想う気持ちはamabile
「お姉様は大丈夫ですか?」
「さっきグィネヴィアから連絡が入ってましたね、意識は直ぐに戻ったそうです。G酔いでグロッキーみたいですけど直ぐに戻ってこられると。」
「良かったです。」
俺はシュトラーセ殿下とハーレイ殿下のお見舞いに医務室に移動中、シックザールさんとシュヴァイゲンさんは「私共も少しでもお手伝いを。」と先んじてグィネヴィアと一緒に医務室に行っていたのでこの2人という訳だ。
モレッド達と違って歩くペースもとてもゆっくり、ひょこひょこという表現がしっくりくるシュトラーセ殿下の歩幅は自身の体力の無さを理解した上で最も疲労の少ない歩き方なんだろうな。まぁちょくちょくモレッド達と走り回っては息が上がったりもしてるんだけど。
「お姉様の動き……最初と最後の方では別物に見えました。」
「ほほぅ、見る目がありますね。その目は大事にされた方がいいですよ。」
「……ハーレお姉様やモレッドお姉様達の様なAMRSの適正で、という事でしょうか?」
「それだけとは言いません、何も操縦だけがAMRSの適正とは言えませんよ。」
歩幅を合わせて、そんな会話をしながら医務室に向かう。シュトラーセ殿下も俺に合わせようとペースを早めようとするが、それこそ俺からすればかえって申し訳なく思ってしまうというもの。
「殿下、如何です?肩車など経験してみませんか?」
「肩車?」
キョトンとした顔でオウム返しする殿下を俺はそのまま担ぎあげて乗せる、「はわわわっ!?」と驚いた声を上げながらも普段より圧倒的に高い視点に楽しそうな反応を見せてくれた。
「どうです?」
「凄い高いです!!なるほど……背の高い人はこのような視点だったのですね!!」
着眼点がすっごい大人びている気がしないでも無いが、これならば殿下の体力を消耗せずに尚且つ早く移動出来る。
今まで人の肩に乗ったことなどないであろう殿下に、新しい経験を与えることが出来たのは俺としても嬉しい限り。
因みに、ハーレイ殿下もシュトラーセ殿下もアヴァロンではスカートを履いたりはしていないぞ。
「郷に入りては郷に従え」を忠実に守って基本的にパンツスタイルだ、これはシックザールさんとシュヴァイゲンさんも同じ。
だから肩車した時に「キャッ!?スカートが!!」なんてハプニングは起きないのだ!!安心したまえ紳士諸君!!
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「出来るのならすぐにでも再開したいんだがの……」
『ダメです、Gで内臓に少しではありますがダメージがありますので。』
「ぐぬぬ……」
医務室前に着いた俺達の耳にはそんな会話が聞こえた、俺もシュトラーセ殿下も苦笑せずには居られなかったな。
「お姉様、入りますね。」
「おぉ、シュトか。良いぞ。」
肩車したままでシュトラーセ殿下が声をかけるので俺はそのままの状態で入ることに、入った瞬間シックザールさんとシュヴァイゲンさんが「殿下!?」と驚きの声を上げた。
そりゃそうだろうね、王族ともあろう女児が野郎に肩車されてるんだから。
2人ともオロオロ、シュトラーセ殿下はニコッと笑って「ソラ様、私は満足しましたので下ろして頂けますか?」と言うので俺はワキを持って下ろす。
胸に手を当てて一礼して「貴重な経験でした。」とニッコリ。
良きかな良きかな、喜んでくれていたようで何よりだ。
「ふむ……シュトよ、楽しそうであったな?」
「それはもう、普段私は皆さんから見下ろされていましたし?これが見下ろす側の視点かとワクワク致しました。」
「性格が悪いのぉ……」
「もちろん冗談でございますよ、ワクワクしたのは事実ですがね?」
ハーレイ殿下のベッドに寄りかかって話し掛けている光景は何ともほのぼのとしたもので、会話内容も茶目っ気を出すシュトラーセ殿下とそれを聞いて微笑むハーレイ殿下とそれを近くで聞く2人の傍付き。
試験中ってのはパイロットはピリピリしがちだからこう言ったガス抜きみたいな事はとても大事だ、特にそうしてくれとは言っていなかったけれどシュトラーセ殿下が自然にやってくれた事に感謝だな。
『お父様、シュト様に肩車をしたのは何故です?』
「んぁ?歩くペースを俺に合わせようとしてきて疲れるだろうからってことだが?」
『私達はしてもらったことがないですっ!!』
「おぉう?そうか……今度してやるよ。」
『絶対ですよっ!!』
まさかのグィネヴィアからの羨ましいコール、別に減るもんでもないし頼まれたらいくらでもやってやるってば。頭を撫でて機嫌をとったら満足気な顔で『むふ〜!!』と、まるでマーリンのような反応だな。
我が娘達ながらファザコンが過ぎるのでは無いだろうか?嫌じゃないけどな!!
