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贈り物作りはAdagio

 さて、採掘作業と修復パーツを制作するのと時を同じくして俺はシュトラーセ殿下用AMRSの設計を行わなければならない。これには俺一人ではちょっといい案が思い浮かばなかったので殿下お付きのシュヴァイゲンさんにもご協力を頂くことにした。


「それじゃシュヴァイゲンさんご協力、よろしくお願いします。」

「承りました、私としても恐れ多き事ではありますが娘のように思っているシュトラーセ殿下に贈るAMRSの建造に関われる事を光栄に思います。」


 シュヴァイゲンさんは正直こういうことに後ろ向きだろうなとは思っていた、と言うのも旦那さんとお子さんを失った理由が海賊によって家族旅行中に乗船していた旅客船が襲撃され運悪く海賊機が脅しで攻撃を仕掛けたところに避難していた旦那さんとお子さんが居たそうだ。


 だからシュトラーセ殿下がAMRSに興味を示しているときも少し苦しそうな表情をしていたことを俺は知っている、けれども子どもの好奇心と言うのは素直に消えてはくれないもの。なおかつ殿下は今まで自身の自由という物はほとんどなかったので、こういった場で興味を持ったものに関しては与えてあげたいと思うのも実母ではないにしろ乳母として思うところがあったのだろう。


 普通の乳母ならばそう言ったところも厳しくするんだろうけれど、自身の子を失いその子と同じくらいの子を育てるために雇われたのだから多少は自身の子どもと重ねてしまうのは仕方がないと言えるのではないだろうか?よくわからんけれども。


「大まかな要望自体はシュトラーセ殿下から聞いています、もちろん殿下専用機を作りますからとは伝えていませんよ?あくまでどんなAMRSを作る予定なのかと聞いただけだ。」

「察しのいい殿下なら気が付きそうなものですが…今の心境からすればそこまで回りませんね、それで?どのようなAMRSをご要望されたのでしょうか?」

「そうですねぇ、こんな感じです。」


 殿下の書いたメモ書きをシュヴァイゲンさんに見せる、要望が多いから自分で書くと言って書き終えた後俺に持ってきてくれたのだ。


「これが…殿下の要望?」

「そうですね、特に書き換えたりもしていませんので。」

「でん…か…」


 そこに書いてあったのはたった二つの要望だけ。


「・絶対に撃墜されない生存性

 ・大事な人を守る盾としての役割を最優先」


 以上の二つ、これが差す意味を俺はしっかりと理解している。シュトラーセ殿下に聞いちゃったからな「私には絶対に…命に代えても護りたいものが3つあります、一つ目はお母さま、二つ目はハーレ姉さま、そして三つめはシュヴァイゲンです。でも私が死んでしまったらその3人はとっても怒ってしまうでしょうし、とってもいっぱい泣いてしまうから…私は死なずの盾が欲しいのです。」とな。


 シュヴァイゲンさんがうろたえているのを見て、俺はその言葉を伝えた。伝えたとたんに目が潤んで涙が止まら無くなってしまい、嗚咽を漏らしながらそのメモ書きを抱きしめてうずくまっていた。

 ただの家臣でしかない自分に、血のつながっていない乳母でしかない自分に。時には厳しい言葉もかけてしまった、自由の無い部屋の中でしか生きていられなかった子に、ここまで思われていたという事を知った彼女はただただ涙するしかなかったのかもしれない。


「とまあそんな感じです、俺はこの2点のみを追求した『ローゼン・エーデルシュタイン至高の盾』を準備させてもらいますよ。」

「…っ!!はいっ!!微力ながら私もお手伝いさせていただきます!!」


 鼻声になりながらも力強く返事を返してくれたシュヴァイゲンさん、さっそく俺はコンソールに向かい設計を開始することにした。


 シュトラーセ殿下のメモ書きの中で書かれているのは生存性と盾、特に盾という部分を重視するべきだろう。殿下がAMRSを出した時点で、恐らく守りたい人と言うのは危機的な状態になっているという事を想定するならば迅速に対象者の元に駆け付けられる機動性と、あらゆるものを弾き返す堅牢性が必要と言う事。


