第六話 戦いの結末は
本日二回目の投稿です。
ーーなんだあれ!??
竜のエナ?とフィアナを鎖で拘束し、勝負は付いたと油断した瞬間それは起きた。男とも女とも取れる様な声で詠唱が聞こえたと思ったら鎖を引き千切るような音と共に衝撃が来た。
その衝撃を躱しながら学園長に問いかける。
「おい!なんだアレは!?凄く危なそうなんだが!」
「悪いが逃げてくれ!戦闘は中止する!今、彼女と竜は暴走していている。契約状態ではどれだけ魔力があろうが関係ない。貫かれるぞ!」
やがて衝撃が止み砂煙が晴れその姿が見える。そこには彼女の姿は無く、先程とは姿の変わった竜が俺を睨んでいた。身体の周りには紋様が浮かび上がり背中には新たな光の翼が生えていた。
「くそっ!やはり、主導権は竜にあるか」
学園長が険しい顔をして呟く。
「どういう事なんだアレは!?てか彼女はどこだ!?」
「あれは固有術式が失敗した姿だ。本来であれば逆の事が起きる。竜の力をその身に取り込み一体となる。それが竜との契約だ」
だが、と彼女は続ける。
「契約して間も無いし、彼女も竜も未熟だ。止めるには魔力切れを起こさせるか、竜を気絶させるしか無い。だが契約者相手には通常の魔法は通じない」
「じゃあ、魔力切れ狙いしかないか」
グガアアアアアア!!
竜の周りに魔力が集まっているのが見える。アレはブレスだろうか?そう言えばリリーがやっているのを見たことがある。すかさずケータイを取り出しカシャと撮影。
▽
竜騎士:フィアナ・イルミナ
状態:固有術式発動 (暴走)
能力値
契約状態では精霊の力が及ばず測定不能です。
攻略法
生半可な魔力では消されてしまうので、消される以上の魔力を込めて攻撃してください。ただし全力で攻撃してしまうと相手を消滅させてしまう恐れがあるので気をつけてください。
補足
魔力切れを狙うなら防御陣を貼ることをオススメします。ですが気を抜くと破られてしまう可能性があるので気をつけてください。
by精霊
▽
防御陣か。ブレスから逃げるのも難しそうだしな。ならやってみるか!にしても今回は役に立つな精霊。
両腕を前へ構え自分の背丈とは二倍の精霊陣を展開しイメージを固め始める。
ーーイメージするのは堅牢な盾。どんな攻撃も通さない絶対防御!
あ、前が見えないと不便だな。透過のイメージも追加して。
イメージを固定。イメージを具現化する。
俺の発動の準備が整うと同時に彼方の準備も整った様だ。
ブレスの発射と同じタイミングで魔法が発動する。
「全てを通さない絶対の盾ーーアイギス!!」
そしてぶつかる盾と竜のブレス。
激しい光と共がどちらかが倒れるまで続く。
どの位経っただろうかやがて光は収まりそこには、倒れ伏した竜とフィアナの姿。そして無傷の朔夜だった。
「学院長!これで勝負ありだろ?」
学園長の方へ向く。学園長は「し、信じられん・・」とか呟いているが、ハッと気が付くと言う。
「し、勝負ありだ!速く医務室へ運ぶぞ!お前も手伝え!」
え?俺もやんの?疲れてんだけど。
その後、俺と学院長は回復魔法を竜とフィアナにそれぞれ掛けて訓練場からでる。
俺は竜の方を、寝床があると言う小屋まで運ぶ。体は竜の方が大きく重いが風の魔法を使って運ぶので重さは関係なかった。
運んだ後は医務室へ行った。口頭で場所を伝えられただけなので迷いに迷ってしまい、途中ですれ違った女性職員に道を聞いてやっと医務室へ辿り着いた。
「入るぞ」
「良いぞ」
「え?ちょっ待!」
フィアナの止める様な声があった様な気がするが急には止まれない。
ガラッと勢い良くドアを開けると
「へ?」
そこには着替え中のフィアナが居た。上半身裸で。
「き、きゃああああ!!は、速く出ていけ!」
胸を隠しながら近くにある物を片っ端から投げる。俺は一目散に医務室の外へ逃げる。ああ、見てしまった。胸、見た目よりデカイな。着痩せするタイプかぁ。
待っている間、いろいろ考えていると声がかかる。
「もう入って良いぞ」
学園長の声がしたので今度は普通に扉を開けて中へ入る。
中には顔を真っ赤にしたフィアナとなぜかニヤニヤしている学園長が居た。
ていうかなんでアンタがニヤニヤしてるんだ。絶対、分かってて開けて良いって言ったろ?
