転居
ウィルと遊んだ日から早一ヶ月が立った。
あれから一度も会いに行ってないが、今日突然母さんに大荷物を持たされた。
「……母さん、いつも唐突なんだが少しは説明してくれない?
なぜ僕だけこんな大荷物になってるの?」
「あら?話してなかったかしら。
貴方は明日からフェアフュールング家でお世話になるのよ。」
僕の空耳だと信じたいのだが。
取り敢えず現実として受け止めるから一言言わせてくれ。
どうしてこうなった。
母曰く僕を学校に通わせたいんだが。とフェアフュールング当主に相談したところ、
「ああ、それならフェアフュールングの家に養子として引き取って入学させればいい。」
と軽いのりで話が進んでいったらしい。
僕の周りの大人はろくな人がいなさそうだ。
と言うわけで山の麓まで重たい荷物を運んできたわけだが遅い。
フェアフュールング当主が迎えに来ると聞いていたんだが…………
しばらく待っていると、豪華な馬車がこちらに向かってきた。
中からフェアフュールング当主とウィルが出てきた。
「セラス!」
「ウィル!久しぶりだね!」
つい嬉しくてウィルの手をとり、指を指の間に入れてギュッと握りしめた。
「セ、セセセセラス?!」
「?どうしたのウィル。顔が真っ赤じゃないか。
風邪でもひいているの?」
ウィルが突然耳まで真っ赤になった。
何かあったのだろうか?もしかして僕が何か気にさわることでもしたのだろうか?
一人で焦っているとフェアフュールング当主が吹き出した。
「ブハッ……いや、失礼……くくっ……そ、そろそろ行こうか……ふふっ……」
この親子に何があったんだ。
二人揃って様子が変なんだが……
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馬車に乗り込んでからも二人は少し落ち着かなく、当主はウィルを見るたび吹き出すし、ウィルは僕を見るたび顔を赤くしていた。
取り敢えず落ち着くのを待つことにして約10分後。
ようやく落ち着いたらしい。
当主が話始めた。
「取り乱してしまってすまなかったね。
さて、取り敢えず君の名前なんだが……セラスだったかな?」
「ええ、まあ。正式にはセラススですが。」
「……ふむ。わかった。では君をセラスス・フェアフュールングとして学園に申請するよ。」
「お手数お掛けします。」
「なんの。フックの頼みだしね。」
「此れからは兄妹としてよろしくな!」
「何をいってる。僕の方が上に決まってるだろう。」
これだけは譲りたくないな。
「俺だろ。」
「僕だ。」
「俺」
「僕」
このあと暫くの間同じように言い争っていた。
終了の合図はフェアフュールング当主の言葉だった。
「そろそろ終わりにしなさい。もうすぐつくよ。」
僕らは顔を合わせて、同時に同じ言葉を発した。
「続きはまたあとで。」
取り敢えずウィルとは仲良くやれるだろう。
姉の座は渡さないがな。