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竜と魔女と異世界と  作者: 夜刀
第二章 新たな出会いと学園と
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第十七話 寄り道の果てに

「どうやってここまで来たのか知らんが、褒めてやる。うん?どうした?そんなに息切れして」


目を細めて先生(ノイ)が言う。間に合ったことが意外なのか、驚いている。


「はぁ、はぁっ、いや、なんでも無い。ちゃんと間に合ったんだから問題ないだろ?」


俺はというと、間に合わせるためにかなり本気で魔法を使ったので、息切れを起こしていた。


「本当は少し遅刻だが多目に見てやる。では全員揃った所でこの迷宮での訓練を開始する。まずは説明を良く聞いて迅速に行動しろ」


そういって先生は生徒を全員集め、説明をする。



その説明を聞きながらユーリと別れた時を思い出す。


本来であれば余裕で間に合っていた筈であった。ユーリを森の近くの街へ送り届けるまでは良かったのだ。しかし、問題はその後だった。


時は三十分前に遡るーーー





「ほら、着いたぞ。ここで良いな?」


ユーリを担いだまま、街の外壁のそばで着地した。取り敢えず降ろす。すると彼女は腰が抜けてしまったのか座り込んだままだった。シルフィードで飛んで来たためか、彼女の服は少し乱れていた。なるべく見ない様に目を逸らす。


逸らした視線の先には大きな壁がそびえ立っている。


このイルバスという街はエルファリードより半分の大きさしか無いが、周りには強固な外壁があり、魔物が押し寄せて来ても大丈夫な作りだ。


「うう、アンタは女の子の扱いがなっていないわ。こんなに乱暴にするなんて」


「わう!わう!」


人聞きの悪いことを言うな。誰かに聞かれてたらどうするんだ。まあ、誰も居ない所を選んで着地したので、人影は無かったが少し言葉を選んで欲しいものである。


「送り届けてやったんだから文句言うなっての」


「それについてはお礼を言うわ。助けてくれて、ありがとう。あのままアンタが来なきゃ私は死んでたわ」


「まあ、次は行き倒れない様に、森に入る時は十分に食料を持っていけ。それじゃあ、俺はこれで」


時間を見ると後、三十分くらいしか残っていなかった。飯はお預けだな。迷宮の近くに町とか有ればいいんだけど。


「もう行くの?まあノイ先生の授業だったら遅刻は出来なものね。あの人色々怖いから」


話を聞く所によるとユーリは三年前に学園を卒業し、今は精霊魔法士として、修行をしているらしい。詳しいことは時間も無かったので聞けなかったが、聞く限りどうやらノイ先生が苦手だった様である。


「そこに誰かいるんですか?」


門兵だろうか?話し声が聞こえたのか、こちらに近付いて来る。面倒なのでさっさと立ち去るか。だがここでいきなり居なくなったり、逃げたりするわけにはいかないので大人しくしている事にした。


「あ、ユーリ様ではないですか!無事だったのですね!魔の森へ向かったと聞いたので皆、心配していたのですよ!」


「あ、フラム。大丈夫よ。この通り無傷よ」


そう言いながら門兵は兜を脱ぎユーリへ近付く。よく見ればその門兵は女性であった。珍しいな、門兵って普通は男がやるらしいし。


「ああ、良かった。む?ユーリ様。この男は誰ですか?まさか何かされたんじゃ!?さっき乱暴とか聞こえた気がしましたが!」


何もしてないっての。いや、でも待てよ、と今の状況を見てみる。


そこには、まだ腰が抜けているのか少し服を乱したまま座り込むユーリ。隣には戦闘着に身を包む怪しげな男。傍目から見れば、彼女が襲われたと見られても、仕方ないかもしれない。


それに会話も一部聞かれていた様だった。それも聞かれて都合の悪い単語だけ。


「違うわよ。乱暴も確かにされーー、なんでも無いわ。じゃなくて彼は私を助けてくれたのよ」


余計な事は言うなと門兵の死角になっている所で、ユーリの背中を足で突つく。


「そうなのですか?今、乱暴がどうとか言われていた様な?」


「気のせいよ。それよりも彼は急ぐ用事があるらしいから、もう良いかしら?」


「ええ、ユーリ様がそう言うのであれば引き止める理由はありません。ユーリ様を助けて下さり有難う御座いました。本当ならお礼をすべきなのですplが、今はそれどころでは無いのです」


