第九話 修行の後半は
本日に二度目の更新です。といっても一度目は深夜でしたけど。感想くれた方、ありがとうございました。近いうちに修正を入れようと思います。
「この半年間の修行で貴方は精霊を許容出来る体になったわ。ちょっと魔力量が大きくなり過ぎてるような感じだけど、まあ良いわ。多いに越したことは無いのだし」
「自分ではちょっと分からないな。消費量は多くなった気がするけど結局、修行の最後には気絶してたからなぁ」
アリシアは魔力量が多くなったと言うけど正直な話、全然自覚が無く俺としては「一回に出せる量は多くなったけど最大値はあまり増えて無いんじゃ無いか」と思っていた。
「私もそう思ってたわ。あまり午後の修行は見てあげられなかったけど、気絶する度にリリーに運んでもらっていたし。」
「きゅい!」
おお、ありがとうリリー。口に加えて運ぶ物だから服はヨレヨレになるし、涎でべっとべとになるけど。
着ていたジャージはすぐダメになったし後の服はアリシアに用意してもらっていた。
この家の周辺には店などが無いらしくアリシアは転移魔法で遠くの街まで出かけては食材や服など買って来ているそうだ。
俺も行きたいと言ったのだがアリシアの使う転移魔法は自分しか出来ないらしく街へ行くには自分で行くしかないそうだ。アリシアにはまだ早いと言われた。
「それはともかく魔法の次の段階ね。最初に見せた水出す魔法のやり方は覚えてるかしら?」
半年も前なので何を言っていたかは覚えていない。確か詠唱していたっけ?
当然、毎日の生活の中で魔法を使う場面を何度か見ているが、それには詠唱が無く、指先一つで使っているので正直よく分からなかった。
「言葉を覚えている必要は無いわ。あれは一般的な呪文で、無くてもイメージさえ出来ていれば発動するから」
アリシアはそう言うが実際にはそんな事がなく、指先からマッチ程度の火を出すにも詠唱が必要なのは世界の常識であった。もしここに他の魔法使いがいたのなら驚愕していたかもしれない。
意外と世間の常識に疎く自分がどれだけ桁外れなのか理解していないアリシアなのであったが、ここには俺と竜しかいないので俺は「ふ〜ん。そうなのか」ぐらいにしか思っていなかった。
「やり方としては簡単よ。精霊陣を展開したら使いたい魔法をイメージしながら精霊を取り込む。そうすると属性にあった精霊が精霊陣の中に入って後は引き金となる言葉か動作で発動するわ」
「分かった。ちょっとやって見る」
「あ、ちょっと待って先に結界を張っておくわ。周りは森なのだし火の魔法で火事になっても面倒だから」
そう言っって結界魔法を展開する。今いる広場を覆う大きさだった。結界には色が着いていてどこまで展開されたのか分かった。
「これで良しと。じゃあ思う存分魔法を使って良いわよ。呪文は基本イメージだから日本語でもこの世界の言葉でも良いわ。私としては貴方の世界の言葉の方がいいと思う。呪文の内容によっては相手に悟られる事があるし」
日本語か。そう言えば、言葉を覚えてからは日常的に使う言葉も、今考えている時もほとんどこの世界の言葉になっていた。
「まぁ、確かに日本語はこの世界の人達には使えないだろうし、詠唱するならそっちのが良いか。それに使う機会がなければ忘れて行ってしまうだろうし」
「貴方はこの世界の常識が無いわ。もちろんいい意味でね?だから色んな魔法を創れると思うの。期待してるわ貴方がどんな魔法を創るのか」
「ああ。期待に添えられるように頑張るよ」
こうして俺の魔法の修行が本格的にが始まったのだった。
魔法の修行が始まったと同時に体術の修行も変化して来ていた。竜から逃げる訓練から竜に乗るという方向へ。
この世界には精霊と契約した「精霊魔法士」と呼ばれる存在と竜と契約し彼らに乗って戦う「竜騎士」と呼ばれる存在がいる。
もちろん契約せずとも竜に乗れるし、魔法も使える。契約の特徴は契約してない人達と決定的な差がある。それは契約魔法、または固有魔法と言う物を使えることにある。(竜の場合は契約術式、固有術式という)
そのどれもが強力であるが欠点もある。精霊と契約してしまえば竜と契約は出来なくなる。その逆も然りだ。
契約することで体内の魔法組織、回路が書き換わり、一回変化してしまうと元には戻らないらしい。そのため竜と契約すれば簡単な魔法しか使えなくなるし、竜も言うことを聞いてくれなくなる。
それでも人々は精霊魔法士、竜騎士に憧れその道を目指すと言う。
「貴方はどちらにもなれる才能があるわ。だからよく考えて選択しなさい。もちろん私の様にどちらとも契約しないという選択肢もあるけど」
「アリシアは精霊魔法士じゃないのか?」
俺はてっきりアリシアは精霊魔法士ではないかと思っていた。リリーに乗ってるところは見たこと無いし、どちらかと言えば魔法を使っている印象しか無いからだ。
「違うわよ?だって精霊と契約しちゃったらリリーに嫌われちゃうもの。それに私には固有魔法も要らないし。無くても十分に生活出来るから」
まあアリシアは家に引きこもっているのが主なため必要ないのも頷ける。
「じゃあ、リリーお願いね?なるべく厳しくする様に」
「きゅっ!」
「でもあまり高く飛んで彼を落としたらダメよ?」
「きゅきゅっ!」
リリーは相変わらず返事はいいね。返事は。
こうして俺の修行は後半を迎えた。
ある時は魔法の規模を大きくし過ぎてアリシアの展開する結界を壊して怒られたり、高く飛行したリリーに振り回されて落ちてしまったりと失敗も多くあったが、魔法を想像しながらする修行は楽しくもあったし、リリーとの修行も空を自由に飛行するという経験が出来て充実した修行になっていった。
そして、そんな修行も月日は流れ、終わりを迎えていたーーー
次は主人公が旅立ちます。これまで魔女という単語が出て来ませんが理由は後ほど分かります。




