第一話 新たな出会い
本日更新4話目です。ちょっと戦闘シーン入ります。
ーーあれがアリシアの言っていた学園がある街。エルファリードか。俺の目の前には城壁で囲まれた大きな街が見えてきた。まだ距離はあるみたいだがある程度進んだら下ろしてもらわないとな。
アリシアの家から一時間の空の旅だった。リリーの飛行速度が速く眼下に広がる景色がどんどん変わって行ったので距離は思ったよりある様だった。
最初の30分程は他の街や人影も見え無かったのでアリシアの家はかなり辺境にあるのではないだろうか?
そんな事を考えながら俺は、リリーに降りてもらう場所を探す。街に中へいきなり降りたらどんな騒ぎになるか分からないからな。
まあ誰もいないだろうし適当なところで降りてーーー?
おや?あそこに見えるのは人だろうか?近くには横転した馬車があった。どうやら魔物に襲われているらしい。
「リリー。ここまででいい」
「きゅい?」
ここでいいの?という感じで聞いてくるが、これ以上近づいて街の人達に驚かれても嫌だしな。
「ありがとうな。また近いうちに会いに行くよ。んじゃ、またな!」
「きゅい!!」
言葉は分からないけど「またね!」と言ってくれている様な気がした。
そんなやり取りをしながら、ふと下を見ると魔物が一人の豪華そうな服を着た女の子に襲い掛かろうとしている所だった。
ーーマズイな。どうやらのんびり降ろしてもらう暇はなさそうだ。
「やっぱり下まで降りなくていい。ここから行くよ。何、心配しなくてもこれくらいの高さからいつも、落ちてるから慣れてる」
日々の修行の賜物であった。
俺は着替えやら学園への紹介状など色々必需品が入った鞄を落ちないように担いでリリーの上に立つ。
「きゅー!きゅい!」
リリーは行ってらっしゃいと言う様に俺が飛び降りやすいように体を傾けてくれた。
「じゃあまたな!」
ーー俺は精霊陣を展開しながら飛び降りていく。今、窮地を迎えている女の子の元へ。
※
ーー私は今絶賛ピンチの途中だった。この春から憧れていたエルファリード学園へ入学出来ることが決まっていた。地元の学校を卒業し、厳しい試験を突破してやっと夢を、精霊魔法士になる為の一歩を踏み出せると思っていたのに。
目の前には広がるのは横転した馬車。傷付いた馬と兵士、そして魔物。魔物は蛇のような外見で名をヴィレルという。
私にはある程度の魔法が使えたが今の精神状態では火を灯す程度の魔法さえ使えない。
悔しかった。こんな魔物に何も出来ずに殺されてしまうのが。勝手に目から涙が溢れる。
ーー誰でもいい。助けて。
「あ、た、助け」
「ギギィイアガアア!!」
今、まさに魔物が一人の抵抗出来ない女の子に襲い掛かろうとしたその時。
ーーー空から降ってきた何かによって彼女を襲おうとしていた魔物が跡形もなく吹き飛んだ。
「ぴゅべっ」
へ?え?何今の!?って魔物は!?
いきなりの出来事に目を白黒させていたら目の前の砂煙の中から声が聞こえた。
「あんた大丈夫か?どうも襲われていたみたいだったから思わず助けちまったけど」
そこには鞄を肩へ担ぎ、オーダーメイドであろうか。黒と赤を基調にした戦闘着に身を包んだ男が悠然と佇んでいた。
後になって思い返すことがある。
多分、この時から私は彼の事をーー
※
「おーい?生きてるかー?」
「あっ、はい。生きてます」
彼女呆然としていたのか、何度か目の声かけに気付いて返事をしてくれた。俺は倒れている馬や( 正確には馬のような生き物)や近くにいた兵士の様子を見る。良かった、死んではいない様だ。
よく見るとまだ魔物はいた。いきなりの俺の登場に驚いている様だったがすぐ気を取り直し威嚇してくる。何故か奴等は1箇所へ集まり始めた。蛇なのでウネウネしてて気持ち悪い。
「逃げて!戦おうとしちゃダメです!1匹ならなんとかなるけど奴等は集まると手に負えなくなります!!」
助けた少女が逃げろと言っていたが、奴等のターゲットは俺に絞られている様だ。
集まったやつらは光り輝き大きな一つの存在に変質していく。奴等が準備しているうちに俺はケータイを取り出して彼等をカメラを使って撮影する。
カシャッと音がして写真が撮影される。画面を見ると目の前の魔物の写真と同時に魔物の情報が表示されていた。
△
グラン・ヴィレル(ヴィレル集合体)
属性 水
種族 蛇
ランク S (本来はC)
説明
複数のヴィレルたちが集まって今れた存在。その速さ・力は通常にのヴィレルをはるかに越えた力を持つ。
攻略法
融合は一時的な為、一定の時間が経てば元へ戻る。合体される前に倒すか、合体されても逃げ回ることが生き延びる為の術である。
補足
今の貴方には魔力で殴るだけで倒せると思います。
by精霊
△
おお、攻略法も乗ってるとは。昔ゲームにあった何とか図鑑みたいな感じだな。
ん?てか精霊って。そういや低級の精霊と契約してらしからなこのケータイ。本当に精霊だったのか・・・音声で指示する機能なんて無かったのに増えていたから不思議には思ってはいたんだ。
「キシャアアアア!!!!」
どうやら俺がケータイを見ているうちに準備を整えた様で声を上げながら襲いかかってきた。俺は後ろで「逃げて!」と言ってくれている彼女をお姫様抱っこで持ち上げて安全な岩場まで移動する。その移動速度はというと。
「へ?あれ!?」
いきなりの移動に驚いている彼女を見ればどれだけ常識外れな速度なのかは分かるだろう。そのままグラン・ヴィレルを後回しにして倒れている馬と兵士を回収する。兵士の方は良く見れば女性だった。息はあるみたいなので、軽く回復魔法を掛けて彼女と同じ場所まで移動させておく。
これで余計な物は無くなかったかな。
「さあ!俺はここにいるぜ?相手してやる」
あまりの移動速度について行けなかったらしくキョロキョロしていたグラン・ヴィレルはやっと俺に気付き「キシャアアアア!!」と再び襲ってくる。
俺は目の前に迫る蛇を見ながら、腰を屈めて腕を後ろへ引き、手に拳くらいの大きさの精霊陣を展開しながら魔力を込める。
ーーーそして殴る。ただそれだけでグラン・ヴィレルは頭から胴体に掛けて蒸発した。 残る尻尾はCランクモンスターであるヴィレルへ分解され、散る様に逃げていく。
あ、あれー?本当に一撃だったよ。図鑑に書いてあったのは間違ってなかったのか。なんていうか見た目が凄かったからもうちょっと苦戦するかと思っていたのに。
その光景を岩場の影から見ていた少女と気絶から気付いた女性兵士は口を大きく開けたまま固まっていた。
ーーひ、姫様。な、なんですかアレ!?あのグラン・ヴィレルを一撃だなんて。
ーーし、知りません。でも助けてくれましたし。悪い人じゃない、と思います。
彼女と女性兵士は近付いてくる男、立花朔夜に目を離させないままショックから立ち直れないでいた。
ーーーーそしてこれが俺と彼女の最初の出会い。ここで助けた少女がこの先どんな関わりを持っていくのかはまだ誰も知らない。
明日は月曜日なので更新するか分かりませんが出来る様に頑張ります。次に彼女と女性兵士の名前が出て来ます。ぶっちゃけ考え中です。ああ、悩む。




