だが私は謝らないっ!!(ごめんなさい)
血が昇った頭ではあるがあくまで思考は速やかに、止まった思考では勝てる戦いも勝てないしろくなもんじゃない。
絶対全滅させてやると誓ったその手に力が入り操縦桿を握る手に力が篭もる。
「相手は1機だ!!いつも通り囲んでドたまかち割ってやれぇ!!」
「アイサーリーダー」
ヘッドオンの形で1機向かってくる、その左右から2機づつの計5機で囲みに来た訳だ。
隊長機であろう機体は距離を取っている。
一気にかかってきてくれた方が時間かかんなかったんだけどなぁ……まぁ海賊にそんなこと言っても無駄か。
俺はパッケージランスロットの武装『アロンダイト』を展開し起動、発砲した。
このアロンダイトという武装は所謂ガンソードだ、特殊合金性の刀身を持ち電磁加速レールを搭載した銃身を備えている。
発砲する弾頭はゲーム内でも比較的安価なのに加工するととてつもなく貫通性能の高い弾丸になるダロンギウム製だ。
マズルフラッシュを目撃した直後に敵のAMRS1機に風穴が空く、状況を理解する間もなく「へ?」と間抜けな声を上げて爆散した。
「先ずは1機、食い散らかしてやるよ。」
俺はアロンダイトに弾を装填し両肩部ユニットを展開、多目的弾頭弾『エルン』を発射する。
エルンは要するにミサイルである、ただしただのミサイルではない。
異様に食いつくのだ、それはもう90度の直角だろうともついて行ってしまう。
あれをPVPで初めて使った時の対戦相手が「チートだろこれぇ!!」と半泣きになったのは今でも思い出だ。
弱点としてEMPを放射されると誤爆してしまうんだよね、チャフは効かないのに……
「ふざけんな!!何だこのミサイル!!」
「あああああ!!チャフが効かねぇ!!このままじゃあ!!」
「い、いやだ!!死にたくねぇ!!死にたくねぇよ!!」
「クッソがァ!!うおぉぉぉお!!」
「ナイスファイトだったが無駄だ、早く逝け。」
俺の一言の後無慈悲な程に優秀なミサイルの群れに海賊の機体は飲み込まれた。
絶叫を戦場音楽さながらに聴き流しながら最後に残った隊長機に機体を向ける。
隊長機が撃破されるであろうとタカを括っていたのか身動きひとつ取らないでいる、あまりに無防備なのでもう落としちゃおうかなと思ってしまう。
最期の口上位は聞いてあげてもいいかな〜と思うのでちょっと待機。
「て……てめぇ……何もんだ、あんな戦闘見た事ねぇそれにその機体……第4世代所じゃねぇ何処のもんだ。」
「少なくともお前ら海賊に教えるもんじゃないね、さて話は終わりかな?じゃあサヨナラの時間だ。」
スラスターを全開にして一気に距離を詰める、隊長機が慌てたように兵装を起動しているがもう遅い。
ゼロ距離まで到達した瞬間に敵機の頭部ユニットを掴みコックピットブロックにアロンダイトの刀身を突き立てた。
内部がぐちゃぐちゃになり気密が失われたため突き立てた刀身を抜いた時に色々吹き出してしまった。
……スペースデブリをまた増やしちゃったなぁ……
隊長機をコックピットブロック以外ほぼ無傷で手に入れたため、曳航しながらアヴァロンに帰投する事にした。
この機体のデータベースからモルガンがさらに周辺データを詳しく更新するのだ。
機体そのもの?ジャンクパーツ行きだね、整備はガタガタだしギャラハッドの換装システムとも互換性が無いからね。どっかによったら払下げだよ。
着艦カタパルトに鹵獲機体を降ろして艦内に運ばれるのを確認してからギャラハッドも移動が開始される。
今回はパッケージを装備していたので除染作業の時にアームによって除去されて素体になる。
格納デッキに到着し機体
のロックがされてからコックピットを開放しようとした瞬間
『マスター、エアロックがまだ閉鎖されていないのでコックピットは開けないでくださいね?』
物凄く良い笑顔なのだが目元が笑っていない。
そんな感じのモルガンから通信が入った。
モルガンの身体をゲームで作った時有料コンテンツのひとつに『表情の変化が起きる』『感情の起伏が発生する』というものがあった。要するに人間に近い反応を示す様になるって事だな。
今の彼女はまさにそれの成果と言えるだろう、今まではただのモニター越しのAIでしかなかったのに、今では直接触れることすらできる。
この状況に感謝だな!!
