滅びを齎す揺籃の終止形
「コロニー側、状況知らせ!!」
『状況確認中...どうやらレーザー系防護に特化した護衛艦が居たようです、こちらの出力に耐えきれず撃沈は出来たものの相当量のエネルギー減衰があった様ですね。』
「やってくれるじゃねぇの...」
磁気シールドを纏ったシールド艦ってことかい、まぁ色んな作品でコロニー迎撃と言えば熱量による蒸発だもんな。それを回避するならそうなるってもんなのかもしれない、だがこれはマズい。めちゃくちゃマズい。
「次弾発射準備!!」
何故なら迎撃ポイントがほんの少し首都星に近づくだけで放射能汚染物質が大量に降り注ぐリスクが跳ね上がっていくのだ、少なくとも迎撃後の大きな物に関してはAMRSの兵装で焼き払える物のスペースデブリクラスになってしまえば最早細くすることすら困難だ。
モゴ『ほっ...砲身交換かいっ!?』
「している暇は無い!!砲身冷却はギャラハッド側の縮退炉を回す、もう1射位やってやらぁ!!」
ヴィ『無茶苦茶だよ!!ただでさえオーバーパワーを撃ち出したんだよ!?間違いなくロスは出るし...下手したら爆発する!!』
「構ってられん!!その辺のリスクはこの際全て無視だ!!」
失敗しても俺達家族には一切の非は正直無いに等しい、傭兵なんて仕事の失敗だってよくあるもんだ。俺自身だって始めた頃からトータルで見れば成功率は良くて6割程度だろう、そもそも1傭兵如きにコロニー迎撃を依頼する国自体おかしいと言える。
だが...見捨てることは出来ない、見捨ててしまえばそこに居る100億の人々が苦しむから。なんて聖人みたいな事を言うつもりは無い、ただ...縁が出来たハーレイ殿下とシュトラーセ殿下にそんな国を統治して欲しくないってだけだ。
モル『ロンゴミニアド、砲身交換作業開始...』
「...っ!?モルガン!!」
モル『お怒りは後で如何様にも受けます、ですがその砲身では最早精密は不可能...0コンマ00mm以下の歪みであってもこの距離ではどれだけの誤差になるかあなたにならお分かりでしょう?それに...ここで事故によってあなたを失う訳には行かない。』
「...すまん、冷静さを失っていたみたいだ。」
モル『いいえ、その気持ちは理解出来ているつもりです。オヴェロンはエネルギー再充填を開始、モルゴースは砲身交換作業を急ぎなさい。無論貴方が直接行うことは厳禁です、こんな事で被曝などあってはなりません。』
オヴ・モゴ『了解!!』
『Rhongomyniad gun barrel ejection standby』を許可して砲身のロックが解除される、強制排熱をしていても未だに赤熱化している砲身をBOT達が回収しアヴァロン放射性廃棄物格納区画に運んでいく。それと同時に新しい砲身が運ばれて来るのを確認し、接続確認・砲身固定...完了。
モゴ『再射撃準備各シークエンス再開始。』
ヴィ『射撃用所元、再調整開始。』
モゴ『ロンゴミニアド、射撃システムに問題無し砲身及び加速器内の磁気フィールド安定。』
オヴ『縮退炉及び融合路は全力運転を維持、射撃想定エネルギー量まであと、0.37。』
マー『全エネルギー回路の抵抗及びロス比率上昇中...許容範囲内!!』
流石は娘達だ、直ぐに射撃準備を開始してくれているし1射目よりも早い。安全確認と言うか動作確認は出来ていたから当然と言えば当然なのだろうけれども、それでも十分過ぎる程の動きだな。
「モレッド達の状況は?」
『現在交戦中、先のロンゴミニアドによる攻撃を見てこちら側に接近してくる敵機を迎撃しています。』
「向こうも流石に2射目を撃たせるわけにはいかんと思った訳か、それならOKだ。3人には迎撃を継続、近付けさせるなと伝えてくれ。」
『了解です。』
チラッと戦闘の光が見える方を見れば、明らかにこちらに向かってくるにつれて光が大きくなって来ている。流石はモレッド達だな、最重要目標を破壊されない様に立ち回れる様常に立ち回りを意識していたのだろう。何も言われるまでもなく防衛寄りのスタンスにシフトしていたみたいだしな。
ヴィ『所源調整完了、パイロットに権限を譲渡!!』
モゴ『ロンゴミニアド、最終安全装置解除。撃鉄起こせ!!』
「撃鉄!!」
オヴ『エネルギー総量、規定値を突破!!全エネルギーロンゴミニアドへ!!』
マー『エネルギー回路ダウン!!次弾発射は不可能と認む!!これで決めちゃえ!!』
「了解だ!!行くぞぉ!!」
トリガーを引き、ロンゴミニアドが唸りを上げその砲門から破壊の光を放つ。
限界を越えたエネルギー回路達は炎を上げあちこちにスパークと爆発を起こしながらもその役目を終えた、かく言うロンゴミニアドもこの短時間で想定以上の大出力を受け止めた為に後部の加速器が爆発、流石に投棄せざるを得ないか...
