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Grace of blue ―グレース オブ ブルー―  作者: 快晴のセカイ
第1章 俺達の始まり─海の国の眠り姫─
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第5話 夢の続きを

夢を見た。

俺とハルが2人で笑いながら、世界を旅する夢だ。

まだまだ行っていないところが、見た事の無いものが、沢山ある。

限りなく続く黄金の砂の山、7色に輝く白い宝石を生み出す貝に、氷上で空に浮かぶ虹の波。まだまだ俺が名前も、存在も知らないものがある。

とても3年じゃまわりきれない。第1のままと言わずとも、このまま続いていくはずだった、いや…続いていくはずだ。

旅をしていたはずの俺の視界が、光に包まれると、俺は目を覚ます。


朝日が、俺の夢の邪魔をした。



いつもなら俺が起きる時間ならハルも目を覚ますのだが、どうやら今日はそういう訳にはいかなかったらしい。

心労と王室の設備のおかげか深い眠りから、覚めない様子だ。


隣のベットで眠るハルから目を逸らし、魚のシルエットが揺れ動く壁掛け時計を見ると、朝の7時くらいを示していた。


いい時間になればアリシアが起こしに来るはずなので、それまでハルには夢を見ていてもらおう。

特にやることもない俺は、火の魔術で小さな炎を出しては消してを繰り返し、手のひらで遊んでいた。

出来損ないなのだ、危ないことは珍しい条件が数多も重なるような偶然が起こらない限り起きるはずがない。


火で遊ぶのにも飽きてしまい、もう一度夢を見ようかと思ったが、虚しくなりそうなのでやめた。

何かをする訳でもなく、窓から海を眺めて長い時間を過ごしていると、ノック音がした。

アリシアが扉を開くと、ハルを起こす。


「ハル、おはようございます。起きて。」


淡々とハルに声をかけながら、揺さぶると、ハルは少し唸って、すくっと起き上がる。

俺はその時ハルと額をぶつけ合ってしまうことも多いのだが、アリシアは華麗に避けた。

なんだかムカついた。


「うぅーん…ご飯…?」


「おはようの前に飯かよ…。」


思わず笑ってしまうと、ハルはハッとする。


「おはよう!!!!!!」


食い気味でハルが挨拶するものだから、また笑ってしまった。



「な、なんでぇ…魔物狩りは中止じゃなかったの……??!」


「の、つもりだったけど。まぁ、それは昨日の話。」


目の前には、どこまでも続く青い海。

たまに大型の魔物が遠くの方で飛び跳ねている。

俺達は、昨日レミューリアへの始まりとなった、船乗り場にいる。

もちろん、あの魚人のお姉さんにも会ったのだが、…ここは割愛しよう。


ハルは、相変わらず俺を涙目で見つめて、ひたすら、嫌だだの、僕には無理だだの、したくないぃぃだの、嘆いているが、そんなものは関係ない。

冒険をする上で、ある程度の経験値、戦闘能力は必要となってくるしあって損はない。

それに、何かしら変化を見るには魔物の様子を見ることが1番なのだ。

ハルが原因なのか、何かほかの要因なのかを見極める為に、まず当初の予定であった魔物狩りをする事にした。

まだ、俺はハルじゃないって信じたい。


ハルの能力も、()()()()()水との相性は悪くない。

使いようによっては、大きな力となる上に、相性的に能力の応用がしやすいので、レミューリアでの経験値稼ぎは、俺達にとって、うってつけなのだ。

次の目的地での資金も調達したいので、今日1日は戦いまくるつもりだ。

…ハルは早くも、白い通路にしゃがみこんで、嫌だなぁ〜♪と即興自作ソングを呟く様だが。


俺はハルの腕を持ち上げ、立ち上がらせると、船乗り場のおじさんに声をかける。


海で魔物狩りをするには、能力で水上、水中、どちらかを移動するか、船で移動するのが一般的だ。

俺の能力もハルの能力も、これもまた使いようによっては水上移動をする事が可能だ。

しかし、戦闘をする上での余計な魔力消耗は命取りになるので、多少金を払ってでも船を借りる事が最適だろうと判断したのだ。


「おぉ〜ボウズ!こりゃまた随分久しぶりじゃねぇか〜。」


船乗り場のおじさん―ランドルさんが返事をしてくれた。

俺より少し身長が低くて、褐色肌のマッチョな40代くらいの彼の髪色は、濃い茶色をベースにして、金髪や、明るい茶色の髪が混じっている。

本人曰く、海のせいで髪色が抜けたとかなんとか言っていたが、ちょっとガラガラしたハスキーな声も海風のせいでなったそうだ。


「結構前なのに、よく覚えてましたね…!」


なんて、俺が素直にびっくりしていると、ランドルさんはガハハッと一息に笑って答える。


「自然の中の数年なんてあっという間さ。それに、えらく整った顔のアンタと、そんな変わった髪色のボウズ、なかなか忘れらんねーぜ?」


ランドルは、ハルをチラリと見ると、お互いに視線を合わせて、ガハハ、ハハハと笑う。

俺というよりも、大部分はハルの印象が強くて覚えていたのだろう。


「ランドルさん、俺達今日、海の魔物狩りがしたくて。何か良い船ないですかね?」


「あぁーそうか。確かお前らは、船から降りて戦ったりも結構してたよな。んー…小型じゃお前らにとっては魔物が積みきれなさそうだから、中型にしとくか。」


ランドルさんは、そう言って、船乗り場の通路に沿って何船も繋いである内の1船の縄を解き始めると、手は止めずに俺達に話しかける。


「お前達、今回は何目当てなんだ?」


「そうっすね〜…実はあんまり考えてなくて。とりあえず魔物の様子の確認と、資金集めついでに経験値稼ぎが出来たらいいなってくらいで…。」


「最近、どの魔物もデカくて獰猛だからお前達に限ってヘマするような事はそうそうないだろうけど、気をつけろよ。」


「…特にやべーのが、アララシード。アイツらもうかなり被害出してるからな。この前もここの子供が1口で殺られた。優秀で、恋人もいたってのに、親父庇ってあの世行きさ。」


そう言うと、縄が解けたらしく、船が緩やかに揺れ始めた。


「まぁ、元気にやってくれ。くれぐれも怪我なんてしねーよーにな。」


ランドルさんは、ニシシと笑う。


「「もちろん(だよ!)。」」


そう答えると、ランドルさんが大きな手で、俺とハルの背中をバシッと叩いた。

これは前回の旅の時もしてくれた、ランドルさんのおまじないだ。

ちょっと、いや、だいぶジンジン痛いが、なんだか照れ臭くって、元気が出る。

ハルもランドルさんに、痛いよ〜!なんて言いながらも嬉しそうだ。


木製の小綺麗な船に乗り込むと、オールを握る。

ハルと向かい合わせになり、目が合うと、俺に向かってハルが笑う。

見るからにワクワクしていて、最初の嫌がりようが嘘みたいだ。

今夜のおかずはおっさかな〜ピッチャピチャ〜♪と呑気に歌っている。

単純な奴だなぁ、と思いながらもなんだか微笑ましくなってきたと同時にまた虚しくなった。

…やめよう、今は魔物狩りに集中だ。


握ったオールを動かし、船を漕ぎ始める。

俺達の魔物狩りの始まりだ…!

待ってろ…今夜のおかず兼冒険費用…!

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