最終話
やわらかな日差しが部屋の中に差し込む。
春らしい陽気に包まれて、りりは目を覚ました。
どうやら泣き疲れてそのまま眠ってしまったらしい。
自分の上に乗っている重しを自分ごと揺すぶる。
「おーきーてーくださーい。」
ぐらぐら、ぐらぐら。
「おーきーてー。」
ぐらぐら、ぐらぐら。
「むー。あ、りりちゃんおはよー。」
ふぁぁ、と大きな欠伸が上から聞こえる。
「おはよう、じゃありませんよ。はやく降りてください。」
「はーい。」
しぶしぶおりるみゆさん。そして私の前に座る。目はほんのり赤い。
…きっと、私の目も同じだろうけど。
「りりちゃん。」
「なんでしょう。」
「その敬語をやめていただきたい。」
「へ?」
裏返った声が出る。
またやぶからぼうな。
みゆさんは少し顔を赤らめる。
「だって、その…昨日お互いの気持ち言ったんだから、それは、ね?より親密な関係になったってことで…。」
「つまり、もう恋人どうしだから敬語はよそよそしいと?」
「おうふ…。ばっさりだね。」
「そういうことですよね?」
「う、うん。」
こくこくと頷く。
「んー、もうこれに慣れちゃったんですよね。」
「そんなぁ…。」
「まあ、善処はするよ、みゆ。」
「ふぇっ!?」
私がそういうと、部屋の温度が急上昇した。
正確に言うと、二人の周りだけ、だけども。
「やっぱ恥ずかしいですね、これ…。もうちょっとあとになってからにします。」
「う、うん!そうしよう!」
顔が熱い。
せっかく両思いになれたというのに、親密になるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
でもまあ、これから歩み寄っていけばいいよね!
みゆはそう思って、目の前の恋人に笑いかける。
照れくさそうに笑う二人の間に、爽やかな風が吹き込んだ。