「ロンゴミニアド投棄、重量バランス再調整...」
『ロンゴミニアドによる攻撃は目標に命中、全体の87%が蒸発。崩壊を開始しました、大型のデブリについては対処を開始。』
「何とかなった...か...」
かと言って終わった訳では無い、未だ戦線は膠着状態だし戦意が落ちたという訳でも無さそうだ。寧ろ...これからが本番とでも言いそうな程に苛烈に攻めてきている気すらする。
「どうなってる...」
『前線より入電!!超大型AMRS..接近との事です!!』
やっぱりそうなるよねぇ!?だが...超大型AMRSかぁ...GRO時代で言えばレイドボス級の機体なんだよなぁ、ついでにピンキリとは言え機体性能もそれなりに有してはいる。
頭のおかしいトッププレイヤー達が『チキチキ!!単騎でレイドボスタイムアタック!!』なんてのをやって見事撃墜されたなんてよくある事だった、俺?やったけど勝っても負けてもいないぞ。持久戦仕掛けちゃったからね、しょうが無いね。
さて、問題はその機体が何なのかである。
「機種は!?」
『前線からは機種不明とだけ...』
「望遠カメラで外観だけでも確認しろ!!」
『了解です。』
モルガンに半ば怒鳴りつける様に指示してしまった事が若干心に刺さる...後でちゃんと謝っておかなきゃな。
数秒の静寂の後、モルガンがこちらに回答を投げつけた。
『機種判明、型式番号 OS-AMRS-D001 通称ドレッドノートです。』
「ドレノかぁ...」
『OS-AMRS-D001 ドレッドノート』機体そのものは第3世代レベルで建造されているものの、超大型の機体サイズにこれでもかと高出力主機を配置し、圧倒的な出力から来るパワーを持って重厚な装甲を持つ四肢を縦横無尽に駆動させ、余剰出力から来るエネルギー兵装を全身に装備した全部乗せな機体だ。
GRO時代はプレイヤーから「初心者なら100人で挑んでも勝てないが、トッププレイヤーなら1人でも余裕。」「初見では要塞、何度か見たら豆腐。」「あれはメ〇ゾーマでは無い、〇ラだ。」等と評されるぶっちゃけ俺からすればただ美味しい機体。
以前戦ったウルティモ・ヴェネレの方が辛いまであるが、こっちではそんなこともなく前線を壊滅に追い込んでいるみたいだな。
問題自体は少ないかもしれないが...油断は出来ねぇよなぁ、何せ今回はシステムのアルゴリズムに則った攻撃ではなくて恐らくは生身の人間が乗ったドレノという事だ。
「やるしかないか、Artherは排除Bedivereに換装して俺も前線に出る。」
『了解しました、アヴァロンの防衛はお任せを。』
「頼む。」
ギャラハッドを甲板上からカタパルトに移動し、換装システムに入る。Artherは粒子加速器の爆発により重汚染されているので除染作業が済むまで暫くは使えない、若しくは廃棄しかないだろうな。
勿体ないけど、家族の安全の方が大事なのだよ...うむ。
『下部ハッチ解放、懸架アーム下降、推進剤充填確認完了ケーブル除去、packageBedivere system oll green 発進どうぞ。』
「あいよっ。ギャラハッド、ソラ・カケル出撃るぞっ!!」
今度こそ、このふざけた内戦を終わらせる為に俺は全速力で戦線に向かう事にした。
ヴィ「甲板上撤収作業急げっ( ゜д゜)」
グィ「艦内汚染を確認、除染開始!!( ・᷅ὢ・᷄ )」
モゴ「ロンゴミニアドについては破棄!!近接防御準備!!(っ`ω´c)」
オヴ「主機及び補機は通常運転に移行、各システム異常なし!!( ̄^ ̄ゞ」
マー「除染及びマテリアル化は同時進行!?:( ;´꒳`;):」




