新しい妹はマーメイド!!
『それでアヴァロンのセンサーも反応しなかったのですね。』
「やっぱりか、どうやって移動したんかねぇ?」
ギンガカンスが消えた後、双子ちゃんを抱きかかえたまま俺はブリッジにまで移動していた。
ヴィヴィアンは『モレッドちゃん達の回収に行かなきゃ!!』と言うことで後部カタパルトからスピュメイダーで出て行ったので、俺一人である。
『またあなたと言う人は…よくもまぁそこまで超生物から子を託されるものですね?』
「それについては大いに不服と言わざるを得ない、何が悲しくて絶滅種になった双子ちゃんを託されにゃならんのだ。」
『それを言えばエルピダもですね。』
「…そうだったわ。はぁ…」
まぁそうなってしまったものは仕方がない、子を育むのは大人の役目ではあるし自分の子どもであろうとそうでなかろうと子どもと言うのはそれだけでかわいい物なのだ。
現に俺の腕に抱かれた双子ちゃんは穏やかな寝息を立てながら眠り続けている。
『姿かたちはギンガカンスから大きく逸脱していますね、ほぼ人魚型…とでも言えばよいのでしょうか?』
「だなぁ、腕の下…脇腹あたりから腹鰭?に腰周りから尻鰭みたいな物が出ているし、背びれみたいなものも肩甲骨あたりからと尾てい骨に当たる部分から第二背びれ見たくでているからな。」
『人型に近くなってもそのあたりの特徴は大きく残っているのですね…あまり目立ちませんが鎖骨のあたりに鰓の様なものもありますね?』
「ほんとだ…だが胸周りが上下しているからしっかり肺呼吸なんだろうな、すごい生態をしていると思うぞこれは。」
『学会やそう言った研究施設に贈ればとんでもない報酬が出ますが…』
「モルガン…いくら冗談でもそれを言ってしまったら俺はお前を許せんぞ。」
『そうですね、あなたは口では不満を言いますがそれ以上に子煩悩ですものね。』
「…言うなよ。」
ここに親が託していった子ならそれはもううちの子だ、誰がどう言おうとも後ろ指をさされようとも関係なく…な。
だからこの双子ちゃんにもしっかりと愛を注ごう、自分の親の姿かたちは知らずとも、ほんのわずかな時間しか邂逅していない俺の言葉でしかない情報でも、双子の母は間違いなくお前たちは愛していたのだと伝えるために。
「じゃ、とりあえずこの後はグィネヴィアの所に連れていくかな。双子ちゃん…『シイナ』と『カンラ』の健康診断と食事の準備もしないとならんだろうしな。」
『では先に伝えておきますね、ちょうどグィネヴィアの所にモレッドたちも運ばれたようですから。』
「わかった、頼む。」
さてさて、この可愛い双子ちゃんがすやすやしてくれてるうちに色々な診断が終わればいいんだがねぇ?
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「「やぁやぁ~…」」
「おうおう…ちょっとだけだからここにお座りしていてくれ~。」
『まさかここまで離れたがらないとは思いませんでした…』
医務室に到着したところ先に担ぎ込まれたモレッド達は脳波計などを付けられた状態で未だ眠りについてこそいたモノの、生命活動に異常こそなかったようなので安静にしているだけだった。
グィネヴィアは脳波計からのパターンを眺めていたところに俺が入ってきたので俺の方に駆け寄ってきてくれたところで双子ちゃんが目を覚ましてしまったのだ、泣きこそしないが「「きゅっ!?」」とグィネヴィアを見た瞬間言葉にならないような悲鳴を上げて俺に抱き着いて俺を見上げたのだった。
初めて見たはずの俺に対してなぜそこまで俺を頼るように見つめてくれるのだろうか?「刷り込み?」とも思ったが頼られて悪い気はしない、ちょっとだけ抱き寄せてあげるとそのちっちゃな手を目一杯広げて抱き着くようにして顔をうずめてくるのだ。
ちょっとショックを受けているグィネヴィアにアイコンタクトで早速検査をしようと伝えて、準備が整ったところで早速検査機器を通ってもらおうと思ったところでさっきの反応である。
要するに俺の腕から降りたがらないのだ!!卵胎生と言う特性故か、この2人は既に首も座っているし重力下でもなければ自由に動き回っているところだろうがアヴァロン内は人口重力によって1Gが常にかかっているためにこの子達は俺の手から降りてしまうと自由に動けないのだ。それも恐怖をあおる一因なのかもしれんなぁ…
『う~ん…このままでは埒があきませんね、仕方ありません!!お父さま、抱きかかえたまま検査ポットに入ってください!!』
「まぁそうなるだろうな、大丈夫か?」
『多少精度は落ちますがその程度なら許容範囲内です。今後双子ちゃんが怖がらなくなってから再検査にはなりますが。』
「それならまぁいいか、了解だ。ほーら、一緒に行くぞ~。」
降ろされない事がわかったのか二パッと笑ってお顔をぐりぐり、ほらほらあんまりやりすぎると赤くなっちまうぞ~?
