末妹達の即興曲
『キスハちゃ〜ん!!はしゃぐのはいいけど、怪我だけは気をつけるんだよ!!』
「わかってる〜!!きゃはー!!」
キスハちゃんとレジャー施設に遊びに来た私は、到着して早々に目を輝かせて今すぐにでも飛び出して遊びたさそうにしていたのを何とかなだめて入場した。
一応怪我だけはしないようにと釘を刺しはしたので多分大丈夫だとは思う、元々ミコケットって種だったキスハちゃんだから危機察知能力や動体視力にそう言った身体能力に不足は無い事は分かりきってるからね。
それでも言っておかないと限界を超えて遊んじゃって、ついスイッチが切れたように眠ってしまう事があるからね。高さのあるアスレチックで遊んでてそうなったら1番危ないからね、当然の指示だよこれは。
『さてと…私はキスハちゃんが遊んでる間のお目付け役と…男友達が寄って来ないかのチェック、後は誘拐目的のクズ共の撃滅...だね。』
これは私達上姉達の間でこの外出が決まった時に前もって話していた事、控えめに言ってウチの私を含めた子ども達は大人子ども問わず見目麗しい。
だから結構そう言った目で見られやすいのだ、実際モレッドちゃんなんてしょっちゅうモーションかけられてるしね。
私達は私達で同年代の男子諸君から前に行われた戦勝パーティーでこれでもかと声をかけられたし、そこには純粋な好機を持った子もいれば邪な…下衆な思惑を持った子もいっぱい居た。
幸いだったのはキスハちゃんとエルピダちゃんが純粋な人類種じゃ無かったからそう言った声をかけられなかったこと、代わりにそう言う純血主義的な思想を持った輩が嫌な視線を向けて来たけどね。(そう言った奴らは全員私達が『てめぇブチ○すぞ!?』と言う視線を向けて一目散に逃げていった。)
『うんうん、アヴァロンの中を駆け回ってはいたけどやっぱりこういう所で上下もある動きが出来るとより楽しいみたいだねぇ。』
「きゃはははは!!」
『あんなに声上げて楽しんでくれてるみたいだしね。』
グィネヴィアから健康診断でレントゲンとかを撮った時の映像は共有して貰ってたけど…本当にネコ科の様な骨の形状と数だったよ、後は全身の筋肉と腱の柔軟性の高さだったり骨格の駆動域の広さも特徴だね。
人としての形状は保ってても、中身はまるでネコ科って事。だから基本的に頭が通る様な隙間があれば何処でもくぐり抜けられるし、落下しても空中で姿勢を戻して安全に着地もできちゃう。
ヒトとネコのいいとこ取りしたのがキスハちゃんだねぇ…
『っと、早速男の子がちょっかいをかけてきたね。ま、あれくらいならそもそもキスハちゃんは気にしないし振り払えるか。』
見た感じあの子は熊人かな?子どもの時点でかなり体格はガッチリしてるし、何より特徴的なのは発達した腕部だね。普通の人間の大人よりも発達してるからね〜ベアハッグって言うけどあれもかなり怖いよねぇ。
あっ…早速気になる子にちょっかいかけようと寄って行った、でも残念。キスハちゃん全く歯牙にもかけない対応で別のアスレチックに行っちゃった、おぉっ!?諦めないぞあの男の子!!一生懸命走って追っかけてる!!
でも悲しいかな、熊でもあの子は特にパワー型。多分グリズリークラスの血なんだろう、対してキスハちゃんは元々はミコケット。サーバルの様に靱やかに跳躍する事も出来ればチーター以上の最高速(まだそこまで体が成熟してないから出来ないけど)で走ることも出来る子だ。
あっという間に突き放されちゃって半泣きになってるよ、おや?あれはあの子の保護者かな?
ん〜ちょっとめんどくさい事になりそうかも…私の出番かな、さてさてキスハちゃんの楽しい時間を邪魔させない為にお姉ちゃんは一肌脱ぎますよっと!!
