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ウェポンドール  作者: 狂った機械仕掛け
2/2

2話目  入学式

最近手がつかない・・・

 三日後、運命の日がやってきた。俺は合格を確認するために結と月姫とともに学園へ向かう。学園へはバスか電車が出ていて俺たちはバスで向かっている、最初は空いていたバスも次第に同い年くらいの人で満員になっていった。

 まあ当たり前か、前世だったら合否とかはネットで見れたけど、なぜか今世は現代日本といっても科学ではなく魔法が発達したせいか、いろいろと違いがあるからね。やっぱり便利さは大差ないけど、テレビとかネットがないのが問題だな。今更だけど・・


 しばらくバスの中で人に押しつぶされているのを我慢しているとやっと学園に到着し満員バスから解放された。少しあたりを見渡すと他のバスも同じような状態だったようで、人が大勢降りている。駅の方を見るとやはりこちらも大勢の人が来ている。

 こんな大勢の人が試験を受けたとしたら倍率ってどのくらいだったのだろうか。もしかしたら学生も混ざっているのかと思ったが、今の季節は春休みのはずだからやっぱり受験生しかいないのだろう。


「やっぱり人多いわね、あたりまえだけど」

「そりゃあ、ね」

「迷子にならないようにしないとね、燐君」

「え、ああ。そうだね」


迷子になりそうなのは月姫なんだけども。でも、まあ確かにこのままだと迷子以前に人ごみに押しつぶされそうだから怪我をしないように気をつけないと。それに両腕が結と月姫に締め付けられて感覚がなくなりかけているのは男として我慢すべきことなのだろうけど・・・まあ月姫はあるからまだいいとして、結は控えめだからやわらかさが足りない気がする。


「何か今変なこと考えなかった?」

「イヤ、ナンデモナイデス」


 結に睨まれながらもゆっくりと合格者の受験番号が張り出された掲示板の前に来ることができた。もちろん俺の番号は書かれていたし、すぐ近くに結と月姫の番号も書いてあるのを見つける。

 結と月姫も番号を見つけたらしく、月姫は俺の腕を掴んで上下にブンブン振っている。うれしいのはわかるけど15才だしもう少し落ち着いた行動をして欲しいと思ってしまうのは仕方ないだろう。


「おお!やったね燐君、私たち受かってるよ!」

「うん、わかったから落ち着いて」

「それでこの後は学園の中で入学届を出すのよね。行くわよ燐、月姫」



 学園の入口付近にいる人は少なかったので三人で人混みをかき分けることもなく建物内に入ることができる。中に入ると係りの人に入学する人はそれぞれ個別面談のようなものがあるということを説明され、係りの人に案内され小部屋に案内された。

 部屋の中に入ると机があり、向かい側に教師が座っている。なんか面談って感じだ目の前にはSクラスと書かれた魔法科の入学書、そして教師の手元近くに普通クラスと書かれた戦士科の入学書。


「それでどうだろうか、我々はぜひとも柊さんには魔法科でさらに高みへと」

「いえ、結構です。俺は戦士科希望なので」

「いや、だけどね」

「えっと、これを記入すればいいんですよね」


 無理やり戦士科の入学書を手元に引き寄せ、署名などの必要事項を書き込む。それにしてもこの人・・・もしかして魔法科の先生で戦士科の方といがみ合ってる人達の一人なのかな。まあ何を言われようとも関係ないけどね。


「あ、ああ。でも本当にいいのかね、戦士科なんかで。それこそ魔法科にくれば偉大な」

「ええ、戦士科じゃないと嫌ですね。俺は魔法よりもウェポンドールの方に興味がありますし、何より面白そうなので。では失礼します」

「あ、ああ・・・君の入学を楽しみにしているよ」


 俺はキッパリと戦士科に行くことを表明し小部屋を後にする。出るとき教師の人が何か言っていたような気がしたけど別にいいだろう。さてと、この後は結と月姫と合流して家に帰るだけか。