「何かあったの?」


「ああ、いえ」


フラムと呼ばれた門兵は俺をチラチラみながら、話をするか迷っている様子だ。どうやら部外者がいては話しづらい内容なのだろう。


「俺の事なら気にしなくていい。ユーリ、クローム。じゃあこれで」


「あ、うん。ごめんね。満足にお礼をすることも出来なくて。今度会ったらちゃんとお礼をするわ」


「わう!」


「そうか。じゃあ期待せずに待ってるよ」


あまり時間も無いし早々に立ち去ろうと魔法をその場で起動させる。だがこれがいけなかった。


「これは魔法!?それに凄い魔力、もしかして精霊魔法士様なのですか!?ああ、あの少し待ってもらえませんか!?」


なぜかフラムに呼び止められてしまった。


「いや、これから急ぐから。それに俺は精霊魔法士じゃ無いし。役に立たないと思うぞ」


「何、言ってんのよアンタは。どんな事が起こってるか知らないけど、役に立たないわけ無いわ。魔法の扱いだったら精霊魔法士の私より、絶対上手いもの」


おい。余計な事を言うなよ。フラムが期待の込めた眼差しで、俺を見ているし。


「ユーリ様よりもお強いのですか!?でしたら、精霊魔法士じゃなくても構いません!この街の、イルバスの危機を救ってください!」


なんだろうか。面倒事に巻き込まれた様な気がする。


ふと時間を見る遅刻まで残り三十分弱である。





「こちらが私達の詰所です」


俺とユーリとクロームは街の中にある兵士の詰所へ通された。詰所の中には三人の兵士がいたが、どれも女性であった。女性用の詰所かなんかだろうか?


そういえばここに来るまでに街の中を見たが、男は爺さんと子供以外は見なかった気がする。気の所為か?


「ねえ、なんでここにも大人の男の人が居ないの?街にも見かけなかったし。私が最後にこの街を出た時から一週間くらい経ってるけど、前はもっと居たでしょう?」


この街を知っているユーリだが、大人の男性が居ないことに疑問を持っている様子であった。やっぱり異常なのか。


「はい。少し前までは皆、この街に居ましたが今はここにはいません。彼らは二日前から、ある魔物の討伐に向かっているのです」


「討伐って、でもこの街の男達、全員が行くってどんな魔物なの?」


ユーリの疑問は俺も感じている。この街にも冒険者ギルドはあるし、それなりにランクの高い人達もいるという話だ。その全員が出張らなきゃならないのは相当手強い魔物だろうと予測する。


「はい。魔物の名はヴォルドローク。ランクはSS級。今は眠っている様なのですが、目を覚ませば大変な事になります」


「ヴォルドローク!?なんでそんな魔物がイルバスの近くに!?」


「理由は分かりません。ですが魔物は真っ直ぐこのイルバスへ向かって来ている。放っておけば街は壊滅してしまうでしょう」


「なら向かって行った男達も危ないんじゃ無いのか?」


街を壊滅させるほどの力を持つ魔物なら、普通の人であれば一瞬で吹き飛ばされてしまうだろう。


「いえ、今の所、その心配は無いです。ヴォルドロークは、今は眠っている。それは街の男達があの魔物に食料を持って行ったからです。腹を空かせていたらしく街の備蓄の半分を平らげたことで眠りに入ったと報告がありました」