「ハーレイ殿下、先の試験結果は殿下の想定以上の活躍でかなり良い進捗具合となっています。これは開発者の俺としても正直予想外でしたね。」
「うむ、キスハ嬢を付けてくれた事に感謝する。彼女でなければ気がつけなかったことであった。」
「そいつは重畳、コニーゲのOS書き換えは順調に進行中ですので再試験開始は明日以降です。今は十分に身体を休めるように。」
「あいわかった、シュトよ折角じゃしお主から見た妾の感想を聞かせておくれ。」
「素人目で宜しければ喜んで!!」
この話に俺が紛れ込むというのは野暮というものだろう、という事で俺は退室して格納庫に向かう事にした。
コニーゲの整備に入っているヴィヴィアンとOSを書き換えているティトンから話を聞きたいからだな、機体の間接疲労と蓄積データから更にハード側もアップデートしていけるからな。
え?俺はパッケージがこれで100%完成とは言っていない筈だぜ?
第4世代AMRSをパッケージで第9世代クラスに引き上げるなら機動性だけで終わらせるのなんてつまらんよなぁ……?
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『けつろーん、第9世代クラスまでの性能は無理!!フレーム側が耐えきれないねこれ。』
『ヴィヴィアンの結論を肯定します、OS側の補正でも機体の疲労を軽減仕切ることは不可能です。機動性のアップのみでギリギリと言えるでしょう。』
「oh......」
ロマンは時として現実に打ち砕かれる、まさにその現場にぶち当たってしまったということか……
「いや……考えてみれば第4世代クラスのフレームが核融合炉クラスの出力を受け止め切れるわけないよな…」
『そゆことだね、ギリ第7世代クラスじゃないかな?ヴァレットって言う前例もあるし不可能では無いよ。』
『コニーゲ自体のフレーム強度が第4世代ではかなり高いという事が幸いしていますから、全開出力を絞って余裕を持たせれば武装の搭載も十分可能です。』
「それで行くかぁ……よしっ!!ティトンはそのままOSの書き換えを続行、お前の事だから素体の方も弄ってるんだろ?」
『元よりあったパッケージOSとの競合を減らす為に行っております。』
「ヴィヴィアンはフレームが耐えられる程度までパッケージ側の出力とかを絞ってくれ、オヴェロンとマーリンに協力してもらって構わん。」
『りょうか〜い、因みになんだけど武装のプランはどうなってるの?』
「んー……多目的攻勢盾って感じかな、実弾は流石に積めないからエネルギー系で考えてるぞ?」
『はいはーい、その辺の負荷も踏まえてパッケージ側でカバー出来るようにもしておくね。』
と、言うことで最高のロマンとは行かなかったが次善のロマンは得られると言う結果になったので俺は十分満足です!!
明日も忙しいぞ〜これは。
ヴィ「フレームにガタが来てなくて良かったよ〜(*´ `*)」
グィ「体調にも問題はありませんでしたε-(`・ω・´)」
モゴ「平和でいいねぇ(*¯꒫ ¯* )」
オヴ「ヴィヴィアンフレームの限界値幾つさ!!( •́ㅿ•̀ )」
マー「こっそりフレーム変えちゃわない?( ・᷄-・᷅ )」