 学園の入口に戻るとすでに結と月姫が待っていた。


「やっと来たわね、燐。これで明後日から三人で魔法科Sクラスに」

「え?俺、戦士科だけど」

「「え?」」

「え?」


 何かおかしなことを言っただろうか。俺が首をかしげると結が怒ったように話を続ける。


「なんで魔法科じゃないのよ!私も月姫も魔法科のSクラスなのよ!」

「あ、そうなんだ。おめでとう」

「えっと、ありがとう」

「ありがと、ってそうじゃなくて。私がSクラスならあんたなんてなおさらそうだったでしょ!なのになんで戦士科に・・・・・ところで戦士科のクラスはどこよ、まさかSじゃないなんてことは」

「普通クラスだけど」

「あああっ!なんでっ、燐はいつもこうなのよっ!」


 感極まったのか俺の首を締め、揺さぶりながら叫んでくる。

 いやまあ、確かに俺の家である柊家は魔法界の名家ではあるけど、俺は俺だし・・・というよりもそろそろ限界になってきたし、周りの注目も集めてるから放してくれ。そう思い俺は結の腕をタップするが、一向に収まる気配はない。


「結ちゃん落ち着いて、それにそろそろやめないと燐君が」

「・・・そうね、このアホはいつものことだものね。はぁ・・・」

「けほっ、けほっ。あーあー。それじゃあ帰ろうか、寮暮らしになるからその準備もあるだろうし」

「どの口が言ってんのよ!」

「ちょっ、連続はキツイって!」

「ゆ、結ちゃん!」


 俺は結に再び首を絞められたが、今度はすぐに解放してもらえたので三人で無事に家に帰ることができた。帰り道首に跡がついてないか常に擦っていたからか、落ち着いた結が申し訳なさそうにチラチラと見てきたので気になってしかたがなかった。ちなみにいつもの結はあそこまではしてこないのに何で今日に限ってしてきたのだろうか・・・



 * * *



窓から差し込む朝日、外からは商人や冒険者たちの話声や馬の足音が聞こえる素晴らしい朝。

そう、今日は俺が通う第四国立学園の入学式だ。そしてウェポンドールがもらえる記念すべき日でもあるのだ!


 身支度を済ませ、先日届いた制服に身を包み姿見を見る。黒いストレートロングの髪に紅い目の俺の制服姿が映る。制服はブレザーだ、学ランとかもいいけど俺はブレザーの方が好きだからよかったと思う。そういえば結の制服のエンブレムが青色で俺のは赤色だな、確か魔法科は青色で戦士科は赤だったな。


 その後朝食をとり、昨日のうちに準備しておいた荷物を持ち外に出る。外では結と月姫、父さんと母さん、月姫の両親もいて見送りをしているようだった。寮暮らしになるとなかなか外に出ることもできなくなるしね。


結と月姫の制服姿はかわいいと思う、特に結が黒目黒髪ツインテールでさらにかわいさが増している気がする、ツンデレだし。月姫はブラウン系のゆるふわロングで綺麗で清楚な印象を受ける。


「あ、やっと出て来たわね燐。それでは行ってきます」

「行ってきます」

「行ってきまーす」


 両親たちに手を振り、俺と結、月姫と一緒に馬車に乗り、その後、学園行きのバスに乗り換え、学園へと向かう。


 ・・・窓の外を眺めていると、前世とは違う日本だと改めて思う。

特に街並みがファンタジーによくある景観となっているからだと思う。

この国は東西南北と中央の五つに大きく地域が分かれていて、中央には国王やその家族が住んでいる大きな城がありその近くに裁判所や警備局、行政局といった公的機関があり、他には競技場や有名店の本店などの建物がある。

東には第一国立学園があり、貴族や名家の住宅や貴族向けのお店が比較的多く立ち並ぶ、いわゆる貴族街。

西は第三学園と農地や食品系のお店が多く、南は第二学園と美術館やオペラハウスといった芸術系、北に第四学園や冒険者ギルド本部、鍛治や日用雑貨といった生産系が集まっている。

どの地域も、外側から中央側に行くにつれて、学園、農地や河川、職人街、住宅地やお店といった順になっている。ちなみに柊家は東区の南側の住宅街にあり、工房は北区の東側にある。