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『エルピダ〜、楽しく遊べそう?』
「もるごーすおねちゃが居たら…たのちぃよ?」
『んむふぅ…いやいや…今日はエルピダがいっぱい遊べる所に来たからね、いっぱい遊ぼう?』
『んぅ…あいっ!!』
エルピダと一緒にやって来たのは人間とは身体的特徴が一致しない(獣人種よりもより人間から逸脱した特徴を持つ者達のことね)人達がそう言った部分を隠さずに遊ぶことの出来るアミューズメントパーク、ローゼン・エーデルシュタインはそう言った人達にも寛容的でこういった施設が充実してるのはとてもいいねぇ。
そもそもローゼン・エーデルシュタインの建国まで遡れば元々は人間じゃない種族が王国を築いて居たみたいだしね、それが人間との混血が進んだ結果今の姿になったらしいし。
だから十分王家の人間がそう言った種族に対するケアを忘れないのも当然なんだろうなぁ、まぁそれに納得出来ないのが凝り固まった思想を持った人間至上主義の貴族達なんだろうけど。
『ほらエルピダ、隠してた脚は伸ばしていいよ。もう周りに気にする人達はいないから。』
「んぅ?いいの?」
『良いんだよ、アヴァロンからここまで1日以上隠させてごめんね?』
「んん、あたちが良いって言ったから。それじゃ、延ばすね。おねちゃ、背中開けて?」
『よしきた…はいっいいよ。』
「んしょっ!!」
おぉ〜…エルピダは身体の成長に対して脚の成長速度が著しい、元が皇鋼蜘蛛って言う超大型種だったからなのかは分かんないけど(そもそも人化するメカニズム自体不明だから)背中から伸びた4本来の脚で歩こうとすると普通に身体が浮くレベルだ。
『んー…やっぱりちょっと固まっちゃったね…ごめんよ。』
「ん!!だいじょぶ!!ん〜!!ぷはぁ!!のびた!!」
わちゃわちゃとストレッチする様に脚を動かして動きに自由度が増したところで私に対して満面の笑みを浮かべるエルピダ、うーんこのスマイルプライスレス!!
ん?姉バカ?ふっ…その言葉は私達にとって褒め言葉でしかないね!!
周囲を見渡しても入場と同時に似た様な行動を取っている親子は多い、むしろ完全な人間は私しか居ないかな?スタッフすら人種じゃ無いしね。
あっ、ひとつだけ皆に注意だけどローゼン・エーデルシュタインにおいて人種では無い人型種は人権が認められてないとかそういうことは決してないよ、むしろ1人の人間としてしっかりと人権が与えられているし理不尽な誹謗中傷を行った者に対しては子どもに対しても容赦なく厳罰化されてるくらいだからね。
全宇宙見通してもここまでの制度を確立させてるのはローゼン・エーデルシュタインを除けば両手で数え切れる程度しかない、すごいことなんだよ〜?
『さて、早速遊ぼっか!!何したい?』
「ん〜…いっぱい糸出したい!!」
『そっかそっか、それじゃ紡績体験でもしてみようか!!織った布は持って帰れるみたいだしね、エルピダの糸は色々大切だからね。』
「あいっ!!」
エルピダはアヴァロン内でもあまり糸を吐こうとしない、理由を聞いた時に「おねちゃ達のそうじたいへんになっちゃうでしょ?」と何を当たり前のこと聞いてるの?的に言ったものだから母上含めた全員で会議が行われた位だ。
蜘蛛にとって…と言うか糸を吐く蜘蛛にとって糸を定期的に吐かないと言うのはそれだけで甚大なストレスと負荷をかけてしまう、エルピダはケロンとしていたけれど何処でそのストレスが爆発するかなんてわかったものじゃないから大変だったのだ。
と言うことで今回自分から言い出してくれたことにはめちゃくちゃ感謝していたりする、嬉しそうに早速紡績体験エリアに向かってみるとそこには似た様な糸を吐く種族の子たちがいっぱい。
やっぱり家の中じゃストレス緩和まで行く程に糸は吐けないんだろうなぁと感じる、そしてなんで持ち帰っていいのかという理由も分かった。
糸を吐く大半の種族の人達が蚕の様な紡績産業に大変貢献している種の人達なのだ、そういう人達は自身の吐いた糸を自分の衣服に仕立てることが常なのでそのための配慮という事だろう。
『それじゃエルピダ、ここに吐いて行ってね。私が紡いでいくからどんどん行こっか。』
「あいっ!!いくよ!!」
ちなみに蜘蛛型人種の大半は頬にある鋏角の出糸管から糸を吐くのだが、エルピダは指の先端に出糸管があって純粋な出力で言えば5倍程度だ。
だからあっという間に糸車が分厚くなっちゃう、スタッフの方に交換用糸車を数個用意してもらわないと間に合わない!?やばい!!エルピダ止まってぇぇぇぇえ!?
「んぅ〜きもちぃ!!」
んぐぅ…こんな中止まってとなんて言えないよぉ…なるべくエルピダの楽しみを中断させないようにスタッフの方と協力してめちゃくちゃなスピードで糸車を交換しつつ何とか糸を吐き切るまで頑張りました…結果糸車数個分の糸を吐いたエルピダが「まんぞくっ!!」と満面の笑みを浮かべて終了、吐き出した糸は直径0.0017mmでありながら張力が1mmにまで紡ると300kgに達すると言う超絶強力な物でした。
勿論全部お持ち帰りしましたよ、下手に研究されてレーダーとかに映らないって言う特性がバレたら誘拐されて研究の為に酷使されることが目に見えてるしね!!
ヴィ「そっちの調子はどう?( ゜д゜)」
グィ「モレッドちゃんが食べ過ぎでグロッキーですね( ´・ω・`)」
モゴ「エルピダは垂直跳びで8mを叩き出したよ!?:( ;´꒳`;)」
オヴ「キスハちゃん止まってぇぇぇぇ(.;゜;:д:;゜;.)」
マー「…楽しんでるみたいで何より(`・ω・´)」




