それでも我が家は平常運転
はい、モレッドとの買い物が終わって帰って来たらまず事情聴取された所です。
原因?何処ぞの阿呆がシイナを誘拐したらしいよ?その報復…報い?を受けたはいいんだがいかんせん規模がデカすぎて流石にね?という事で旦那にも話を聞かんとならんねとなった訳らしいけども。
はっきり言っていいか?「いや知らんがな」だよこっちも、ぶっちゃけ傭兵家業は一種の治外法権だ。切った張ったを繰り返す仕事上どうしても血の気は多くなるし、その身内に手を出すってことはその武力を持って報復される事を恐れないって事だ。
今回手を出したのは一種の希少種コレクターのボンクラ共だったらしく、いざぶっ壊された家屋を調べてみればまぁ出てくるわ出てくるわ。違法取引された動植物やら奴隷やらがこれでもかと。(この宇宙時代、奴隷という物はどこの国でも法的に許していない。)
見事に証拠品は残ってるのにそういうのに手を出した輩は重軽傷を負うか意識不明の重体と、程度によってことなっているがだいたいそうらしい。因みに何故かは知らんが身内だろうともそれを知っていたか知らんかでも度合いが違うとか。
「まっ、派手にやったねぇ…」
『私達は正当な理由を持って報復したのですが?』
「そりゃ傭兵家の言葉だねぇ…」
モルガンもこう言う鉄火場になるとガッツリ思考がコッチ側に寄るので、俺も納得しそうになってしまうが今回はそれで収めるには色々問題がありすぎた。
まずモルガン達がぶっ飛ばした家屋の1部にこのコロニーの重鎮が住む屋敷があったこと、そしてまぁ大量の禁制品が出るわ出るわのお祭り状態だったこと。ガッツリ帳簿にも残っているので言い逃れなんざできる状態じゃなかったので、それはまぁいいとしてこれによりコロニー管理の上層部が腐敗しきっていることが判明。交易コロニー内の治安が乱れかねない事態となった、まぁこれは直ぐに問題ないと判断された。
だってクリーンって事はしっかりセキュリティ自体は機能してて、それを掻い潜る…若しくは黙らせる側からの圧力があったということなので今回それらが一斉検挙されたので寧ろ本当にクリーンになったということで大喜びだったわけだ。
他には違法取引によって連れてこられた希少種の存在、大半が意思疎通の不可能な動植物ではあったものの2・3人型の幼児が発見されたのだ。(謎の保護材によって厳重に保護されていたらしいゾ)
この子達の引き取り先…と言うより母国・母星に返すにも、コロニー管理の重鎮とはそれはつまり国の上役になるのでそういった部分は何とかして誤魔化したい。でも誤魔化すにも帳簿とかは出てしまっているのでどうにも出来ない、早く親元には返したいがどうやってその損失を取り戻すか。
と言う大人の汚ぇ話がバンバン飛び交っているらしい、1部のトップ層は俺らに責任を擦り付けようと画策したらしいが、交友関係にローゼン・エーデルシュタインがあり(ローゼン・エーデルシュタインは有数の超大国)その機嫌を損ねるわけにはいかんということで即座に打ち消えた。いやぁ…コネって大事ね!!