そして、どの学園も広大な敷地を有していて、その敷地内にはショッピングモールや鍛冶屋、博物館があったりと小さな街のようになっているから学園の外に出る必要がないよねってことで寮暮らしになるらしい。それに学園の外との関わりを減らすことで、優秀な人材の流出を防ぐ目的もあるらしい。

やっぱり前世の日本とは違うことを実感させられるな。まあ世界地図やら地形とかすら違うから当たり前か。


 そんなことを考えながら外を眺めるていると、次第にバスの中が学生で満員になっていく。

それからしばらくして、学園の入口にバスが停まり、乗っていた人が解放されるように一斉に降りだす。俺たちもその流れに沿ってバスを降りる。


「やっぱり人多かったわね。こんなにこむなら少し時間ずらせばよかったかしら」

「いやまあ、在校生は新学期だし。それに俺たちみたいな新入生と大きめの荷物もあるから自然と狭くなるのはしょうがないだろ」

「そうね。とりあえず行きましょうか燐、月姫」

「うん」

「とりあえず俺が持っている荷物少し持ってくれませんかね」


 そんな俺の声を無視しながら学園の門をくぐり敷地内に入っていく。中に入ると学園の教師や生徒会と書かれた腕章をした数人の生徒が声を上げて新入生に指示を出している。


「新入生はそれぞれの学科の寮に向かい、自分の部屋を確認してください。13時からは入学式の時間になりましたら寮内放送しますのでそれまでは自室で待機していてください。放送がかかりましたら指示にしたがってください」


 といったことを聞きながら分岐路まで三人で歩いていく。分岐路に来ると大きな案内板や矢印看板があった。学園の敷地を把握するために案内板を見て見ると、中央に学園の校舎があり、その近くに闘技場やスポーツ施設などがある。

 そして校舎を挟むように右に戦士科の寮、左に魔法科の寮がある。ショッピングモールなどがある学園内の街はここから校舎の奥側に広がっている、一応コンビニみたいなのは寮の近くとかにもあるみたいだ。後は自然公園のようになっていたりするぐらいだろうか。あ、夏限定でプールなんてものもあるのか。


「とりあえず結と月姫の荷物があるから魔法科の方まで送ってくよ」

「そうね、送ってもらおうかしら」

「え、でも燐君戦士科だから」

「そんなこと気にしないし、それでいじめとか受けたら返り討ちにするから問題ないよ」

「そ、それなら。お願いするね」

「じゃあ早く行きましょうか」

「そうだな」


 そんなわけで俺は二人を魔法科寮に送り、自分の部屋がある戦士科寮に向かう。去り際に魔法科の生徒たちが俺たち三人を見て何か話していたので、風魔法でこっそり聞いてみたけど特に気にすることはなかった。

内容は三人とも美少女だとか、誰が好みとかの話だったな。完全に俺は女子扱いですかい、まあ、15才になってもまだ声変わりとか髭とかないから、可愛い男の娘だと自分でも思うけどね。しかも黒髪ストレートロングで身長160㎝少し超えるくらいだし。

でも制服は下ズボンだし・・・そういえばこの学園の制服って女子でも希望者はズボンなんだっけ。・・・まあ、勘違いさせといていいか。てか俺が戦士科なのには気が付かなかったのだろうか。


 そんなことを思いながら俺は戦士科寮の前に張り出されている部屋割りの前に来ている。部屋割りは建物ごとの見取り図で受験番号と名前、所属クラスが書かれている。

俺は二号棟の三階の角部屋という良い場所。そしてルームメイトが一人いて、同じAクラスでアリス・フォレ・リヴィエールっていう名前らしい。名前からたぶん女の子だろうけど、男女で同じ部屋なのはいいのだろうか。俺は嬉しいけど。


「さてと、さっそく行きますか」


 俺は自分の部屋がある棟に行き、出入り口にある受付みたいなところから自分の部屋の鍵を受け取り、部屋に向かう。寮は五階建てのマンションみたいなつくりで一階は食堂と大浴場、管理人室があるらしい。

