第八話 最初の授業は
本日最初の更新です。二回目出来るかはまだ分かりません。
食堂での騒動から一日。今日は最初の授業だ。まずは午前中の座学だがその殆どはアリシアから学んで来たことと同じだった。世界や精霊、他の大陸についてが主な内容だった。
分かっている内容だけに面白いとは言えず眠気ととひたすら戦っていた。
昼は食堂だったのだがミリアとセルカに誘われ、売店で弁当を買って食べた。売店も味がよく食堂で食べたのと遜色ない美味しさであった。ちなみに俺達が売店に行っている間、教室にフィアナが来たらしいが何の用だったんだろうか?隣の部屋だし後で聞いて見るか。
午後は実戦訓練だ。最初はミリアのいる精霊科を受講する。本当はリリー以外の竜を見るのは楽しみでもあったので竜騎士科の方に行きたいと思ったがミリアに熱心に誘われ精霊科を選択した。
「朔夜さん、始めての授業ですね!少し楽しみです。私も朔夜さんみたいな魔法を早く使えるようになりたいです」
「俺のはあんまり参考にしない方が良いと思うよ?常識的じゃ無いみたいだし魔女の訓練の賜物だしな」
ミリアとセルカには自分が【竜焔の魔女】の弟子と言うことを話しておいた。隠し事じゃ無いけど、力を見せてるからな。変に思われても今後の学園生活に響くだろうとの判断だった。ミリア達は大層驚いていたが「そんな理由が・・・」とか「辛い訓練だったのですね・・・」と話の最後には何故かそんな言葉をかけられていた。
魔女の弟子と言うのは話したが、異世界から来たと言うのは、この学園には学園長のリアンナしか知るものはいない。俺としては話しても別に良かったのだが、学園長から「私は良いが他の物が知れば、騒ぎだけでは済まないからやめておけ」と言われていたのでフィアナにも言ってなかった。
「では最初の授業を始める。私はこの講義を担当するノイ・フォルドーだ。これから一年間、精霊との接し方や高度な魔法の扱い、最終的には精霊との契約までをしてもらうことになる。私は厳しいぞ?覚悟しておくように」
ここはフィアナと戦った訓練場である。普段はここで精霊科は授業をし、竜騎士科はここより広い校庭で訓練をしているようだ。
今、発言を行ったのはの女性であった。ノイ・フォルドーは髪は髪は青く長身であり、学園長より年上に見えた。20歳後半ぐらいの年齢ではないかと思う。
「ではまずは最初に適性確認を行う。まあ試験に受かった君達だ。問題は無いと思うが、まだ決めかねてる人もいるだろう。この機会に自分の才能がどちらにあるのか確認しておいた方が良い」
そう言い彼女は手のひらサイズのプレートを各個人へ配って行く。色は全部灰色だ。
「これは学生証だ。最初の実戦訓練時に渡すようになっている。竜騎士科でも同じ物が渡されている。」
渡された物を見ながら思う。なんか学生証っていうかICカード見たいだな。
「今後、ギルドで仕事を受ける物もいるだろう。それを持っていれば冒険者と同じようにランクを与えられ、そのランクにあった仕事が出来る」
なるほどな。通常はギルドカードと言う物が必要になる様だが、これがあれば同じ事が出来ると。
「ただし、全て事前に申請が必要である。それが最下級のランクFであろうと特級のランクSSであろうとな。とは言っても学生の身分では許可が降りるのはAまでだがな」
一旦話を区切り生徒たちの注目を集め話を続ける。
「ではそれに魔力を込めてみろ。全力でな。一定以上の魔力を込めると認証が始まり後は込められた魔力に応じて色が変わる。それが君達の魔力の強さだ」
そう言われ生徒たちは魔力をカードへ込め始めるが俺はどうしようか悩んでいた。隣にいたミリアも魔力を込め終わったようだが俺を見て不思議そうな感じで問いかけて来た。
「朔夜さん?どうしたのですか?」
「あ、ああ。魔力を込めるんだよな?なあミリア、聞きたいんだが全力でやってもいいと思うか?」
「え?そ、それは全力でやれと言うのですから、全力の方が良いと思います。変に隠すと逆に目立つかもしれませんし」
「どうした?何か問題があったか?」
話していると不審に思ったのか先生がこちらまで来る。周りの生徒は大体が測定を終えたようで視線がこちらへ集まる。
「ああ、いえ。すぐやります。ちょっとカードが珍しかったので」
「そうか。だが後は君だけのようだ。すぐやりたまえ」
そう言われて周りを見ると全ての視線が俺に集まっていた。視線が「はやくやれよ」と語っている。
その視線を受け、なんとなく焦った俺は思わず全力で魔力を込めてしまった。
その瞬間。それは起きた。光が俺を中心に広がる。
次々とカードの色が変わって行く。
灰色のカードから茶色、青、緑、赤、金、そして白へ。最終的に黒になり光は収まった。カードは依然黒いままだ。
うわぁ。なんか、ヤバそうだなこれ。
恐る恐る周りを見回す。全ての生徒が驚愕の表情をしていた。ミリア、お前もか。
「な!?黒だと!?あの学園長でさえ白なのに!まさか学園長以上の魔力だと言うのか!?」
やっぱり騒ぎになった。面倒だなと思いつつもこの場を何とか収めようとする。
「まあ、ほら?終わりましたよ認証。早く授業を続けてください」
敬語をフィアナから習っておいて良かった。とっさでも出て来るもんだな。
「む、なら後で話を聞くからな。君がな何者なのかを」
渋々元の位置へ戻る彼女を見送りふと隣を見るとミリアが目をキラキラさせてこっちを見ている。
「す、すごいです。まさか特急以上の魔力をお持ちだなんて!!」
「ほら今は授業中だから集中して」
「あ、そうですよね。すみません。ちょっと興奮しちゃって」
ごほん、と咳払いが聞こえて来たので生徒の視線が先生へと映る。
「予想外の事態もあったが全員、自分の色は確認出来たか?精霊魔法士になるためには最低でも緑か赤で無いと難しいだろう。認証で青以下であれば竜騎士科で学ぶ事をお勧めする」
ちなみに色は冒険者のランクと同じ色で表される。灰色はF、茶色がE、青がDと変わっていく。最終的は黒のSSが最上級ランクだそうだ。
精霊魔法士を目指すなら緑のCランクか赤のBランクまでが適性だと言う。
「では最初は初級魔法からだ。高位の魔法士には自己流で魔法を扱うものも少なからずいる。だがそれは実力と経験があるから出来るのであって、まだ君達には教本通りの魔法を覚えてもらい基礎の力をつけてもらう」
全員が言われた通りに魔力を込めて魔法を使い始める。精霊科を受講するだけあって初級魔法はお手の物のようだ。
一方で俺は初級魔法の使い方に苦戦していた。手から火の玉出すとか、水を出すとかの魔法なのに詠唱を使わなければいけないので上手くいかないというか。
無詠唱では楽勝なんだけどなぁ。
詠唱を入れて発動しようとすると最後まで言わなければちゃんと発動しないのだ。
アリシアとの訓練では、ほぼ無詠唱でしかもオリジナルばかりやって来たのでこの訓練は難しく相性が悪かった。
その結果。
俺は魔力は桁外れに多いのに呪文の詠唱が出来ず魔法が扱えないという、ある意味で落ちこぼれという認識になってしまったのだった。
なんかアダ名がつけようと思いましたけど「落ちこぼれの魔法士」とかどっかにありそうなのでやめました(笑)




