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お出かけ

 今日はあと数日で冬が終わりそうな陽気で、ついウトウトしてしまう。

巣の前で日向ぼっこをしていると母さんが巣から出てきて、


「町まで買い物にいってきてくれるかしら。」


 と有無を言わぬ笑顔で言ってきた。

拒否権とかは無いんですね、わかります。


 最近完璧にできるようになった変化の術で人族に化ける。

この時の容姿は金髪(毛先のみ茶色)に赤と金のオッドアイ。

このオッドアイは生まれつきで、狐の時も赤と金だ。

 確かに他の人より変わった容姿だと自覚はしているが結構気に入ってる。

何故なら母さんの瞳の色は赤、父さんの瞳の色が金色がだからだ。

毛先が茶色なのは諸事情だ。察してくれると嬉しいかな。


 母さんに買ってくるものを教えてもらい、町までの道のりをのんびりと歩いた。


 リンゴくらい自分で買いにいってほしい。


***********************


 町は相変わらず賑わっていた。

ここはこの世界でも五本指に入るくらい大きな町で、色々な種族が住んでいる。

 僕らはこの町から少し離れた山にある大きな木の虚に住んでいるため、町の明かりがよく見える。

毎日お祭りみたいに明るくて楽しそうだったな。


 さて、早くリンゴを買って帰ろう。

なんか結構じろじろ見られてるし。居心地が悪いなぁ。


「お嬢さん、可愛いね。お使い?」


 突然怪しさ全開のお兄さんが話しかけてきたが僕は気づかなかったかのようにスルーした。

変態に近づくことはダメ、ゼッタイ。


「ねぇ、ちょっと。聞いてる?……………チッ」


 舌打ちのあとに、嫌な予感がしたので逃げようとしたが間に合わず口を塞がれ、意識を失ったところを路地裏に引きずり込まれた。




━━その様子をある少年が見ていた。


 そして少年は慌てて自分の父のもとへ走っていき、少年が見たままの景色を話した。


「お父様!お父様!」


「ウィル?どうしたんだそんな血相を変えて。」


 少年の名はウィルド・フェアフュールング

この町の領主の息子である。


「女の子が、僕と同い年くらいの子が最近裏で奴隷を売ってる商人って疑われてる人に誘拐されてっちゃった!

 凄く綺麗な子!金髪で、毛先が茶色で、右目が赤、左目が金色の子!

 助けてあげて!」


 普通の誘拐なら警護班に連絡すればいいのだが、この町で奴隷を売ってると疑われてる商人が絡んでいるのなら話は別だし、何より大事な息子からの願い事だった。

ウィルドの父、イシュカ・フェアフュールングは直ぐに奴隷市の開催場所と言われている場所に急いだ。


***********************


 ここ、どこだろう………

 僕は今目隠しをされて手足を縛られている。

先程目を覚ましたとき、怪しげなお兄さんに変な香水を嗅がされ、頭がぼんやりするし耳と尻尾が出てしまった。

 お陰で周りからは珍しげに見られている。

 母さんのもとに帰りたい…………

寂しさを紛らわすために目をギュッと瞑った。


━━━暫くして、横たわっていた地面が動いてることに気がついた。

 もしかして何か荷台の上にでも乗っていたのだろうか?

声を出そうにも出せない……


『さあ!お次は今回の目玉商品!

 なんとなんと!あの妖狐族の子供だよー!

 容姿端麗の美少女!さあ値段は100万からだ!』


 突然近くから聞こえてきたあの怪しげなお兄さんの声が聞こえてきたあと、人間の叫び声が聞こえてきた。

 今の話から察するに此処は奴隷市なのだろう。

そりゃ目玉商品にもなるよなぁ。妖狐族だもん。

 このまま売られて一生コキ使われるんだろうか?

それとも性奴隷にでもなるのだろうか。

 そうなった瞬間に舌咬み千切って自殺するけど。


 150万、200万、210万………………どんどん値段が上がっていく。

僕なんかにそんな価値があるとは思えないけど。


 そしてついに、


「300万!」


「でました!300万!それ以上はいませんか?……いないようですね~。」


 決まったようだ。僕は腹をくくって舌を咬み千切ろうとした。



━━そのときだった。


「それでは───「350万。その子を買おう。」えっ?!」


 若い男らしき声が聞こえ、怪しげなお兄さんは狼狽えはじめた。

 誰だろう……まあ誰でもいいや。さっさと死んでしまおう。


「俺の納めている領内で奴隷市なんてものを開いていいという条例は出した覚えがないぞ。

 さっさと他の奴隷として売り出そうとしている人たちを解放しろ。

 お前の顔は覚えた。解放しないというならば人相書きを領内全土に張り付けるぞ。」


「ち、畜生!いいさ!こんな町出てってやるよ!」


「……………逃げたか。

 まあ解放したところで人相書きを張るのはやめないがな。」


 この人、会話の流れ的にこの町の領主様?

なんでこんなところに………


「大丈夫かい?今目隠しをとるから。」


 抱き上げられ、寝そべった体制から座った体制へと変えられて、優しい手つきで目隠しをとられた。

 光が入ると眩しくて暫くは目を瞑っていたが、慣れるとそっと瞼を持ち上げて目の前の領主様であろう人物に目を向けた。


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