぱいまの凄いねぇ!!」
「おっ?そうかそうか!今のはなぁ、マーリンが作った新兵器だぞ?」
「マーリンねぇね凄いっ!!」
『っ!!ふ...ふふーん、褒めても何も出ないんだからねっ!!パパはカンラちゃんに無理をかけすぎないように頑張ってね!!カンラちゃんも無理しすぎたらダメだよ?』
ふっ...計画通りっ( •̀∀•́ )
多少グロッキーでもカンラはしっかりと周囲の状況把握はするようにしてたのでこんな反応をしてくれるだろうとは期待していた、まぁ予想以上にいい反応をしてくれたので結果的にはよりいい方向に行ったが。
『ご主人様っ!!アーテル弾の使用は先に報告してください!!』
「悪かった悪かった、俺もイラついちまってな。気を付けるよ。」
『ふぅ...ひとまずは周囲の敵を殲滅は出来ました、戦闘開始から凡そ2時間程度ではありますが既にキルスコアが凄いことになっていますよ。』
俺のキルスコアがモニター表示でも既に3ケタに届いているのだ、大体1分に1機堕としてるペースだな。
こんなもんが敵にいたら悪夢でしか無い、しかも物量でごり押すなんてことをしたら返って自分の傷が深くなるって言うおまけ付きだ。こんなのやってられないよなぁ、弱点は生身の人間だから永遠とは続けられないってことくらいか。
特に今はカンラもいる事だし尚更俺の戦闘可能時間は短くなる、俺自身は問題が無くても少なくないストレスをカンラは受けているのだ。
「カンラ大丈夫か?」
「大丈夫!!」
ニッコリして返事こそするが、薄く見えるヘルメットのバイザー越しの額には玉のような汗がダラダラと流れているのが見える。
人工知能は殺気を持って攻撃こそしてこないが、殺傷力のある武器を向けられて平然としていられる人間など居ないからな。
まして俺の戦闘機動は基本的に「撃たせてやり返す」ってスタイルが主だから、初めての実戦でここまでのストレスを浴び続けながらも気丈に振る舞うカンラは正直凄いもんだ。
「よし、アルビオンまで後退するぞ。ある程度左翼側の前線は押し上げたと判断しよう、これ以上俺たちで活躍しちまうとやっかみを受けかねんからな。」
『了解しました、各機後退準備。』
カンラの事を言わなくともマーゾエはそれを察してくれたのだろう、撤退を開始してくれた。
「カンラ一旦帰るぞ。」
「まだ大丈夫だよ?」
「いや、俺が疲れちまったからな。休憩しに行こう。」
「ぱっぱ貧弱!!私まだ大丈夫なのに!!」
「はっはっは!!カンラは元気でいいなぁ!!」
恐らくはハイテンションのせいで自分の疲労に気が付いていないだけなのか、若しくは自分はまだいけるとホントに思っているかのどちらかだが...多分前者だな。
帰ったらダウンするだろうからグィネヴィアに待機して置いてもらわんとならんかもしれん、ぷかぷか浮いたまま寝ちゃうなんて事もありうるからね仕方ないね。
こっちが帰還する動きを見せると人工知能操るAMRSはこちらを追撃するよりも押された前線を押し戻そうとする動きにシフトしたのでそこまで苦労は無かったな、後から味方に「お前らのせいでこっちに被害が出た」なんて言われそうな気もするが...「こっちはお前らの分まで前線押し上げてやってんだよ!!感謝しやがれこの○○野郎が!!」と言い返す準備は万端なので問題無しっ!!
「さてさて?アルビオンの状況は...は?」
望遠モニターに表示されたのは企業連に取り囲まれたアルビオンの姿だった。
カン「ぱっぱ疲れるのはやーい(≧∇≦*)」
カケル「カンラは元気だなぁ(*^^*)」
マゾ「...(これも優しさ)(´-ω-)」




