7本目
「なあ、お前はそもそもここにどうやって来たんだ?」
「やだ、気持ち悪い! そんなにわたしのことを訊いてどうするつもり!?」
何かもう頭が痛くなってきた…ってゆーかさっきのバール攻撃で、ホントに痛いし…。
「どうもこうも、この国から脱出してお前の国に行かなきゃいけないから、参考にしようとどうやって来たか訊きたかっただけだよ」
「ほうほう、そう来たかうんうん」
何が「ほうほう」だよ、バカが上から目線だとマジでムカつくな。
腹のところに俺のウンコが付いてるし、何かこいつ顔は可愛いけどウンコみたいな女だわ。
しかしあれね。
ずっと裸でいても、相手の反応が普通だと慣れてくるものなのね。
人間の適応力凄いわ。
「近くまで歩いてきたの」
「へ? そんな近いのか、お前の国とこの国は?」
「うん、歩いて2ヶ月くらいだから近いよね」
おーい。
めちゃくちゃ遠いし、この時代は車とか電車とかないわけ?
「何かもっと便利な乗り物とかないのかよ」
「馬車あるけど、途中で馬の餌なくなったから、その辺の草あげたら死んじゃったの。馬はもったいないから食べた。美味しかったわ」
こいつサラリととんでもないことを言ってるぞ。
ふたりでこいつの国に行くときに、食料なくなったら殺されないだろうな…。
「あのさ、さっきこの国のヤツらを神々って言ってたけどどういうこと?」
「あいつらは人間が作った人造人間なんだけど、数百年前から人間より偉そうにしだして、自分たちは神だって言ってるみたいなのよ。だからゾンビも見つかると殺されるけど、わたしたち人間も見つかるとどうなるかわからないから、わたしはこのステルススーツを着て侵入したの」
「ステルススーツ? もしかしてそれを着ると見えなくなるのか?」
「うん、そうよ」
そういって女は腕時計のようなものをいじった。
すると、驚いたことにスーツを着てる首から下は透明になってしまった。
すげー、こういうところはさすがは未来だな。
しかし、話を聴いてると文明レベルは一部は高いが普段の生活などは中世とそんなに変わらないのかもしれない。
まあ、そんなことよりも、このステルススーツがあれば脱出はなんとかなりそうだ。
「そのスーツもうひとつないのか?」
「ないよ。わたしのだけ」
う~ん、そりゃそうだよな。
どうすっかな~?
「ひとつしかないから、あんたには頭のヤツ貸してあげる」
え、それって意味ある?
ま、まあ、頭のない男がいたら、ある程度混乱させて脱出の隙を作ることが出来るかもしれない。
つーか、なんか倉庫の外も騒がしいし、ここでウダウダしてても仕方がない。
「よし、一か八かやってみるか。なるべくここに馬車があるならそれを奪って逃げた方がいいな。2ヶ月も歩くなんてごめんだぜ。あと、食料も奪った方がいいだろうな」
「食糧庫の場所は知ってるわ! 何しろ、わたしが来たのはこいつらの食糧を奪うためだからね」
胸を張って言うことかね…。
それと、救世主を探しに来たんじゃないんかい!!
どうやら、たまたまこいつは俺が神々たちの議論の的になってるときに居合わせたらしい。
…まあいい。
俺たちはまず食糧庫に行って食料を奪ってから、馬車を奪取し逃げることにした。
異様な光景に、人造人間たちは超パニック。
何せ、首だけ女と首なし男が猛ダッシュしてるのだから。
首なし男はフルチンだしね。
相変わらずヤツらは何言ってるかわからないけど、相当混乱しているようだ。
「おー、これはうまいこといきそうだな」
「わたしの頭脳戦の勝利ね!」
確かにこいつのアイディアだったが、何かムカつくなぁ…。
俺たちはそのまま食糧庫を襲撃し、持てるだけもって、更に運がいいことに馬車まで奪取して神々の国から脱出することが出来た。
歩いて2ヶ月とか言ってたけど、まあ多分馬車なら2~3週間ってとこだろうか。
長時間この女と過ごすのもなんだが、まあそこは我慢して観光気分で楽しむとしようか。
「あ、そういやお前の名前訊いてなかったな。名前何つーの?」
「やだ、気持ち悪い! そんなにわたしのこと訊いてどうするつもり!?」
…またかよ。
ホント鈍器でブン殴りてえ。
「呼ぶの不便だからだよ」
「仕方ないから腐れハゲにわたしの尊い名前を教えてあけるわ。わたしの名前はマミムよ。わたしのことを呼ぶときはマミム様って呼びなさい」
殺してやろうか、この女…。
「もうわかってるだろうけど、俺のなま…」
「あたし疲れたから中で寝るね。あんた馬のことよろしく」
俺の名前…。
「お、おい、俺はどこに行ったらいいか道わからないぞ!?」
「何日かこの道真っ直ぐよ。じゃあおやすみハゲ」
くっ、この野郎…!!
まあ仕方ない。
俺は馬に関して素人だが、手綱を握ることにした。
うおー、2000年後の地球で馬車に乗っちゃってるよ、俺!!
実はかなりはしゃいでる俺であった。
実は今中国にいます。