いつだってひらめきってのは突然降ってくる
設計の為ファクトリーに籠っている間に、モルガンは資源衛星にアヴァロンを接舷させていたようだ。気が付いたらファクトリーに入ってから5時間は経過している、通りでモレッド達が静かになったわけだよ。
見なさい皆の衆!!いや、見れないのならば想像するのだ!!川の字で真ん中にいるモレッドに抱き着くように眠っているキスハとエルピダの光景を!!あっブランケットをマーリンがいつの間にかかけていたようなので風邪をひく心配は皆無だ、しかもちゃんと簡易ベット(簡易とは言うけど普通に高級ベット並み)で寝ているからな!!
『頭がコクコクしてたから私が寝かせたよ~。』
とはマーリンの談だ、妹たちをよく見てあげるよき姉だなぁ…
『マテリアルの採掘を開始します、規模的に採掘開始から最終処分までにかかる時間は3日ほどと概算します。』
「了解だ、周辺警戒は怠るなよ。あと、暇ならファクトリーに来ると良いぞ。モレッド達の可愛い寝顔が楽しめる。」
『では早速向かうとしましょう、データで見る物とは違いますからね。』
モルガンは皆さん知ってのとおりであるが基本的に親バカの部類に入るのでこういった時にはしっかり自分の目で確認する、そしてそれを写真データとして保存し自室のアルバムに保管しているのだ。わざわざデジタルとアナログで保管する当たりなかなかだとは思うがな。
「とりあえずいったん休憩をはさむか、流石にずっと向かい続けていたせいで肩がバキバキだ。」
『モレッドちゃんたちはどうする?』
「寝かせておいてやるといいぞ、今起こしたらモルガンから何言われるか分かったもんじゃないしな。」
『うっ…それもそうだね、それじゃこのままにしておくよ。私は採掘したマテリアルをすぐに生産ラインに回していくね。』
「頼んだ。」
軽く体をほぐすためにファクトリー周辺を散歩しようと思い、宙が見えるガラス(実際には違うけど)が貼られた回廊を歩くことにした。
採掘自体は右舷側でやっているので左舷側の俺がいるところからは特に見えない、だがとても静かでいい景色だなとは思う。
思えばこの世界にやってきてからやたらと闘いだったり戦争だったり政治抗争だったりに巻き込まれまくってたよなぁ…たまにはこうやってただ宇宙を眺めるのもいいもんだ。
「地球じゃないんだから星座なんてわかったもんじゃねぇな、小惑星が多すぎて恒星も良く見えん。それでも明るく感じるのは近くに銀河系でもあるのかねぇ?」
『近くに銀河系は確認できていますが、この明るさは『アンタレスマンタ』が付近を回遊しているからですよ。』
「おぉモルガン、もう来ていたんだな。」
宇宙生物の中でも温厚で名高い『アンタレスマンタ』のことをそっと横に立って俺に教えてくれるモルガンに、俺は「もう3人の寝顔は見に行ったのか?」と確認したが『これからですよ』と言ってそのままファクトリーに向かって行ったので俺はそれを見送る。無駄に引き留めるようなことはしないのだ、これができる旦那という物だ!!(そんなことはないかもしれないけど…)
「そういえば宇宙生物の中には艦艇の装甲材になるレベルの奴らもいたよなぁ…」
具体的に言えば『クェーサーキングクラブ』だったり『ホワイトドワーフロブスター』って名前の甲殻類に似た宇宙生物なんだがな、まぁこいつらを討伐して装甲にするなんてぶっちゃけた話ハイリスク過ぎてプレイヤー時代はよほど酔狂な奴ら以外やろうとはしなかった。
勿論性能は折り紙付きなんだが、そもそも討伐にまでかかる時間が平均して3時間ってのがまずきつすぎる。それに1度ミスすると最初からやり直しってレベルの超高難易度なのだ、俺はやりたくないね。
「だけど、宇宙生物って基本的に何食って生きてるんだ?それこそ無限機関でも持ってなきゃ生存なんてできんだろうに…あれで生殖機能まであるんだからなおさらよくわからんな…」
それこそ『コスモスホエール』なんてのは150年周期ではあるが繫殖期に入って個体数を増やしたりする、宇宙空間であっても食物連鎖は成立するのであればどこかで捕食者に出会って若い個体や弱い個体は淘汰されてしまうのだがそれもよくわかっていないのだ。
そもそもそう言った宇宙生物が人類の生存圏には基本的に近寄ってこないという事もあり、研究が進まないのだ。わざわざ危険の伴う外宇宙にまで足を延ばして研究する学者がいないってのもあるとは思うけどな。
