ファースト
目が覚めると何故か中庭のベンチの上で仰向けの状態で寝ていた。
あれ、僕はなんでこんなところで寝てるんだろうか?
首をかしげていると背後から人が来る気配がして振り向くとウィルが駆け寄ってきていた。
「セラス!此処にいたのか?!」
「ウィル……何をそんなに慌ててるんだ?」
ウィルは僕の肩を掴むと、怪我はないかとか何かされたかとか訳のわからないことを聞いてきた。
「ウィル、君は本当に何をいってるんだ。
怪我?ただ僕は本を読みにいってくると言っただけじゃないか。
まあ何故かこんなところで寝てしまっていたんだけどね……」
「ま、まさか覚えてないのか?
親衛隊隊長のラジアータ・クロスにあったことも?」
リコリス・ラジアータ・クロスさんに?
………………………………そういえばあったような……そこで何かを話したんだよね?
何を話たんだっけか…………
「………リコリス・ラジアータ・クロスさんにはあった記憶がある。
でも、何を話したのかは記憶にないんだ……」
「記憶操作か?そんな魔法を使えるとしたら魔族位だし……
くそ、やっぱり一人にさせるんじゃなかった。」
嗚呼、でも懐かしい夢を見た気がする。
前世の頃の、桜子の頃の記憶。
仍にぃと彩月にぃは元気かな?
ご飯とか、どうしてるんだろ。二人とも家事は壊滅的だもんなぁ。
家政婦さんとか雇ってたらいいんだけど……
「セラス?どうかしたのか?ボンヤリしてた。」
「……ん?嗚呼、気にしないで。懐かしい夢を見たなと思っていただけさ。」
「それは、お前の幼少期の話か?」
「ああ、そうだな。兄さん、母さん、父さんと過ごす時間は本当に楽しかった。
勿論、今も楽しいぞ?ウイルがいるしな。」
初めの方は拗ねたようだったけど最後の言葉で花が咲いたように笑顔になった。
悩殺スマイルだな。他の女子なら一瞬でやられるな。
「さあ、教室に戻ろう?もう授業が始まっている。」
「なに?それは大変だ。急ごう、ウィル!」
僕はウィルの手を引いて教室に戻った。
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帰り際、顔に覚えのない先輩に声をかけられた。
「セラスス!」
「えっ?!あの、先輩は?」
「ん?ああ、もしかして要らないことも消しちゃったか?
ちょっとじっとしててね?」
黒に近い赤色の瞳と目が合い、何だか動こうにも動けなくてじっとしていると、先輩の人差し指が僕の額に触れたと同時に何かが流れ込んできた。
──────あ、思い出した。
「アレクセイ・ファルシュリーベ……先輩」
「先輩つけ忘れてたよな、今。」
「気のせいですよ先輩。」
棒読みになったのも気のせい。
「セラス、まだこんなところに……っと、誰だ?そいつ。」
そういえばウィルは先生に呼ばれていて、先に馬車にいくよう言われて歩いていたところを先輩に呼ばれたんだっけか。
「中庭で偶然あって話した先輩でアレクセイ・ファ「アレクセイ・サンドラだ。よろしく。」遮らないでほしかったです。」
そう言えば名字を隠してたな。忘れてたよ。
「……セラスの``兄´´のウィルド・フェアフュールングです。
うちの``妹´´がお世話になりました。」
何故兄と妹をそんなに主調して言うんだ?
「そう。俺も``仲の良い´´先輩後輩関係を築きくつもりだから。
君、見る限り義兄だよね?``君より仲良く´´なる自信あるから。」
先輩も何を張り合ってるんだ。
「は?先輩なんかが入る隙間1ミクロンもありませんよ。」
「はっ!こじ開けてやるよ。」
………帰りたい。
「セラス!帰ろう!」
やっと帰れる?と思い、少し機嫌の悪いウィルを追うように足を進めると先輩に呼び止められた。
「あ、待ってセラ!」
思わずなれない呼び掛けに勢いよく振り替えると、頬にデジャヴュの感触がした。
もしかして、もしかしなくても僕はまた頬にキスされたんだろうか………
しかもアレクセイ・ファルシュリーベ先輩はインキュバスだ。色気が半端じゃない。
思わず力が抜けへたりこんでしまった。
そんな僕を先輩はしてやったり顔で僕の頭を撫でて機嫌良さそうに去っていった。
「ちっ!セラス、こっいむいて?」
「ふぇぇ?」
もう恥ずかしいのなんのって……と考えながらウィルの方向を向くと唇に先程と似たような感触が……
お 前 も か !
「んっ………ぷぁっ………な、ななななな!何で君まで!」
「苛ついたから!そんだけ!ほら、帰るぞ。」
何だかこうもあっさりファーストキスが奪われると思ってなくて、僕は暫くの間放心状態で気がついた頃には屋敷で私服(と言う名のドレス)に着替え終わって課題を終わらせたあとだった。
僕すげぇ。
なんであの状態で課題全問正解してるんだろ……