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華の人形 ー緑の国 外伝ー  作者: watausagi
序章 桜・メリーゴールド
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貴女が僕のマスターです

◇◇◇◇◇


 桜の花言葉は 「優れた美人」「純潔」「精神美」「淡泊」


  ーー降り注ぐ桜の花びらをバックに、貴方は1人の少女と出会った。



◇◇◇◇◇


 初めて意思を持ったのはいつだったか? 僕がそういうことを考え出すと、最終的に最初から意思はあったんだという結論に至る。ただ、自覚していなかっただけで。



 ところでここで、唐突に宣言しよう。僕は、人形である。心がないとかそういう話ではない。実はあの人の操り人形とかでもない。



 正真正銘の人形なのだ。あのクリクリとした目を持ち、カクカクとした動きを見せる人形なのだ。

 


ーー初めて自分が人形だと自覚した時は、別段驚きもしなかった。先ほど言った通り、生まれた時から、生み出された時から、僕は人形である事を無意識のうちに受け入れていたのだから。おかしな話、知らぬ間に4年と2の月の日を跨いで、僕は人形に馴染んでいたのだ。


 もう分かっているとは思うけれど、僕には前世がある。そんな気がする。多分、死んだんだろう。死因もろくに思い出せない過去に興味はない。


 だから僕が興味を示すのは、今のマスター。僕を作り上げた、齢十四の人形師である。因みに、女の子である。詳細、美少女である。


『おはよう、スマイル』


 彼女からの第一声は、挨拶と、そして僕の名前だった。


『んん。違うね。もう少しこう……そうだ。私の名前と合わせて、(さくら)スマイル。貴方の名前は、桜スマイルよ』


 ピンクピンクしい笑みだ。と、もちろんあの時の僕は思わなかったけれど。煤汚れた金髪と、オイルまみれの服の彼女を、とても美しいと感じていたのは。きっと、あの日からに違いない。2日も徹夜していたらしくて、その顔にはクマがあったが。


 僕は、マスターの10歳の誕生日プレゼントにとマスター自身に作られた。

 自分で自分の誕生日プレゼントを? と思うかもしれない。しかし仕方がないのだ。何故なら僕は、未だにマスターの父と母を見かけたことがない。多分きっと……



 おっと、僕はセンチメンタルな気分に浸るつもりはない。明るい話をしよう。


 自慢だが、マスターの1番のお気に入りはこの僕だ。うむ。許せ他の人形達よ。僕がマスターにいつも抱きしめられて寝ているからといって、出せない涙を必死に流そうとしても無駄である。もっと自分磨きに時間をかけなければ。

 僕だって今日からは努力をするんだ。きちんと自分が自分である事を意識した今日から、頑張ることに決めたのだ。



そうだね……



 当面の目標は、マスターと一緒にお風呂へ入られるようになる事。それしかないだろう。

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