「そうなのか。だけど腹が減って街に近付いて来たなら、満腹になって帰るんじゃ無いのか?」


「それが一番いいのですが、あんな魔物が近くにいることが知られてしまえば、この街に人が寄り付かなくなってしまう。そうなれば壊滅も同じです」


なるほど。観光までと行かなくとも人が居なければ街も廃れて行ってしまうか。確かに凶暴な魔物が近くにいる分かっていて、住もうとは思わないだろうし。


「ねえ、サクヤ。言いづらいんだけどヴォルドロークを討伐してもらえないかしら?あの魔物は魔法が弱点で、高い火力の魔法をぶつけ続ければ倒せる筈なの」


それで俺が魔法を使えると分かった途端に引きとめられた訳か。


「お願いします。この街には精霊魔法士様はユーリ様以外に居ません。他は精霊と契約してない未熟な魔法使いだけなのです」


「私も今は正直、戦力外よ。魔力の使いすぎと空腹で森で倒れちゃったんだから。一晩休まなきゃ満足に戦えないわ」


「わう・・・」


そう言って悔しそうにするユーリとクローム。それを見た俺は思い切りため息を着く。


「はあぁぁ〜。急がないとって言ってんのに。おい、ユーリ」


「何よ?」


「今から行って来るから、俺が帰って来るまでに弁当用意しといてくれ」


「べ、弁当って。それに一人で行くつもり!?幾ら何でもそれは無茶よ!」


「なんだよ?お前は俺の弁当食べたんだから、代わりの物を用意するのは当然だろう?まぁ、魔物の方は大丈夫だろ。多分」


それに連れて行っても、今の状態を見るに足手まといになるだろうし。



「多分って、あ〜もう!分かったわよ!作っておくから、ちゃんと帰って来なさいよ!」


「え!?ユーリ様、弁当って!?」


そう言うとユーリはフラムを連れて詰所の奥にある厨房へ行ってしまった。


『マスター。遅刻まで残り、二十分ですが大丈夫ですか?』


「大丈夫じゃ無いけど仕方ないだろ。十分で片付けてすぐ迷宮へ向かうぞ」


『了解なの!ヴォルドロークがどこにいるか分かったの!あっちなの!』


俺は外へ出てシルフィードを発動させる。ナビを見るに距離はそう遠くない。


やっぱり面倒事に巻き込まれたなぁと思いつつも、魔物がいるという場所へ向かう。向かう先は街外れの荒野。


近いだけあり一瞬で着いた。そこには何十人もの男達と、人の背丈の十倍の大きさを持った巨大な熊が居た。


ーーーおお、あれがヴォルドローク?角とか羽は生えてるけど熊にしか見えないな。


確かにフラムの言うとおり寝ているよ様だ。


ーーメルル!


『了解です!』


メルルに魔物の情報を見て貰う様に指示を飛ばす。すぐに情報は表示された。



名前:ヴォルドローク


ランク:SS



状態:睡眠



説明

物理攻撃はその強靭な毛皮に包まれてほとんど効かない。唯一ある弱点は魔法。特に火の魔法に弱い。



補足

毛皮は希少で、とても高く売れるので全て燃やしてしまうと問題あるかと思います。微妙な手加減が必要かと。


byメルル





ええ、一撃で倒そうと思っていたんだがなぁ。手加減がいるのか。


物理攻撃不可で、燃やし尽くすと問題があるとなれば、一点集中で、なるべく傷を付けずに、倒すしかないか。先ずは周りにいる連中に退いてもらわなければ。


「おい、そこの兵士、今からコイツ倒すから、退いてくれ」


「き、君は誰だ!?一体何処から・・・いや、とにかく危ないぞ!」


着地した場所に兵士がいて、何やら叫んでいるが、取り敢えず退いて欲しい。


「ほら、アンタ達は早くあっちに行って。魔法を使うのに邪魔だ」


「魔法!?君は精霊魔法士なのか!?」」


「んな事良いから、退いてくれって言ってるんだが」


「おい、皆!一旦こいつから離れろ!魔法士様が来て下さったぞ!」


「何!?魔法士様が!?」


「もしかして、ユーリ様!?あれ、違う?」


「ッチ。なんだ。ユーリ様じゃ無いのか」


「おーい。死ぬなよ坊主!」


「無理だよ!君も下がりなさい!」


一人の兵士が撤退命令を出すと、それぞれがこちらへ後退して来る。皆が俺を見て色々な言葉を掛けて来るが、そのどれもが期待外れな感想だったり、心配そうな声であり、期待してる様な声は一つも無かった。


