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ウサギの駆け引き  作者: 河合彩
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ウサギの発見

正社員に少しでも隙を見せてたまるもんか。快適な転職ライフを手に入れるためにあと3ヶ月近く踏ん張らなければならない。その為には朝はボランティアと思って一番乗りで会社に行ってやる。

車で30分程度の会社だが、9時出社に対して7時半くらいに家から出る。

正直長時間残業だが、今まで残業代をしっかり支払ってくれていたことから通勤に対するやる気が出ていた。だが昨日の女主任の揚げ足取りからサービス残業になってしまったことが意欲を削ぐ。

(あんな人じゃなかったのにな)

車のエンジンをかけながらちょっと感傷的になる。

契約社員の研修を行ったのは女主任、原主任だ。

原はおそらく50代、既婚女性で確か子供がいるらしい。それ位の年齢層であればおおよそは第一線を外れてパートで活躍する。

そうしないのは彼女の努力はもちろん、飛び抜けた能力があるからに違いなかった。

研修時にはそんな彼女に憧れを抱いた。そして研修が終わった後には厳しくも優しく鍛えてもらったものだ。

にも関わらず、いくら会社の名誉か経営状態か分からないが、こんな扱いをされるとは…

「ババアめ。憧れを返せ。」

眉間に皺を寄せながら車の中で化粧を済ませ1人で愚痴を言った。


愛子が勤めているのは大手広告代理店業界である。広告代理店業界のイベント業務に携わりたいと思ったのは、多分元来のお調子者の性格のせいだ。

愛子の役割は上長が顧客と組み立てたイベント企画内容に対して実際に肉付けしていくことである。

流れとしてはスケジュール作成、企画内容の不足点への対応、当日の運営、最後に効果を測定して顧客をアフターフォローする。

厄介なのは企画内容の対応である。上長と顧客の合体作な訳だからあんまり内容はいじれない。綻びがあればそれをどんどん繕っていくが、これが労働時間を割いて辛いのだ。

でもやり甲斐は半端なくある。

いつの間にか会社に到着して一番乗りでドアの鍵を開けた。


8時半位にもなると感じの悪い正社員共がドアをパカパカ連続で開閉して「おはようございま〜す」とキュウリの輪切りみたいに入ってくる。

(漬物にしてやろうか)

頭の中は怒りで一杯だが挨拶を返す。

細切れキュウリたちは席について各々パソコンを起動させて仕事を始めた。

昼まではまだいいのだ。各自の仕事で必死になっているから。問題は夕方に奴等は一気に暇になって攻撃してくる割合が多い。

例えば「この運営に使う人員は2人欲しいでぇーす」等と愛子が訴えると、前までは「分かったor理由説明して」だったが、現在は舌打ちで返ってくる。

「田中さん、宮本さんからお電話でぇーす」と伝えるだけで、前まで優しかった田中も睨んでくる。

何なんだ、一体。そこまで全員でイジメなくてもいいだろ。


舌打ちや睨みは表現に入らないよと優しく言ってやろうか。いや、そこじゃない。「でぇーす」という言葉じりか。それともキャラがウザいのか。確かにイラつくが10月に入っていきなりこの対応は急過ぎる。


少し考えてハッとした。一契約社員を辞めさせたいからといって、ここまで社員が一丸となって動くものだろうか。

辞めさせたいというオーラは臭ってくるが、自分の契約雇用の問題だけじゃない気がする。何か顧客に失礼な対応をしてしまったか。


ひと段落ついて愛子は昼食を取ることにした。


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