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思いだけでも、力だけでもダメなのだ

 シックザールさんの部下、と言うかこれはハーレイ殿下付きの侍従の数名と共にパーティー会場から離れ貴賓室にて事が起こるのを待つことにした俺はかなり暇を持て余すことになってしまった。


 実際事が起こるまで何も出来ないと高をくくっていたのでこればっかりはどうしようもないんだが、それにしても俺の行動が早すぎただろうか?向こうが仕掛けてくれなきゃ俺も行動を起こすことが出来ない。


 ただ問題は実力行使に出られた場合だな、現在ギャラハッドは腹部にヘルシャフト・リュストゥングに打ち抜かれた大穴があってそれを応急処置として既存の装甲で覆っているだけの状態。

 要するに張りぼて状態なのだ、あんな状況で今まで通りの戦闘機動なんてとってみろ。秒で貼り付けただけの装甲がはがれて穴が晒されちまうぞ。


 流石にそんな状況でギャラハッドを出すわけにはいかないんで、予備機も今後作成するべきか?とはモルガンとも話はしたしむしろ新規設計の新型を用意するのもありかもとまで発展したんだがそれはとりあえずおいておいて。


 現状、事が起こったという報告もないのでのんびりするしかないわけだ。


「平和に事が済めばいいんだけどねぇ。」

「失礼しますソラ様、ご家族の皆様をお連れしました。」

「んなにぃ?」


 妃殿下側の侍従の声と共に扉が開かれ、モルガン達全員が俺の居る貴賓室に入ってきた。

 あるぇぇ?これじゃ俺の作戦が成立しなくなるぞぉ?


『話は聞きました、そもその作戦は私たちが会場からいなくなってしまえば成立しないものです、私たちはずっと妃殿下たちと会話をしておりそれは周囲の目から見ても明らか。かつ何か事を起こすにしてもありとあらゆる角度からその行動は監視されますので。』

「でも、こっちに来ちまった方がそう言った行動はとりやすいと考えられちまうんじゃないか?」

『むしろ望むところです、王家所属の侍従がこれだけ監視の目を光らせる中どうやってそれだけのことが出来るというのでしょうか。それに、ここにいるのは最も王族に信を置かれている方々。そのような方達が戯言に惑わされ私たちを貶めるとでも?』

「…それもそうかねぇ。」


 モルガンの考えに一応は納得した、この会話を聞いている侍従の皆さんも態度には出さないが「当然です」という雰囲気を醸し出しているので問題はないだろう。


 んじゃ、あと会場の動きの把握だが…


「申し上げます、既に怪しげな動きをしていた貴族には退室を求め尋問が開始されております。なお、目的等を吐き出させるには今しばらく時間がかかりそうですのでもう少々お待ちいただけますと幸いです。」

「…動きの速い事で、陛下の指示かな?」

「はい、ソラ様の進言により陛下も「膿を絞り出すにはいい機会よ、ソラには悪いがな。」と仰せでした。」

「手が早いこってまぁ…」


 流石は陛下だな、自分や目先の利益しか考えず自国の危機(俺が暴れる危険性)を理解していない奴を浮き彫りにしたわけか。そう言ったやつはたいてい腐りきってるから一石二鳥ってか?まぁそういう役回りをさせられても不満ではないから構わないけどな!!


「失礼します、ローゼン・エーデルシュタイン第12王女殿下『ローゼン・ツヴォルフ・プリンツ・ザイデンシュトラーセ』様がお越しです。」

「なぬ?なにゆえに?」


 ローゼン・ツヴォルフ・プリンツ・ザイデンシュトラーセ様、御年3歳の幼女でローゼン・エーデルシュタインの末席に名を連ねる王女殿下。

 人形のように整った顔立ちに覗く紅い瞳、絹のようなつややかなブロンドヘアー。きめ細やかな肌をして、付いたいた二つ名が『ローゼン・エーデルシュタインのピジョン・ブラッド』。


 陛下自身も「これ以上子を成すことは望まぬ」と告げ最後に産まれたのがザイデンシュトラーセ様というわけだ。

 ちなみに御母堂はグソク様と同じ第4側妃様、しかし教育自体は至極まっとうに行われており齢3歳にして遥かに優秀な頭脳と外交力を示しているとか。


「シュトちゃん来たの?」

「シュトお姉ちゃん!!」

「しゅとねぇね?あいたい…」


 なんとモレッド・キスハ・エルピダは先の会場内で顔を合わせており愛称で呼ぶことを許されているのか、我が子ながらなんというコミュニケーション能力。


「入っていただこう、そもそもこちらには拒否する権限なんて無いんだからな。」

「ありがとうございます、ザイデンシュトラーセ様の御母上であらせられます第4妃様もいらっしゃられております。」

「先に言ってくれない!?」


 なんという失態を!!第4側妃様と王女殿下を多少とは言え外で待たせるなど傭兵ごときが行っていい行為じゃないだろうが!!