というか誰だ舌打ちした奴。


まあ、それも仕方ないか。と思いつつも俺は魔法を創り始める。既存の魔法を使うだけでは上手く倒せないと判断した為である。


燃やさず、なるべく傷付けずに倒す方法か。・・・・よし決めた。





手に魔力を集中させ、両手を地面に着ける。その瞬間、自分を中心に巨大な魔法陣が広がる。



ーーーイメージするのは、強靭な鎖。巻き付き、絞め、最後に貫く。



イメージを固定。具現化する。



「ーーーそのまま、永遠に眠れ。デストラクション・チェイン」



魔法陣から鎖が、音も無く、静かに伸びてヴォルドロークへ絡みついて行く。だが鎖はまだ魔物には触れていないため、自分に死の鎖が巻き付いていることに気付かず寝ている。


鎖がその巨体に巻き付き、その鋭利な先端が魔物の心臓に狙いを定める。


魔法が発動した事を確認し、地面に着いた両手を離し立ち上がる。


「な、なあ?魔法士様。これで倒したのかい?」


「いや?まだ準備が終わっただけだ。一応確認するけど倒していいんだな?」


「も、もちろんだ!死人こそ出ていないが、大怪我をした者だっている!街の食糧の大半を食われ、このままでは・・・」


「そうか。なら、さっさと倒しておこうか」


両手を胸の前で両手を力強く合わせる。


パンと乾いた音が荒野に響く。


音がした瞬間、鎖が一気に魔物を締め付け、先端が額を貫いた。最強のSS級と呼ばれる魔物、ヴォルドロークは呆気なく息絶えたのである。






「おーい。ユーリ、弁当出来たか?」


「あれ、サクヤ!?ヴォルドロークはどうしたのよ!?まさか逃げて来たんじゃ」


「ちゃんと倒して来たっての。それよりも弁当は?」


「倒したって、はあ、もう呆れて何も言えないわ」


「え?倒した!?え!?」


ユーリは呆れた様に溜息をつき、フラムは事態を把握しきれないのか、疑問だらけという顔である。


「弁当なんてまだ、作れてるワケないわ。アンタが出てってからまだ十分と経ってないわよ。あと五分あれば出来るから待ってなさい」


五分か。こりゃあ、もう間に合わないなと諦め、大人しく席に座って待つことにする。


しばらくすると弁当も出来上がり、同時にヴォルドロークの居た場所から、一人の兵士が帰って来て街の皆に討伐が終わった事を伝えていた。


お礼がしたいと、皆に引きとめられてしまったが、今は授業の最中でもあるので遠慮しておいた。心残りなのは、あのヴォルドロークは食えるそうで、味もかなり良いらしい。食いたかったが諦めよう。


「ありがとうございます。お陰でこの街は救われました」


「サクヤ。何から何までありがとう。ノイ先生によろしく伝えておいて」


「わう!」


それぞれにお礼を言われ、少し照れるが、早く行かなきゃ本当に遅刻だ。


「じゃ、また暇な時にでも寄るから、その時にでも、何かご馳走してくれ」


「はい!お待ちしております!」


俺はまたシルフィードを起動させ、今度こそ迷宮へ向かって飛ぶ。間に合わないかもしれないが、とにかく全速力で。




サクヤが見えなくなった後、ユーリは誰にも聞こえないように一人呟く。


「・・・エルファリード学園かぁ。今は、あんな楽しそうな子がいるのね。ーーーそう言えば、あの学園長から手紙が来てたわね」


「ユーリ様?何かおっしゃいましたか?」


「いえ、なんでも無いわ。さあ、早く私達も手伝いに行きましょう!今日は忙しくなるわよ!」


「はい!」







「ふうん。そんな事があったのですか」


ふうんってミリア、何か怖いんですけど。


「あ、ああ。間に合わないかもと思ったが、こっちも二十分くらい遅れてた見たいで助かったよ」


今は迷宮の中。セルカと相棒の竜。ミリアに俺という、いつものメンバーである。


「まあこちらは、そちらと違って大人数で、しかも初心者が多いですから多少の遅れは仕方ないでしょう」


おーいセルカさん?なんか言葉にトゲがある気がするんだが。


ーーーあれ?何故こんなに居心地が悪いのだろうか?さっきまで和気あいあいとしてたのに。


「取り敢えず、この先に広場があるみたいですから休憩をしましょう」


「サクヤさんは、その手作り弁当がありますから私達の作った分は要りませんよね?」


ここの空気が悪いのは朔夜が話したユーリという精霊魔法士にあるのだが、朔夜は気が付かなかった。


ーーーこの空気のまま、三日間の迷宮探索かぁ。ああ、向こう(マルバス)でちゃんと飯を食ってくるんだった。


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