 部屋まで行くのに、この世界にはエレベーターみたいなのもないので普通に階段を上ることになった。俺は荷物が大きめのトランクケース一つとショルダーバッグ一つだけど、これでもう一つトランクがあったらつらかったな。まあ俺は風魔法っていう便利な魔法で補助しながら運んだからまだ楽な方だけど、魔法科の二人のことを思うと、部屋まで送った方がよかったかなと思う。



 部屋に入ると廊下があり、奥に扉が一枚、右側に一枚ある。右側の扉を開けると洗面所兼脱衣所で、トイレとお風呂に続く扉あった。


「寮で各部屋にお風呂付とか豪華だな。前世の寮だと一階にある大浴場ぐらいしかないと思うけど」


 奥の扉を開けると、広めの2LDKになっているらしくリビングの奥に扉が二つある。

リビングにはソファが2つと間にテーブル、テレビが一つ、あと壁に棚があり、デザインもシンプルなものだ。ダイニングキッチンの方には椅子が二つとテーブルが一つある。キッチンの方には冷蔵庫とオーブン、あと数枚の食器や調理器具がそろっている。完全に新生活のためのものが揃えられている感じだ。


 奥にある二部屋は個人部屋だろうから、このリビングは共同エリアってことだろう。たぶん個人部屋はどっちも同じだと思うから適当に右側の部屋を使わせてもらおう。

 自分の部屋となる部屋を開けると、中は窓がある右側の壁の方に机と椅子、その隣に本棚。机の上には学生証や学園のパンフとかが置いてある。反対側の壁にはクローゼットがあり、中にはハンガーが数本とタオル類が置かれていた。そしてその間にキングサイズのベッドが置かれている。なぜ?と一瞬思ったが、色々と人には言いにくいことのためとか考えてしまった・・・純粋な男子だからしょうがないよね?


「さてと、とりあえず荷物整理でもするかな」


 とりあえず制服の予備と運動着、あと私服、下着類はクローゼットに入れ、本は本棚へ。筆記用具とかはすでに別のバッグに入れてるから・・・うん、特に整理と言うほどでもないな。

 俺は机の上の学生証をポケットに入れた後、パンフなどを持ってリビングへ向かう。


「とりあえずお茶でも飲みながら読むとしますか」


 それから数十分かけてパンフを読み終わる。内容は普通の学園紹介とか施設の利用法とか基本的なことが書いてある。他のプリントは時間割や校舎の見取り図、そして、


「二週間後に合宿があるのか」


 場所はここから100kmほど先にある樹海か、一応弱い魔物がでるから訓練としても最適かな。俺的にはもう少し強くないと訓練にならないが。

 そんなことを考えているとドアがノックされ人が入ってくる。おそらくルームメイトだろう、・・・お茶でも淹れるか。

 俺がお茶を淹れていると、薄い金髪ミディアムの俺より少し背が低いくらいで大きなボストンバッグを持ち、登山用リュックを背負い腰に剣を差した美少年がリビングに入ってくる。・・・いや、イケメン美少女かな?下はズボンだけどなんとなく雰囲気が女の子っぽく感じるし。彼女は俺を見てホッと息をつくと話始めた。


「初めまして、ボクはアリス。アリス・フォレ・リヴィエールだよ。よろしくね」

「柊 燐だ。よろしくアリス」

「うん」


 俺はアリスが差し出した手を握り返し握手をする。うん、やっぱり女の子で間違いないな。声が女の子だもんな。そんなことを思っているとアリスが荷物を降ろしながら話始める。


「はぁ~でもよかった。ルームメイトが女の子で」

「ん?」

「何でも他の部屋だと男女の組み合わせがあったりするんだって。少ないらしいけどね」

「えっと、俺男なんだけど」

「え?いやいや燐みたいにかわいい子が男子なわけないじゃん。それに声だって高いし、髪きれいだし」

「お、おぅ、ありがとう?でも一人称俺なんだけども、それに制服男物だし」

「ボクだって一人称ボクだよ?それにボクもズボンだし」

「そうだね・・・」


 さて、どうやって男だと証明しようか・・・いっそのこと脱いでしまえば早いんだろうけど。てかブレザーのボタンが男女で左右別なのは気づいているのだろうか。まあ、あとでじっくりと説明すればいいか。