「失礼します、私がローゼン・エーデルシュタイン国王ローゼン・エーデルベルク・ヴァイザー・エーデルシュタインが第4側妃ローゼン・フュンフ・シュヴァイゲンと申します。」

「はじめまして、ローゼン・ツヴォルフ・プリンツ・ザイデンシュトラーセともうします。」

「お待たせしてしまい申し訳ない、傭兵ソラ・カケルです。家内についてはご存知の事かと思いますが何か御用でもございましたでしょうか?」

「…お父さんがめちゃくちゃ丁寧…」

「なんか違和感あるね~。」

「なんかいやなかんじ…」


 こら…モレッド・キスハ・エルピダよそんなことを言わないでくれ、一応俺だってこういった場所では自分の立場という物をわきまえているんだ。

 だから「なんか明らかに外面がいいような父親なんて見たくなかった」的な顔をするのはやめてくれ、本当に心が痛くなるから…


「えぇ、先ずは傭兵ソラ。貴方の予測通りとある貴族派閥があなたをつるし上げようと画策していたことを捕縛しました、そしてその為の標的になったのがザイデンシュトラーセ。私の末娘でした。」

「つまり、口外はされていないグソク様の件をザイデンシュトラーセ様にこじつけて私が危害を加えようとした。と言う筋書きだったのですか?」

「恐らくは、既に首謀者を含め実行犯もとらえておりますのでこの後は会場に戻られるも母艦の…アヴァロンと言いましたか?に帰られるも自由と陛下は申しておりました。」


 うーん、俺を矢面に立てる作戦は心の深き陛下によって実行される前から潰されたという事か。いや、もしかしたらザイデンシュトラーセ様に危害が及ぶのを避けるためだったのかもしれんが。それはそれとして、陛下には感謝の言葉を告げなければいけないだろう。


 そして、わざわざそれを伝えに来てくれた第4側妃様にもだ。


「ありがとうございます、わざわざ第4妃様が1傭兵ごときに声をかけに来てくださるとは。後程再度会場に戻りその場にて陛下には感謝申し上げようと思う次第です。」

「構いません、私としても傭兵ソラ…あなたには感謝せねばなりませんでしたから。グソクの件は貴方に大変な迷惑を、私を含めグソク以下の息子娘も合わせて処断されるであろう危機でしたから。」

「成り行きですよ、確かにグソク様の教育については行き届かぬところもあったのでしょうがそれは第4妃様のグソク様以外の息子様娘様に当てはまるとは言い切れません。そもそも私も娘を持つ1人の父です、一人の犠牲で他が救えるとなるのであれば差し出してしまうかもしれません。差し出す娘については心苦しいですがね。」


 実際に差し出すことは無いにしろ、ここではそう言っておくのが良いだろうなと思った。第4妃様の立場は実際めちゃうちゃ危うかったのだ、ハーレイ殿下の進言と俺達による活躍が無ければ第4妃様とその子息子女は処刑の憂き目にあっていたのだから。


 もしそうなった場合はハーレイ殿下から「もし…もし仮にだ、第4妃…グソク兄上の母君と、その子どもたちが処刑されるということになればお主が匿ってくれぬか?仮にも腹違いの姉弟たちなのだ。それに第4妃様も妾には大変良くしてくれていての…長子より継承権の高い、しかも女である妾を実の母よりも愛していてくれた方なのだ。」とまで言われていたからな。


 温情と言うには頭が高いけれど、それくらいはしてもいいと思える方だった。


「傭兵様、私のことはシュトと呼んでください。モレッド様、キスハ様、エルピダ様にもそうお願いしました。」


 おっと、大人の会話に混ざらぬよう我慢していたが遂に限界になったようだ。

 幼いながらも将来を感じさせるカリスマ性を声色からにじませて、自分の愛称を呼ぶように仕掛けるとは…この幼女…出来る!!


「承知しました、ローゼン・ツヴォルフ・プリンツ・ザイデンシュトラーセ様。」

「むぅ…ですから、私のことは…」

「もちろんです、シュト様。先ずは殿下の御名前を呼ばせていただきましたことに謝罪を。」

「…お母さま…」

「ふふっ、シュト。ソラ殿のほうが正しいのですよ、仮にも私たちは王族。許可を得たとしても最初から愛称で呼ぶことなど許されませんからね。」


 ちょっと意地悪だったが第4妃様が俺の意図を理解してくれていたようで、ザイデンシュトラーセ様が拗ねた感じで抱き着いていたところを頭を撫でて優しく諭していたのだった。


 そして、この後シュト様との交流はモレッド・キスハ・エルピダに任せて俺はモルガンと共に会場に戻り、陛下に感謝の意を伝えてからパーティー内を散策。いろいろわきまえた貴族の皆さんとのんびり会話をしながらパーティーを楽しみましたとさ。

モレ「シュトちゃんホントにきれいだよね(*'ω'*)」


キス「スベスベ~モチモチ~(*´з`)」


エル「あうぅ…わたちのいいたいこといわれちゃった…(´・ω・)」

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