「一通り見たが特に怪我も無い。安心して良いぞ」
「そうか。なら良かったよ」
「あ、あの!その済まなかったな。勝負は着いていたのにあんな事になってしまって」
「別に構わない。誰も怪我してないしな。でも本来であればあんな事にはならないんだろう?」
「そうだな。なぜかエナは君を見た時から妙に高揚していてな。私が気を失ったことで制御が効かなくなったのかも知れない。いや、これも言い訳だな。私が未熟だったのだ」
俺を見て興奮してた?なんかリリー見たいだなぁ。あいつも俺が大きな魔法を使った直後はいつもより懐いて来た気がする。
「そんなに気にするな。聞けば竜騎士になりたてだそうじゃないか。まだまだこれから修練してけば良いと思うぞ?」
「ありがとう」
俺とフィアナが見つめあって会話をしていると隣から閉まらない感じの声が聞こえた。
「二人だけの空間に邪魔して悪いが私も居ることを忘れてもらっては困るぞ?」
まだニヤニヤしてんのかコイツ。
「落ち着いたら学園長室まで来てくれ。書類とかいろいろ渡す物があるからな。フィアナ、君も一緒にな」
「分かった」
「私もですか?はい。分かりました」
そう言うと学園長は「ごゆっくり〜」とか言いながら医務室を出て行く。
学院長が出て行った後は妙な沈黙が訪れるがフィアナの方から声を掛けて来る。
「あ、あの!そういえば学園長に対する言葉遣いってあれでいいのか?さすがの私でも学園長には敬語をつかうぞ?」
いきなりの話題転換に一瞬、なんで今聞くの?と思ったが沈黙してるよりは良いかと思い答える。
「言葉はちょっと事情がある。なんというか短期間で覚えた物だから言葉遣いがこれしか出来なくてな」
「短期間で覚えた?」
「ああ。俺は一年前に魔女に拾われて修行を始めたんだが、最初は言葉一つさえも理解出来なかった。翻訳薬で誤魔化してはいたけど、外に出るなら覚えなきゃいけないと無理矢理に詰め込まれたからな。敬語は苦手なんだ」
「理解できなかった?というか無理矢理って?」
アリシアとの修行をの日々前半を簡潔に話す。そうすると彼女は「うわぁ」とか「ええっ!」とか反応して最後には俺の肩を掴み「そうか。大変だったんだな」と言ってくれたので何故か涙が出そうになった。
まあそれはともかく、しばらくすると彼女も落ち着いたらしく二人で学園長室へ向かう。
「これが寮の鍵だ」
学園長室に入るなり鍵を投げ渡される。
「取り敢えずそこに生活に必要な物は揃っている。もしお金があって他へ住めるなら後で鍵を返してくれれば良い。フィアナ、君も寮住いだろう?案内してやれ」
「はい。わかりました」
んん?フィアナが案内?もしかして同じ寮なのか?
鍵と何枚かの書類を渡されるがそう言えば聞きたいことがあったのだ。
「それよりもさっきの話なんだが」
「心配せずとも話してやる。だが長くなるからな。先にいろいろ準備して明日か明後日に来ると良い」
「分かった。じゃあそん時には、答えられる事は全部答えて貰うからな」
そう言って俺とフィアナは学園長室を後にする。
で、ここが寮?
「で、でかいな」
なんか想像してた寮違う。なんていうか高級マンションみたいな感じだ。まあ東京のビルみたいに何十階という高さは無いが、三階建てで横に広く学校の校舎と言われても納得する大きさである。
「ここはこの学園の唯一の寮だが、その分規模は大きく、自宅通いでなければ殆どの生徒がここに住んでいるよ」
そう言いながら階段を上がって行き真ん中の扉までたどり着くと鍵を開けて部屋へ入る。
え?何で入ってくの?俺の部屋じゃないの?
「ここだな。ふむ。他の人の部屋に入るのは初めてだが同じ様な感じなんだな」
そう思いながらも彼女に続き部屋へ入ると意外に中は広く一人暮らしには十分すぎる広さであった。
「いろいろ使い方を教えるよう言われているからな。必要だろう?」
そういや日本にいた頃やアリシアと住んでいた頃とは違い見たことのない道具も見える。これは教えてもらわないと壊しちまいそうだな。
「ああ、頼むよ。見た感じ使い方が分からないのが幾つかあるし」
「心配しなくてもちゃんと教えるよ。それからお詫びの意味も込めて今日の夕飯は私が作るよ」
そしてフィアナにいろいろ教えてもらいながら一日が過ぎて行く。
良くも悪くもいろいろあった一日だったなぁと思いなら彼女の手作り料理食べて彼女を送って行こう提案するが断られてしまった。
「いいよ。送るなんて。だって隣だしな」
ええ?あ、本当だ。表札にフィアナ・イルミナって書いてある。
「じゃあ、私はこれで。何か困った事があればいつでも頼って来るといい」
「いろいろありがとうな。じゃあまたな」
別れを告げ自分の部屋に戻る。
入学式まであと3日だ。明日からは準備をしなきゃなぁと思いながら彼の一日は終わりを告げる。
次は説明と入学式です。