「あ、とりあえず荷物置いて来るね。えっと燐はどっちの部屋なの?」

「ん、えっと右側だな」

「じゃあボクは左の部屋だね」


 アリスは自室へと入っていった。あ、荷物運ぶとき手伝えばよかったかな。アリスが部屋に入ってから約五分後に入学式の指示の放送が入りアリスが部屋から出てくる。


「放送もかかったことだし、行こうか燐」

「あ、ああ」


 その後二人で会場に向かう。一応部屋の戸締りはしたから問題ないな。外にはたくさんの生徒が入学式の会場へと歩いている、辺りを見渡しながら歩いているとアリスが話しかけてくる。


「そういえば、柊って魔法使いの家系だよね。燐はなんで戦士科に来たの?」

「ん、えっと~」

「あ、もしかしてボクと同じで魔法使えないからとか?」

「いや、魔法は普通に使えるな。戦士科選んだのはウェポンドールが欲しかったからで」

「そっか・・・」


 アリスは俺の返事を聞いて頬をかきながら目を逸らした。もしかしてアリスは魔法が使えないのだろうか?


「アリスは魔法使えないのか?」

「えっとね、まったく使えないわけじゃないけど・・・ボクは魔力操作が苦手で無属性の魔法でも他の人よりもたくさんの魔力と時間が必要なんだ。それに詠唱も苦手で、だからボクは魔導具で代用したりしてるよ」

「ふむ・・・」


 魔導具か、確かに魔法が使えない人でも魔力は持っているから便利ではあるけど基本消耗品だから自分で使えた方がいいのだが。


 とりあえず俺は相手の魔力などを調べる魔法を使いアリスを見る。調べた結果だと魔力量は同年代の1.5倍ほどで属性は風、そしてエルフの魔力の特徴である自然への親和性が高いことがわかったことからアリスはエルフなのだろう。エルフのイメージである耳は尖ってないけど。

 体を流れる魔力の乱れている部分や不審な点は見つからない、強いて言えば人より流れる道筋、魔力回路が細かったり短かったりするぐらいだけど、これは個人差あるからな。だとすると魔力操作が苦手なのはイメージ、つまり意識の問題だろうか。まあ、詠唱に関しては暗記しかないな。


「なあ、アリスは魔法を使うときってどんな感じに使うんだ?」

「う~ん、なんかバーとかブワァーって感じ?」

「えっと・・・つまり大雑把に魔力を出してるだけか」

「大雑把かなぁ・・・」

「十分大雑把だね。それだと魔力が魔法になる前にただ霧散する気がするな、もしかして魔導具の起動も時間がかかっているんじゃないのか?」

「う、うん。でもボクは魔力をたくさん出さないと魔法も魔導具も使えないし」

「とりあえずもう少し抑えるようにしたらいいと思うよ」

「うん、そうするよ」


 そんな会話をしていると入学式の会場である大ホールに着き、三つある出入り口のうち中央の出入り口から中に入る。ホールの中はどっかの劇場のように大きなステージがあり、客席が三階まで並んでいる。一階はステージと中央出入り口からステージ前まで伸びる広い通路があり、中央の通路を線引きに左が魔法科、右が戦士科と言った感じに分かれている。俺たち新入生は一階のステージのすぐ前に座らされるらしい。並び順はステージに近い方からSABCDEの順なので俺たちはほぼステージの前に来る。

 次第に会場内がざわつき始めたころステージの脇にマイクと同じような拡声器の魔導具を持ったスーツ姿の男性が上がり話始める。


「えー、これより第四国立学園第65期入学式を始めたいと思います。まずは~」


 そんな風に司会の男性によってごく普通な入学式が進められていく。


「次に魔法科長、戦士科長からの式辞です。マクスウェル先生、マクレーン先生お願いします」


 ここで少し学園について話すと、この第四学園だけなぜか学校長がいない代わりにそれぞれの科ごとに長がいるような感じになっている。イメージはそれぞれの科に校長がいる感じだな。