ぱっと顔をあげてみれば…ほらぁ~もぉ~、おでこが紅くなっちゃってるじゃないか!!両手がふさがってるので撫でることが出来ないので「めっ!」と軽く言ったのだが何かうれしかったのかはしゃいじゃってまぁ大変なことに。
検査ポット内でキャッキャ笑うもんだから俺も逃げられずになされるがままに「ピピピッ」と音が鳴ってポットが開けばそれはそれでびっくりしてまた俺にギュッとしがみつく、忙しいねぇ本当に。
『簡易検査でも意外にしっかりと調査出来ました、これならば…そうですね乳幼児の母乳から離乳食への切り替えが終わったくらいの食事で問題なさそうです。』
「そいつは重畳、用意が増えて大変になるがよろしくなグィネヴィア。」
『お任せください、新しい妹の為ですからね。』
簡易検査だけで双子が何を食べられるのかまでわかるのだからすさまじいものだな、まぁ笑った時に口の中には小さいながらも歯があったしそういうもんなんだろうけれども。
双子ちゃんは俺に引っ付いたままではあるが、多少はグィネヴィアに害意がないという事がわかったのか顔を向けてじっとその顔を覗き込んでいる。
『あら?どうかしましたか』
微笑みながらグィネヴィアが話しかけると、プイっとまた俺に顔をうずめたがどうやら嫌だったからとかではなく恥ずかしくなっちゃった様な感じだろう。ちょっと鼻息が荒くなってるのか体温も高くなってるみたいだしな、でも同じような反応だけどよく見れば結構違うような気がするなぁ。
シイナは俺に抱き着くときに頭突きレベルの勢いで突っ込んで来るのに対して、カンラは腕の力いっぱいに抱き着いてくるような感じだ。以外に握力が強くて若干抓るような感じになっているのでまぁ痛いけど、それくらいはよくあることだと見守ろうではないか。そも種族が違うのだ、ただの人間と同レベルに扱う方がおかしいのだ。
「恥ずかしくなっちゃったんだよな~?」
「「あいっ!!」」
『そうなんですか?ふふふっ…恥ずかしがら無くてもいいですからね、ゆっくりでいいですからこれから仲良くしていきましょうね。』
そう優しく言うだけにとどめ、頭に手を伸ばしたりしない当たりまだ警戒されているのだろうという配慮なのだろう。
その反応にカンラが反応して、ちょっとだがグィネヴィアに手を伸ばした気がした。
「うぁ…う?」
「どうした?カンラ」
何を言っているのかはまだわからないまでも、何かを言っていたという事だけはわかるので俺が問いかけると確かにカンラはその手をグィネヴィアに目いっぱい伸ばしていたのだ。
一瞬キョトンとしたグィネヴィアは『ハッ!?』と正気に戻ったかと思えばすぐにカンラに両手をのばし、カンラはその手に飛び込むかのように俺から身を乗り出した。
そしてグィネヴィアの腕に収まったカンラは満面の笑みを浮かべてその顔に小さな手でペチペチと「きた~」と喜ぶような反応を示したのだった。
『えっと…カンラちゃんですよね?』
「間違いないはずだ、なんでかはわからんが初見で俺はシイナとカンラの見分けがついていたからな。」
『あらあら…ふふっ、は~いカンラちゃん私がグィネヴィアお姉ちゃんですよ~?』
「きゃっ!!」
しっかりと認識されて声をかけられたカンラはその幼い顔を満面の笑みで彩りながら、グィネヴィアへボディランゲージでいろいろな意志を伝えていた。
対するシイナはと言えば「パッパ大好き!!」と言わんばかりに頭突きとぐりぐりを繰り返しては俺の顔を見上げて二パッと笑っていた。
ヴィ「あぁ~!!グィネヴィアズルいぞ!!( ゜Д゜)」
グィ「はわぁ…カンラちゃんかわいいですねぇ(*'ω'*)」
モゴ「むむむ…新たな妹が!!(`・ω・´)」
オヴ「重力下でも動けるような何かを作らないとね( 一一)」
マー「ファクトリーの可動はいっぱいいっぱいだよぉ(;゜Д゜)」