 堅牢性と機動性とは相反するもので、機動性を重視するならばその分装甲などを犠牲にしなければならず、堅牢性を重視するならば装甲の厚みが増して鈍重になってしまう。

 これを解決しているのがある意味ギャラハッドのPercivalなんだが、あれはメインスラスターの莫大な推力を持って強引に動かしている感も否めないので設計思想から別ベクトルで考えなければならない。


「盾としての防御力…駆けつけるための機動性…そして何より問題なのがブラックボックス化は避けられない機体データなんだよなぁ…」

「ヴェネスにも任せられないものなのですよね?」

「うーん…ヴェネスはハーレイ殿下の傍付きとしての性能に特化させちまったから、AMRSの…特に特化型となると厳しいものがありますね。」

「そういう物ですか…いっそのことモレッド嬢のような()()()()()()と言いましたか?ヴァレットに搭載されている遠隔砲台は。そのようなものがあればよいのですけれど。」

「!?それだ!!」


 わざわざ攻撃用の武装をバルザミーネの様な子機に搭載する必要がないのなら稼働時間はかなり伸びる、もっと言えば活動範囲を伸ばすなら子機の内部にジェネレーターを内蔵してしまえば活動限界なく独立行動が出来る。


 しいて言うなら推進剤の問題があるくらいだけど、それも低燃費・高出力スラスターなら十分解決できるレベルだしな。


「ただこれの一番の問題はシュトラーセ殿下に適性があるかってことなんすよねぇ…」

「適正…ですか?」


 遠隔操作型砲台を使用する際のメリットデメリットは数多くあるが、運用するにあたっての前提として「個人の空間認識能力に依存する」という物がある。

 要するに前にも話したけれど「周囲に何があってどう動けば目的地に到達できるか」と言うのを3次元的に認識できる力がないとどうにもならないのだ。


 地図を見て目的地はここだからここを右折して次を左折みたいなことではなく、前後左右をふさがれてるからここはいったん上昇したうえで次の障害物を回避、その後は上下左右に移動しながら目的地に向かう。と言った感じだ、説明できてる?


「簡単に言えば脳内で立体的に捉えられるかって、話しなんすよ。もっとわかりやすく言えばパーソナルスペースが極端に広い人と言えばいいですかね?」

「…そう考えると殿下には少し難しいかもしれませんね。」


 元より自室に閉じこもって生活してきた殿下だ、しかも顔を合わせる人間はごく親しい人間の身だったであろうことを考えてもパーソナルエリアが極端に狭くなってしまっていても何ら不思議はない。


 そうなってくるとこの案もダメだということになる、正直かなりいい案だとは思ったのだが…

 そう簡単には行かないという事だろうな、しかたがない立ち返って機体側で解決できる方向で考えて以降。


「一応似たようなコンセプトが俺のAMRSのパッケージにはあるんで、それを更に特化させたうえでブラッシュアップしていきましょうか。」

「お願いします、どうやら私では設計案では役に立ちそうにありませんから。」

「意見をもらえるだけで助かってますって。」


 シュヴァイゲンさんは自分が役に立っていないと言っているが、こういったのは完全な素人の思い付きが思わぬ解決策を見つけ出してくれたりするのでそれは否定しておいた。


 実際シ○ビみたいな案は俺の頭から完全にすっぽ抜けていたしな、というわけで基本に立ち返って殿下のメモ書きに目を落としながら俺とシュヴァイゲンさんは「う~ん…?」としばらく唸り続けるのだった。


ヴィ「シュトちゃんって家族思い?('ω')」


グィ「そうですね、特に自分に近しい人をよく見ている印象ですね('Д')」


モゴ「護る為の力…か( 一一)」


オヴ「必要になることが来ない方がいいけどね(;´・ω・)」


マー「そりゃそうじゃないか(;゜Д゜)」

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