「んで、誘拐された本人のシイナは眠らされてて意識がなかったのはいいとして…」
『目の前でシイナが消えてしまったカンラの精神的ショックの大きさが問題ですね。』
これが今一番問題だな、カンラがシイナからくっついて離れないのだ。いや…正確に言えばシイナの手をつないだまま誰かしらに引っ付き続けている。今でいえばグィネヴィアだな、ちょうど2人してグィネヴィアの膝の上でキャッキャしている物のちょっとでもシイナが離れようとすればカンラはそれを話すまいとくっついていく。誰かしらの手を引いたうえで…な。
これかなりの問題なのだ、このままではカンラが引きこもりになりかねん。
確かに護衛失敗の責任こそある物のここまでのトラウマを負ってしまうとは思っていなかったので正直予想外と言わざるを得ない、このままだと引きこもり待ったなしだしそれじゃ誰かが必ずアルビオンに一緒に待機しないといけないということになるのでかなり面倒になる。この原因を作ってしまったモルガンとモルゴースが結構凹んでいるというのも一言付け加えておこう。
「ほれ、カンラ。一緒に出掛けようか?」
「やぁだぁ(´;ω;`)」
KO☆NO☆ZA☆MAですわ、どうしたもんかねぇ…だからと言ってこのまま放置するのもだめだな。仕事上どうしてもシイナとカンラから離れなければならない事は多くなっているし、そういう時に無理に引っ付いてこられるのも危険なのだ(いつぞやの白兵戦の時みたいに)
ならば荒療治しかないという事だな!!ここは嫌われる覚悟をしてやるしかないだろう…しばらくカンラから口をきいてくれなくなるのかぁ…悲しいなぁ…
「ならカンラは留守番だな、みんなでお出かけしようか。」
「!?」
びっくりした反応のカンラだが、他の面々(シイナを除く)は状況を理解しているので少し苦しげな表情を浮かべながらも出かける準備を始める。
まぁ攫われたという自覚のないシイナはウッキウキで出かける準備を手伝っているが、対するカンラはと言うと…
「うぅ…おでかけ…やだぁ…また…居なくなっちゃ…やぁ…」
と、目がうりゅうりゅしていらっしゃる。
良いんだカンラ、その感覚があっても良いんだぞ。だけどな?それに引っ張られすぎて閉じた世界になんて閉じこもっちゃいけないんだ、誰かの手を借りなきゃ外に行けない生き方なんてしちゃいけないんだよ。
何時だって世界は残酷かもしれないけれど、お前が1歩踏み出さなくちゃ世界はどこまでもそのままになっちまうぞ?
うるうる涙をうかべるカンラにソッと近付いて、俺は話しかける事にする。
「カンラ…?」
「うぅ…なぁに?…ぱっぱぁ…」
「シイナがいきなり居なくなっちゃった時、怖かったよな?」
「うん…」
「なんにも出来なくて、ただ泣くしか出来なくて悔しかったもんな?お母さんとお姉ちゃんが来てくれなきゃなんにも出来ないって思っちゃったもんな?」
「…(。_。`)」
「仕方ないかもしれない、だってまだカンラは小さいんだから。大人の俺でもいざと言う時はどっかに連れてかれちゃうかもしれない、お母さんやお姉ちゃん達だってな?」
「やぁだぁ…( ߹꒳߹ )」
「カンラはもしそうなっちゃった時、皆に伝えなきゃ行けない。誰かが攫われちゃった!!ってな?でも、何時までもそうやって怯えてばかり居て外に出ることを怖がってちゃ、それするも出来なくなっちまう。そうなっちまったらもう二度と会えなくなっちまうかもしれないぞ?」
「や…やぁだぁ…」
「だろ?なら、今はまだ無理でもいつかはまた1人でお出かけできるようにならなきゃな?」
「…うぅ…ぐずっ…うん…ぱっぱぁ…!!」
「あーらら、ほらほらおいで。全くウチの姫様方は皆泣き虫でまぁ。」
追い詰めた上で、道を示すと言う逃げ場のないように仕向けた俺は親として失格なのだろう。だけれども、俺の話したことは傭兵って仕事をしていく上でいつかは起こるかもしれない、そんなものだ。だからカンラにはそれを理解した上で、「私が助けを呼んでくる!!」と言えるくらいの行動力を持つようになって欲しい。
今はまだ無理だとしても、いつかそんなことが必要になる時が来るかもしれないのだから。
「ほらカンラ、鼻ちーんしよう?」
「ブーッ!!」
「ぷっ…あっはっは!!鼻水まみれになっちまってまぁ!!」
モルガンを呼んで顔を改めて拭いてもらう、俺の肩越しに顔を拭われるカンラは泣いていたせいで目元が真っ赤になってはいたものの、その目の奥には何か強い意志を感じられるようになった気がする。
さてシイナはモルガンが、カンラは俺が抱き抱えて今日は皆でコロニー観光と洒落こみますか!!
ヴィ「お父さんもなかなか鬼畜だよね(´Д`)」
グィ「カンラちゃんが立ち直ってくれるならまぁ…( ´・ω・`)」
モゴ「私の責任なんだけど、父はそれを変わってくれたね(。_。`)」
オヴ「まぁ、それが父親の仕事って思ってるんだろうね(`・ω・´)」
マー「さり気なく…?私達やママに気を回すところは流石だよね( 'ω')」




