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6本目

施設内を逃げてる最中に、テキトーに見かけたドアを開けたら倉庫みたいなところだったので、取りあえずそこにふたりで隠れることにした。


やべーよ、どこにどうやって逃げたらいいか見当もつかない。


何せ2000年後の地球らしいから、外に出たとしても移動手段とかさっぱりわからない。


しかし緊急事態とはいえ女の子の腕を握ってしまって、急に恥ずかしくなってきた。


何せ俺は小学生のときの林間学校のオクラホマミキサー以来、女の子に近づいたことがないのだ。


さっきの馬乗りといい、俺はどさくさに紛れてとんでもないことをしてしまった…。


こいつ変な女だけど結構可愛いし、多分俺のことを好きなはず。


だってさだってさ、俺が腕を握って逃げても嫌がってる感じじゃなかったじゃん?


とゆーことは、俺のこと好きってことじゃん?


まずはキスからだな!


あー、緊張するぜ。


俺のファーストキスはどんな味だろ?


俺は少しドキドキしながら、腕を握ってる女の方を向いた。


そこには俺と同様、素っ裸のハゲたおっさんがいた。


へ?


どゆこと!?


おっさんは何やら奇声を上げて俺に襲いかかってきた。


「うんぎゃぁ~~~ッ!!!」


思わず悲鳴を上げる俺。


ハゲた裸のおっさん同士が組み合う世にも酷い光景がそこには展開されていた。


おっさんは涎だらけの口から舌を出し、俺の口に近づけようとする。


「や、やめ! あたい初めてなの! ファーストキスは好きな人とするって決めてるのぉ~~~ッ!!」


思わず女言葉になる俺。


あと、1センチ、あと5ミリと凄まじい力で俺の唇を奪おうとするおっさん。


両腕を手錠のようなもので拘束されているので、思うように力が入らない。


あぁ!


あたい、こんなおっさんに純潔を奪われちゃうの!?


こんなことだったら、風俗にでもいってキス済ませておけば良かった…。


と、そこに間一髪、あの女が倉庫に入ってきておっさんを突き飛ばしてくれた。


「ハゲ! 無事!?」


「助かったぜ! けど、ハゲは止めてくれる? お前のストレートな言葉が俺の繊細なハートにヒビを入れたんですけど…」


「うん、わかったわハゲ」


こ、こいつ…!!


「何でお前がこのおっさんと入れ替わってるんだよ!?」


「知らないわよ! あんた急にこいつの手を取って走り出しちゃうんだもん」


また奇声を上げて今度はターゲットを女に変えて襲いかかってきた。


女はうまいこと側にあったバールを持ち上げて、思いっきり振り下ろした。


「死ねーーーッ!!」


渾身の一撃を当てることに成功した。


俺の頭に。


「ふんごッ!! …バ、バカ、俺じゃなくて向こうだ…」


どんだけバカなんだ、こいつは。


「あ、あぁ…」


「死ねーーーッ!!」


今度はうまく女のバールはおっさんの頭蓋骨を捉え、おっさんはぶっ倒れた。


おっさんは頭が陥没して、なんか口から泡吹いてピクピクしてる。


俺も危うくこうなるところだったのかと思うとゾッとした。


まだ頭がくらくらしてるし。


こえーよ、この女。


ないな。


この女が俺のこと好きなのはない。


「危なかったわね。こいつは魔王が使役するゾンビなの。こいつの唾液や体液や糞などが人の体内に入ると、ゾンビ化しちゃうのよ。脳が弱点なので、攻撃するなら頭がいいわ」


「魔王…? なるほど、俺はゾンビの容姿と似てたからあいつらにあんな目に合わされていたんだな」


女がバールをすっと上段に構えた。


「あんたのその髪型…感染したわね。ひと思いに殺してあげるね」


「ちょ、ちょちょちょ! お前はアホか!? 俺は元々前の世界からこうだろが!!」


「あ、あぁ…」


女はバールを下ろした。


こいつの頭どうなってんだ、一体!?


マジ変なヤツと関わっちまったぜ。


どうやら未来の地球には魔王ってのがいて、どうもそいつがゾンビを放ち感染を拡げているらしい。


この世界でハゲてるってのは、ゾンビと俺だけのようだな。


「なあ、なんであいつらは俺をすぐに殺さなかったんだ?」


「あんたは、理性がないはずのゾンビなのにしゃべったでしょ? 多分理性のあるゾンビを仲介して、魔王と交渉しようとしたんじゃないかしら。何せ魔王とは誰も会ったこともないし連絡先もわからないので、目的もわからないし交渉も出来ないの」


「ふーん、そうなんだ。ところでさ、人違いなんだから俺のこと元の世界に帰してくれない? お前もトオルってヤツ連れてこいよ」


「え? 機械壊れちゃったから無理だよ」


「ふざけんな、てめー! 何とかして直せよ!!」


「お、怒らないで、うわーーーーん!!」


…超めんどくせえ女だな、こいつは!!


しかし、何とか怒りを抑えてなだめながら言った。


「悪かった悪かった。だから泣くな。修理とか出来ないのか?」


「うーん知らない」


くっ、この野郎!


「そうだ! 博士なら直せるかも。運命改変装置作ったの博士だし」


つーかさ、普通壊れたらメーカーに相談するか修理に出すじゃん?


何でこいつは普通のことが出来ないかなぁ…。


「よし、そしたらその博士に頼んで直してもらってくれよ」


「えー、そんなの自分で頼みなさいよ。自分のことでしょ?」


「俺は博士がどこにいるのか誰かもわからないんだよ! つーか、俺がこんな酷い目に合ってるのお前の責任だろうが」


あー、バカと会話するとホント疲れるな。


「もう、ホントしょうがないな~。じゃあわたしたち人類が住んでる国まで行けば博士に会えるから、自分で頼みなさいよね」


「この野郎…まあそれでいいから連れていってくれ。それに未来の世界も見てみたいし、こんなところにはいたくないからな。しかし、お前らの国が人類が住んでる国なら、ここは何が住んでる国なんだ?」


「ここは神々の住んでる国エデンよ」


そんな話をしていると、倉庫の外がまた騒がしくなっていた。


俺を探しているのと、他のゾンビが紛れ込んできてるのかもしれない。


「おい、話は後にしてここを脱出しよう」


「そうね、そうしましょう」


俺たちはエデンから脱出するため作戦を練り始めた。

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