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先輩との出会い


ぴーんぽーん。


家のチャイムが鳴る。


夜の11時ということもあり、おやすみスタイルを決めこんでいた私には出るのも億劫だったが、荷物だったらでないわけにもいかない。

ワンルームだから、玄関まではすぐそこだ。

仕方なく、玄関に向かう。


「はーい、なんでしょう…」


「やあやありりちゃん!ちょっとこの先輩を一晩泊めてはくれんかね?」


「…は?」


そこには高校時代の先輩が立っていた。








「…で。」


私はとりあえずリビングのテーブルにオレンジジュースを置いた。


「こんな夜中に何の用ですか。みゆ先輩」


先輩は恥ずかしそうに頭をかく。


「いやー、早い話が家を追い出されましてな」


「なぜです?」


「ほら、うちって貧乏じゃん?」


オレンジジュースをすすりながら先輩は話す。


「そうだったんですか。」


「そうなんですよっ。それでね、お前ももう22だから一人でやれるよな?って言われて放り出されてしまったんだぁー。」


「そうですか。」


「それでさー。突然で悪いんだけどっ。今晩泊めてくれない?」


なぜ私なのだ。


「他の先輩の友人ぼ家に行けばいいじゃないですか。わざわざ私の家に来なくても。」


「そんなこと言わないでよー!

友達はみんな大学進学で県外だし、うちのクラスで進学しなかったの私だけだから周りにりりちゃん以外頼れる人いないんだよー!」


「うちワンルームですけど。」


「雨がしのげれば文句は言わん!」


「今降ってませんけど。」


「えー… あー…。」


「うちじゃなくてもいいですね?」


「えっと…その…。」


「ならホテルにでも行ってください。」


「えー…そんなあ…」


まんまるでうるうるした瞳がこちらに訴えかけてくる。


先輩は身長165cmの私よりも10cmほど低い。当然座高も私より低い。

よって、こちらには先輩が上目遣いをしているようにしか見えない。


私は先輩に見つめられながらしばらく考えたあと、大きくため息をついた。


「…わかりました。ただし、一晩だけですよ?」


「ほんと!?やったー!ありがと!」


どのみち断りきれるわけがないんだから先にOKしてしまえば良いか。


嬉しさでぴょんぴょん跳ねる先輩を見ながらそう思った。


どうせ一晩だけなんだし、大丈夫か。





「そんなこともあったねぇー。」


「いやみゆさん、もう3年経ってるんですけど。一晩だけって言ったじゃないですか。」


あの日と同じテーブルで、お茶をすすりながらくつろいでいるみゆさんにすかさずツッコミをいれる。


「だーってぇー。次の日になっても出てけって言わなかったじゃん。」


「先輩に直接言えるわけないじゃないですか…。」


そう、今さら出て行けだなんて言えない。


ましてや、



この3年でみゆさんのことを好きになってしまった、だなんて。



出て行って欲しくない。なんて。



そんなこと、口が裂けても言えるわけがないのだ。



「りーりちゃんっ。難しい顔になってるよー?」


「そうですか?」


まずい、顔に出てしまっただろうか。


内心焦りながらも平静を装って答える。


「うん。眉間にこーんなしわがよってたよ?」


ものまねをしているつもりだろうか、顔をくしゃくしゃにして一生懸命あーだこーだと説明している。


「ふふっ」


それが可愛くて、思わず笑ってしまった。


「あー!一生懸命やってるのに、笑ったなぁー!?」


ムキになってさらになんやかんやと文句を言ってくるみゆさんをかるーく受け流す。


これが、私たち二人のいつも通りだ。





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