『マスター、私の話聴いてませんでしたよね?良いでしょう、それならば私にも考えがあります。』
いつの間にか目の前にモルガンが現れた、恐らく先程の通信回線を開いた瞬間から格納デッキに向かってきていたのだろう。
そしてエアロックが閉鎖されたのを確認してギャラハッドのコックピットハッチを開放した、で今のこの状況になったというところか。
『ふむ、状況は納得されたそうですね。では宜しいですか?先ずは休憩室に向かいましょう。『ヴィヴィアン』達あとは任せましたよ』
ピコピコとアームを上下させながら作業用ボット『ヴィヴィアン』達が挨拶する。
このアヴァロンはモルガンを頂点として部門ごとに作業用ボットが多数存在している。
先ずギャラハッドやアヴァロンの整備、調整を担当しているのが『ヴィヴィアン』で火器管制システムのモルガンをサポートする役割を果たしているのが『モルゴース』推進系システムや燃料空調システムを管理しているのが『オヴェロン』衣食住を優しく管理してくれるのが『グィネヴィア』最後に艦内ファクトリーを管轄しているのが『マーリン』
……そうだよ!!アーサー王伝説にあやかってるよ!!かっこいいじゃん?
『マスター、幾らコックピットブロックが頑丈だとは言えスーツ無しで搭乗されるのはナンセンスです、私も気が気ではなかったのですよ?』
休憩室、通称リラクゼーションルームでモルガンに正座させられてお説教を受けている俺。
AIに説教されるとは如何なものか……
ゲーム内ではここまで感情豊かではなかったからなぁ、ちょっと嬉しい……
『聞いていますか?マスター私はマスターにお話しているのですよ?聞いている貴方がその様な態度では私はどうすればいいのですか?』
「悪かったよモルガン、次からはちゃんとスーツ着るからさ勘弁してくれないか?」
『……致し方ありません、今後注意するように。』
どうやらお許し頂けたようだ、正座していたから足が痺れて居るのでしばらく立てそうにない。
『この後はバイタルチェックを行ってください、グィネヴィアには通達済みです。あぁ、丁度来ましたね連れていってください。』
グィネヴィアに抱えられて俺は医療ルームに担ぎ込まれ医療ポッドに突っ込まれる。
CTスキャンの様な機械だが時間は全くかからない、数分で検査は終了しポッドが開放されたので俺はポッドから出てブリッジに向かう事にした。
モルガンの処理速度はゲーム内でも最高スペックのものを導入していたので海賊の機体から抜き取ったデータの整理も終わっているはずだ。
ブリッジに入りモルガンの傍に立つ、恐らく俺が来ている事は認識しているが艦内の状況処理を行っているのだろう。
少し待ってみる事にした。
『マスター、海賊のデータベースを確認しました。結果、私の持っているデータとの齟齬を確認したためデータを更新、進路変更の可能性を考慮し発案します。』
「データの齟齬?ここはGROの世界ではないという事か?」
『YESマスター、ここはブラッペドントリオンでは無くエクセリオンと呼ばれる国だった様です。また、データ内にロイヤルインペリウム、AMRSシリーズや母艦アヴァロンと言った機体データは存在せずそもそもの機体の基準的に言えば第4世代程度の性能しかありません。』
「第4世代!?GROで言えば初期機体の1つ前の世代じゃないか!!どうなってる……」
『代わりに私達AIの技術は発展している様ですね、私の1つ前の世代にあたる量子コンピュータは開発されているようです。まだ大型のスーパーコンピュータ程度ですが。』
「ふーん、何だこの歪な感じは……モルガンも今よりアップデートして素粒子コンピュータクラスにしてやりたいけどマテリアルの関係もあるしなぁ……ファクトリーじゃ限度もあるか。」
『私のアップデートを考えていただけているのはありがたいですがそれよりも今はこのアヴァロン等が明らかにオーバースペックなのが問題かと。私を含め技術的に100年は先に進んでしまっていますからね。』
「それもそうだなぁ……」
『先ずはコロニーに向かい情報収集が宜しいかと、データを更新したため現在マスターの向かえるコロニーは大幅に増えています。1番近くのコロニーならば1時間程度で到着します。』
「じゃあそこに向かうかぁ」
『YESマスターではそちらへ向かいます。』
そうして俺たちは国家エクセリオンの交易コロニーエルメロイ交易コロニーに向かう事にした。