第三話 暗躍する影
ちょっと幕間を挟みたかったので書きました。ようはフラグ立てですね!
「なに!?失敗しただと!?」
エルファリードには裕福な家庭や貴族が住む住宅街がある。その中でも一際大きな屋敷の一室で怒鳴り声が響いた。
「ええ。その通りで。どうやらミリア・フレリアとその従者はこのエルファリードへ入ったようで御座いますな」
怒鳴られているのは見るからに怪しい風貌の男であった。茶色く小汚いローブで全身を覆い隠し、顔は分からないように仮面を被っている。
「き、貴様はあちらの大陸では名の通った暗殺者では無かったのか!?あんな小娘一人を殺せないとは思わなかったぞ!」
ローブ男の飄々とした言い回しに男はさらに怒気を強める。
「こちらとしても予想外だったのですよ。あのまま2人だけであれば殺すのは難しく無かった。ですが邪魔が入りグラン・ヴィレルは倒されたので御座います」
「グラン・ヴィレルを倒すほどの冒険者が偶然通りかかったというのか!?邪魔が入らない場所で襲わせたのに何故そこに冒険者が居たのだ!?」
「恐らくは竜騎士なのでは無いかと。周辺は人払いをして寄り付かないようにしていましたが、その男は空から降ってきました。竜で飛行していた所に偶然居合わせたのでしょう」
「りゅ、竜騎士か。一人でグラン・ヴィレルを倒せるのならば相当ま高レベルの竜騎士だ。固有術式を使われてはSランク程度の魔物では荷が重い、か」
竜騎士という単語を聞いたからか少しばかり怒気を弱める。
「ええ。すでに彼女達は街の中へ入ってしまったため、魔物に襲わさせるのは難しい。暗殺者を送り込んで不可解な死にしてしまえば貴方が怪しまれます。ですので気が熟するまで時間を頂きたい」
男は頭を抱えた。これでは計画と違うと。
「私は街へ入るまでに殺したかったのだ!!魔物に襲われて亡き者に出来れば、何の疑問を持たれる事なく私が次の当主だというのに!!」
「ですが、問題ありません。彼女が当主を継げるまで後1年の時間が御座います。それだけあれば幾らでも殺す機会は巡ってきましょう」
この怒り狂う男の名はキルク・フレリア。フレリア家の時期当主になる筈だった男。だがキルクはその乱暴な性格と過去に起こしたある事件により、現在の当主である父親に勘当されていた。
キリクは考えた。当主になる為にはどうすればいいのかを。
考えた結果、意外と答えは簡単に出た。当主候補である妹のミリアを殺すことで、次の当主へなろう、と。
ミリアは血が繋がった妹ではあったが母親が違い、何より1度会っただけなので殺す事に躊躇いは無かった。
「ならば半年の間に必ず殺せ!!出来なければ貴様が死ぬことになるぞ!!」
「肝に命じておきます。では私はこれで」
そう言ってローブの男が部屋を後にする。
ローブの男は屋敷の廊下を歩きながら思考する。
ーーーたかが小娘の殺すのにグラン・ヴィレルを使うまでも無いと考えていましたが、思わぬ収穫でした。隙をみて怪しまれない様にあの娘を殺すのは簡単ですが、あの男の力をもっと見たい。
誰もその男に気が付かない。ローブという目立つ格好で歩いているのに。
ーーー私が赴いても良いですが。
ああ、そうだ。実験中のあの魔物を使いましょう。力が強過ぎて私でも制御しきれないあの怪物を。
ああ、その時が楽しみだ。
ローブの男は不気味に嗤いながら屋敷を出て行く。誰も気づかないまま闇へ消えていく。
幕間なので3000文字もありません。次回更新は明日になるかもです




