5人目の候補者
「えっ…え、えっえ、」
パニックになってキョロキョロするリコ
「ここどこ!?!?ええええええ!?」
パニックになるリコが叫んでいると
何故か絨毯が嬉しそうにバタバタ動きとんでもないスピードで急発進した
「ちょっと待って!!落ちるぅううう!!!」
あまりのスピードに叫ぶリコ
絨毯が気づいたかのように少しスピードを緩める
「ま、まさかとは思うけどここは君がいた世界!?」
バタバタと嬉しそうに反応する
「いや、確かに戻れるようにって願ったけど本当に叶うと思ってなかったし、なんでアタシまで来ちゃってんのよ〜!!!」
辺り一面砂漠で完全に違う世界に来たことを実感する
こちらの世界も夜でだけど月は満月ではなく三日月だった
「ちょっと一回止まって!!」
ピタッと止まる絨毯
――もしかしてもう一回願ったら戻れたりしない!?
思ってやってみたものの何にも風景は変わらなかった
「えーー!!どうすんのこれ!!」
叫ぶリコの声で進み出す絨毯
「ちなみにどこに向かってるの!?自分の家!?」
絨毯の角がコクコクと反応した
絨毯はどんどん進みリコは絨毯の乗り心地にだんだん慣れてきていた
「と、とりあえず絨毯の家に泊まらせてもらおう…今日はもう疲れたし帰り方は明日にでも…」
絨毯はどんどん進み宮殿に近づいていった
「えっ…まさかあの世界遺産にありそうなアラビアンな宮殿が家なの!?」
とんでもなく大きな宮殿に驚くリコ
フワリフワリと高く上がり広いバルコニーに降りた
「えっ…アタシ不法侵入で捕まったりしない…?」
トコトコ歩く絨毯の後ろについて行くと
コンコンと絨毯がバルコニーのガラスでできた窓をノックする
カーテンが閉まっているせいで中が全く確認できなかった
バッとカーテンを開かれると怖い顔した護衛みたいな人が絨毯を見て驚く
バタバタと居なくなると
「待っていたぞ!!」
金髪の男の子が飛び出して来た
絨毯が嬉しそうに抱きつく
――男の子なのにすごい可愛い顔…金色の髪に金色の目…長い髪を後ろで三つ編みにしてる…
ほんとファンタジーの世界に飛び込んできたみたい…
10歳くらいかな…大きくなったら凄い事になりそう…
パッとアタシを見る少年
「この者は絨毯が連れて来たのか?」
不思議そうに絨毯に聞くとコクコク頷いた
「見た感じ…普通だが…」
リコの頭からつま先をじっくり見て言う少年
――いや、貴方と比べたらどっからどう見ても普通だし、なんなら地味だよ!!
「いきなり来てごめんなさい、びっくりすると思うんだけど全然違う世界きて…」
話してると途中に
「まずは中に入れ」
と部屋の中に招き入れてくれた
――この子は誰なんだろう…
中に入るとズラーっと護衛ぽい人から偉そうな人まで並んで立っていて驚くリコ
――歓迎されてる感じじゃ…なさそう…
ピタッと足が止まると絨毯が手を引いてくれた
「名はなんと言う?」
歩きながらリコに聞く少年
「リコ…カンザキ リコって名前」
「リコ…珍しい名前だな、やはり異世界から来たのか?」
「そ、そうなの!!絨毯を元の世界に戻してあげようと月にお願いしたらこんな事に!!」
アワアワして少年に話すリコ
「月か…そうか…」
と笑う少年
すると…
「貴様、誰に向かってそのような口の利き方をしている」
とリコに向かって怒る声がした
振り返ると
体格の良い黒髪の綺麗な顔をした男の人が不機嫌そうな顔で見ていた
「よせ、クロード。異世界から来た者だ。我のことを知らなくて当然」
「えっ、え!?」
王様が座りそうな超高級そうな椅子に座る少年
――えっ…まさか少年…
「我の挨拶がまだだったな、我はアフィリア・ファジャラ。この国の王だ」
ニッコリ笑う少年
「王様…」
ポカンして少年を見るリコ
――こんな小さい子が王様!?
「リコ、かしこまらなくて良い。お前は魔法の絨毯の恩人だからな、我の恩人とも言える」
「そ、そんな仲良しなんですか!?」
「家族のようなものだ」
ふふっと笑うアフィリア王
「そうなんですね…よかったね絨毯!帰って来れて」
リコに飛びつく絨毯
「臆病な絨毯がこれだけ懐くとは…珍しい事もあるものだ」
驚くアフィリア王
「王様、私元の世界に帰りたいんですけど、とりあえず今日ここに泊めてもらえたりしないですか?」
――帰る方法なんて今日探そうが明日探そうが変わらなそうだし…まず凄い疲れたし…しかも宮殿だし!!
宮殿にめちゃくちゃテンション上がるリコ
「リコ、お前はもう元の世界に帰る事はできないかもしれん」
「えっ!?!?なんでですか!?」
「お前は5人目の月の姫候補になった」
――えっ………5人目…?
「月の姫候補!?!?」
「あぁ、月の姫に選ばれた者は我の妻になってもらう」
平然と話す王様
「待って待って待って!アタシそんな大層な役出来ませんよ!!」
――えっ、どういう事なの!?異世界に来ていきなり王様の嫁候補!?
「絨毯が連れて来た者だ。候補になって当然」
「アタシに勤まりません!!」
――無理に決まってるじゃん!!
「おい、女いい加減にしろ王に口答えするとは何事だ」
さっきも怒ってた黒髪男が出てきた