「アリ…ではあるのか?」
宇宙生物ってのは基本的に人類の科学技術では基本的に太刀打ちできないレベルの外皮や外殻を有している、それこそGROの時代だって討伐できたのはそう言った討伐に至る情報を得られたごくわずかな種類だけだったし基本的には無害なNPC扱いか一種の天災みたいなもんだった。
もしそう言った宇宙生物の残骸(生体は無理!!)でも転がっていたならそいつを頂いてやるってのも十分ありではある気がするんだが…
「土台無理な話か…」
そう言った残骸は他の宇宙生物によって分解されてしまうので運よく発見できたとしても本当にきれっぱしくらいしかないだろうなとは思う。
しかしやはり生物がゆえに多少の傷ならば再生できるというのは強みだろう、どこからエネルギーや体組織を構成する原料を接種しているかはよくわからんが…
「ん?再生?いや…でき…る?」
思いついたのはナノマシンの群体による装甲の構築だ、要はいちいち装甲が破損したら張り替えるというよりも人間の皮膚のように傷を負ったら自然治癒のように修復してくれればいいのでは?という考えだ。
無論いくらナノマシンとは言えそんな簡単なものではない、極小の機械の群れの中に1機でもバグを含んだものが紛れ込んだ瞬間すべての機能が停止し最悪の場合艦艇がいきなりバラバラになる。なーんて事も起こりかねないのだ。
ナノマシンで構築するという案もやっぱりだめかなぁ…いい案だとは思うがリスクがデカすぎるからな、こればかりは安全性を重要視させてもらおう。
浪漫と安全性は時と場合によって重要度が入れ替わるのだ!!
なんかいい方法ないもんかねぇ…
「それこそ人工素粒子で艦体を作る、なんてことが出来たら苦労はしないんだがなぁ…」
『『出来ますよ?』』
「Fo!?いつの間に!?それにマーリンまで!?」
ぼそぼそ独り言を言っていたのが聞かれていたようでかなり恥ずかしい、だがそれよりも重要な事だ人口素粒子で艦体を作ることが出来ると言ったのだ!!
詳しい話はバッサリカットするが素粒子と言うのは世界を形作る最小単位の事で、それが集まったり組み合わさることでいろいろな物質となるのだ。故に素粒子と言うのは0.0000000000000000001mm以下という途方もなく小さな物質であり、それゆえに基本的に破壊出来ない。
鉄やらなんやらが破壊できるのは原子の集まりであって、その結合が緩んで形を変える…説明が難しいが簡単に言えば原子同士の結合の隙間があって、そこに別の物質が入りこんでるって言えばいいのか?もっとわかりやすいのは粘土かもしれんな、パンチしたら凹むだろ?めちゃくちゃ硬いけど鉄も同じ事だ。
逆に素粒子の場合はそもそもが全宇宙の最小単位と言われているだけあって、基本的にその隙間に実体弾だろうがビーム系だろうが基本的に通さない。そして破壊には反物質と呼ばれるあらゆる性質がその素粒子と反対の性質を持つ物体をぶつけることで起きる『対消滅』でしか破壊出来ない。
なんで通常兵器で破壊できないのかって、大きいもので小さい物を狙うってのはそもそも難しいだろ?大砲でネズミを撃てって言ってるようなもんだと考えて欲しい。
そもそも原子が通れる隙間が無い程にぴっちり噛み合わさってる物に原子をぶつけたところで意味なんてないのだ。
「人工素粒子…いつの間に?」
『マーリンから報告は受けていましたのでいつか使用するのかとは思っていましたが、知らなかったのですか?』
「知らんな、初めて知ったくらいだ。」
『まぁ私も発見できたのはたまたまだったし、生成手順の確立まで時間かけちゃったからね。』
マーリンが言うには発見と確保自体は出来たものの生成方法がわからなかったために俺への報告をしなかったようだ、まぁ気持ちはわからんでもないな。
問題は生成にどのような無理難題を仕掛けてくるかだな、それを聞いてからどうするかを決めるとしよう。
ヴィ「AMRS稼働してないから整備がらく~(*‘∀‘)」
グィ「食事は豪華にしましょうかね?(-_-)」
モゴ「へいわだな~(゜-゜)」
オヴ「主機及び補機通常運転で運転中(`・ω・´)」
マー「ハッ…自分で仕事を増やしてしまった('Д')」