 でその校長役の先生が互いにステージの両サイドから睨み合いながら登壇した。戦士科側から上がったのは赤いマントをつけ、赤を基調とした金属製の騎士風の鎧を着た40代ぐらいで若い印象を受ける雰囲気の男性だ。腰には大き目の剣を帯剣している。

 反対に魔法科側は青色の布地に金の刺繍が施してある魔法使いのローブを着ていて、少し長めの金髪の耳がとがっているエルフの男性だ。手に木製で杖の先に紅い大きな魔石が付いた如何にも魔法使いって感じのする杖を持っている。

 それぞれがステージ上で少しにらんだあと、こちらを向き大声で話し始めた。


「私が魔法科長ジェームズ・マクレーンです!魔法科に入る新入生のみなさんを心から歓迎します」

「俺が戦士科長ローウェン・マクスウェルだ!戦士科の新入生の諸君、心から歓迎しよう」


 同時に自己紹介をしたあと、そのまま互いの声をかき消しあうように話し続け終わるころには互いに罵り合うだけになっていたので司会の先生によって強制終了させられていた。・・・この学校で魔法科と戦士科の仲が悪い原因ってあの二人が大半なんじゃないだろうか。

 そういえばマクレーン先生が魔法科に俺と同じ七つの属性を使える子が入ったとか言ってたな。美少女だったらぜひとも俺のハーレムに・・・

 そんなことを考えていると司会の先生が式を進行し始める。


「えー、マクスウェル先生、マクレーン先生ありがとうございました。次に生徒会長からの挨拶です。魔法科六年、Sクラス柊 陸斗君、お願いします」


 生徒会は魔法科と戦士科合同なのかな?てか陸斗兄さんが生徒会長なのか。


「ねえ燐、もしかして生徒会長って燐のお兄さんなの?」

「うん、まあ、みたいだね」


 とまあアリスが小さな声で聞いてきたので答えていると、陸斗兄さんは登壇して話を始める。もちろん拡声器の魔導具を使って。まあさっきの先生二人以外はみんな使っているのだけど。


「新入生のみなさん初めまして。生徒会長の柊 陸斗です。新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます」


 陸斗兄さんはそんな風によくある挨拶から始め、ごく普通の話をして生徒会長の話を終える。やっぱり学科長の二人がおかしかっただけか。


「ありがとうございました。それでは最後に新入生宣誓。代表の戦士科Sクラス、レオン・グランハルト君お願いします」


レオンと呼ばれた青年は俺の丁度斜め向かいに座っていたらしくステージへ上がって行った。見た目は金髪ツンツンヘアーで身長180cmぐらいで体格がよく、制服の上からでも筋肉があるのがわかる男子だ。登壇してこちらを向いて見えた顔はキレ目でまさしく戦士って感じのイメージがする。というよりも同じ15才に見えないな。


「春の温かさの訪れとともに、私たち320名は第四国立学園の一年生として入学式を迎えることが~」


 そんなごく普通の挨拶だった。まあどこもそんなもんだよね、前世もそんな感じだったし。というようなことを思いながら少しあくびをする。ふとレオンの方を見るとなぜかこちらをにらんでいた。少しあくびをしたことが気に障ったのだろうか。周りに俺以外にも眠そうにしているのはいるのだけども。

 それから少しした後に新入生代表の挨拶が終わり、司会が進行を始める。


「ありがとうございました。えー、以上を持ちまして第四国立学園第65期入学式を閉会いたします。新入生はこの後は各クラスに戻り、担任の指示に従ってください」


 司会の人がそう言い、その場を後にすると生徒もちらほらと立ち始め、大ホールから出て行く人が増え始める。


「燐、ボクたちも行こうか」

「うん、行こうか」


 そう言い、俺とアリスも生徒の波に乗り、大ホールから出てAクラスの教室に向かう。

いいところで切れなかったから少し長めになっちゃった。終わりは無理やり中断した感じが・・・

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