ようこそ、GRIMOIRE ONLINEの世界へ
βテスト参加のメールを受信してから数日後。
下調べは最早完璧と言っていいだろう。
あれからさらに公式ページを熟読し、現時点で判明しているスキルや取得条件を把握し、そこからまだ条件を公開されていないスキルのいくつかは取得条件を予測出来た。
追加の公開情報も随時確認し、死角はない。
魔法もしっかり調べた。
このゲームでは魔法は基礎スキルのみを取得し、魔法は魔導書を使用することで追加できるようだ。
例えば、炎の魔法なら魔法の適性をスキルで入手した後、基礎的な魔法の魔導書を手に入れて覚える。
熟練度を育ててないと新しい魔導書を手に入れた時に熟練度不足で覚えられないらしい。
ここでも本が出てくる。
尚、プレイヤーの使用出来るシステムのインターフェースも本らしい。
スクリーンショットで新たに公開された情報で知ったけど、プレイヤーは最初の街にある図書館に配属された新入りの司書という扱いになるようだ。
司書は本を集めて図書館に納めるのが主な仕事で、生産職は後方支援のような扱いになる。
新入りから司書としての仕事を熟して司書ランクを上げていけばギルドの様なグループを作ることが出来る。
ピロリン、と端末から着信音が鳴る。
確認するとアキラからで、ログイン後の動きを確認したいようだ。
『まだ何も決めてないけど、最初のうちは単独で動くよ。』
返信を送り時間を確認する。
午前11時57分。あと3分でグリモアにアクセス出来る。
ダウンロードは既に済ませているのでアクセスすればすぐにゲームにログイン出来るように準備は万全だ。
3分間が長く感じた。
新しい世界に心躍る。
ピピッとアラーム音が鳴り12時を告げる。
「LinkOn」
音声認識でヘッドギアに指示を出すと目の前が真っ暗になり、慣れ親しんだ浮遊感の後、真っ白な床と壁一面本がぎっしり詰まった本棚が並べられた通路が視界に広がる。
少し離れた所に人影が見え、そちらに注視すると
「GRIMOIRE ONLINEの世界へようこそ!
私は貴女のナビゲーターを務めさせていただくヴィルヘルムと申します。」
金髪碧眼の青年が恭しく頭を垂れる。
服装は所謂執事が身に着ける様な燕尾服で、小柄な優希と比べるとかなり長身だ。
「では、アバター作成までサポートさせて頂きますのでこちらへどうぞ。」
と通路の奥を示す。
促されるまま歩き始めると壁の本棚から一冊の本が浮かんで手元まで近付いてきた。
「そちらが貴女のインターフェースを担当する本になります。
歩きながらとなりますがアバター作成とシステムについて簡単にご案内致します。」
ヴィルヘルムの声に頷くと満足そうに目を細める。
「まずは本を開いてください。
オープン、と声に出して頂ければ自動で開きます。
また、手に持たなくても問題はありません。」
彼の言う通り、本は手に持っていないのに追従している。
「オープン」
指示に従い本を開くとキャラクターネームの入力を促すシステムメッセージが表示された。
「まずは貴女がこの世界で名乗る名前を教えて下さい。
重複可能ですのでお好きな名前をどうぞ。」
「ユウキ」
と入力すると、
「本名と重複しますがよろしいですか?」
・はい
・いいえ←
選択肢が出てきたので迷わず「はい」を選択。
「ではユウキ様、こちらの椅子へお座り下さい。」
いつの間にか本棚に囲まれた一室へたどり着いていたようで、真ん中に鎮座する椅子へ案内された。
「これからアバターの作成を行って頂きます。
まず、性別ですが変更出来ません。
次に、体格についても±10cmの範囲を超える変更出来ません。
顔付きについてはある程度自由に変更可能です。
現実世界での特定を避けるため、髪型等もある程度変更されることをお勧めします。」
ヴィルヘルムが案内を終えると開いていた本に変更可能な項目が表示されている。
身長はそのままでいいかな。
髪型は現実ではストレートのロングだけど、たまには違う髪型にしてみたいのでショートボブに変更。
髪の色は明るめの栗色、目も合わせた。
確認のコマンドを選択すると目の前に大きな姿見が出てきたので立ち上がって確認する。
そこには平均より少し…いや、かなり小柄な自分の姿が映し出されていた。
「確認後よろしければ次のステップへ進みます。」
「はい、お願いします。」
「では、初期スキルのセットを選択して下さい。
こちらは基礎スキルになりますが、レベルを上げて派生させて行くことでお好みのキャラクターへと育成が可能となっております。」
選択肢は
・戦士タイプ
・魔法使いタイプ
・生産タイプ
の三種類だ。
戦士系は武器の扱いや物理攻撃系。
魔法使いタイプは魔導書の心得と属性魔法の基礎スキル。
生産タイプは採取と生産の基礎スキル。
少し迷ったものの、戦士タイプを選択した。
「では、最後に初期装備を選択して下さい。」
初期装備は武器が
片手武器・両手武器・弓矢、ナックルの四種別。
防具が
布服、革鎧、軽鎧、重鎧の四種別
私はその中からナックルと布服を選択した。
「以上でアバター作成を終了します。
何か質問などはありますか?」
「いえ、こちらで伺える内容については公式ページで凡そ把握していますので。」
「左様ですか。ではGRIMOIRE ONLINEの世界をお楽しみください。」
ヴィルヘルムの言葉に呼応するように本棚に収まっていた本が空中で渦を巻くように飛び回り視界を埋めていく。
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