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第61話「帰るの戦うの?」

くっ! なんで店長さんやコンちゃんが探しに来てくれないかわかりました!

長老、パン屋さんにわたしの身代わりタヌキを置いてきたそうです。

現場監督さん情報提供ありがとう。長老はいつかチョップお見舞いするんだから。

でもでも、現場監督さんがこわもてさん達の襲撃を教えてくれました。

遠足の時に攻撃なんて、なんて卑怯なんでしょう!


「そう、ポンちゃんの身代わりを置いてきました」

 くっ……長老しれっと言います。

「あの家には鋭そうなキツネやイヌ、先日来た巫女もいましたからね」

 たまおちゃんはダメ巫女ですが、コンちゃんシロちゃんは確かに。

 コンちゃんは神さまで術もたくさん。

 シロちゃんは警察のイヌなんですよ。

「身代わりのタヌキを置いてくれば、ポンちゃんは家にいる訳ですから、探すなんて考えもしないでしょう、いる訳ですから」

「長老……それにわたしも帰れない、帰る場所もないと?」

「理解いただけましたか? はい、天ぷらそばあがり」

「くっ……覚えてろ~」

 わたし、天ぷらそばを現場監督さんに持っていきます。

 なんだかショック大きすぎ。

 誰も探しに来てくれないの、ちょっと気になってたんですよ。

 コンちゃんは特に……

 ケンカもよくしたけど、コンちゃんは絶対探しに来てくれるって思ってたのに全然来ませんでした。

 薄情なコンちゃんって思ったりもしたけど、身代わりがいれば……わたしがタヌキに戻ったくらいにしか思わなかったんでしょう。

 ショックは大きいんですけど、体は勝手に動きます。

 そうそう、今日はニンジャ屋敷に団体のお客さんが来てるの。

 一度にニンジャ屋敷に入れなかったお客さんがおそば屋さんに流れてきます。

 お店はいい感じに繁盛。

 そうですね、今は体を動かして気を紛らわせる方がよさそうです。

 って、また新たなお客さん二名。

「いらっしゃ……」

「!!」

 わたしも二人のお客さんもびっくり。

「『村長』さんに『豆腐屋のおばあちゃん』!」

 おばあちゃん目を丸くして、

「ポンちゃんかね?」

「そうです」

「今朝、見たけどねぇ」

「それはタヌキだったのでは?」

「うん、そうだけど」

「わたしが本物のポンちゃんです」

 おばあちゃん、わたしをしげしげと見てから、後ろに回ってしっぽをモフモフ。

「むむ……」

「モフモフしないでください……でもわかりましたか?」

「確かにこのしっぽの感触は……」

「で、ですね……」

「しかしタヌキは人をだますと言うし」

「ガーン!」

 って、熟女の村長さんが、

「あの……ポンちゃん?」

「村長さんは信じてくれるんですか!」

「それは……」

「う……村長さんも信じてくれないんですか!」

「ともかく……ここの責任者の方に会いたいんだけど」

「わかりました……こっちです」

 わたし、二人を連れて長老のもとに、

「あ、遠足の下見でしたな」

「はい、村の者からぽんた王国がよかろうと」

「そうですな、裏のニンジャ屋敷が子供には受けるでしょうな」

 長老、髭を撫でながらニコニコ顔。

「ポンちゃん、しばらく店をたのむ」

 言うと三人は行っちゃいました。

 おそばの茹で方やトッピングの温め方は一応知ってます。

 うん?

 でもでも、村長さんや豆腐屋のおばあちゃん、なんで来たんでしょうね?

「遠足」って言ってましたよ。

 も、もしかしてっ!

「遠足」ってなればレッドが来ます!

 レッドならわたしを「ポン姉」ってきっと証明してくれるはず。

 そうしたら、お家に帰るきっかけになりそう。

「でも……」

 一瞬、ポン太やポン吉の顔が浮かびます。

 あの二人も帰れるようにって応援していました。

 でも、そんな応援されると、ちょっと引っ掛かっちゃうの。

 嬉しいはずなのに、ポン太達の事がどうしてもね。

 わたし、どうしたらいいのかな?

 パン屋さんに、お家に帰りたいけど……

 ぽんた王国の事も心配なの……

 ここもダムに沈みそうだったり、こわもてさん達が来たりで大変です。

「そうだ!」

 ぽんた王国がちゃんとなれば、わたしも大手を振って帰れるはず!

 ポン太もポン吉もわたしが帰るのを応援してくれてました。

 なら、わたしが頑張ってぽんた王国を再興してしまえばいいんですよ。

 ふふ、そう思ったら、なんだかやる気が出てきました。

 なんたってわたし、パン屋さんも復活させたんです。

 思わずガッツポーズ……してたら現場監督さんが手招き。

 なにかな?

『姉ちゃんよう……』

『なんですか監督さん、小声で』

『いや……なんか張り切ってるみたいだけど……』

『そうです、人生の目標を今、見つけたところなんです』

『そうか……』

『で、なんですか?』

 現場監督さん、しげしげとわたしを見ながら、

『パン屋の娘は……なにか技を持ってるのか?』

『は?』

『技』

『そ、そんな、普通のタヌキ……今は人なんです、しっぽ丸見えだけど』

『普通に人間なんだよな』

『そうです』

『あの、妙な技を使うのはツンデレメイドのコンちゃんの方だよな?』

『ツンデレメイド……コンちゃんどっちかというとダメダメメイド』

『あの、ダンプ飛ばしたりダムをぶっ壊したのはコンちゃんだよな?』

『そうですよ、現場監督さんが余計な事するから、とんでもない事になっちゃうんです』

『ポンちゃんは……技はなし?』

『そ、そうですね』

 って、現場監督さん、黙り込んじゃいました。

 改めてわたしをじっと見ながら、

『明日、ここは攻撃されるぞ』

「え!」

『声が大きい! ポンちゃんだけでも逃げるんだ』

『え……なんでそんな事知ってるんです?』

『俺、ここのダム工事のヘルプに来てるの、だから知ってる』

『そ、そうなんだ……』

 現場監督さん席を立つと、お勘定をテーブルに置いて、

「つりはいらない」

「はぁ……」

『ともかく逃げろ!』

 最後はすれ違いざまに囁いてくれたんです。

 行っちゃう現場監督さん。

 入れ替わりで今度はシロちゃんの元ご主人の刑事さんが入ってきました。

 店を見渡しながら、現場監督さんの座っていた席に腰を下ろします。

「ごぼう天うどん」

「は~い」

 今日はなんだか、顔見知りの来店が多いです。

 嬉しいはずなんだけど……さっきの「攻撃」「逃げろ」気になります。

 とんでもなくデンジャーワードな予感がするんだけど……

「ポンちゃんありがとう」

「あ、長老、もう終ったんですか?」

「ああ、さっきの人達は終ってもう帰ったよ」

「そうなんだ……長老、さっき現場監督さんから聞いたんだけど……」

「ああ、あの、駐車場に停まっていたダンプの」

「うん……あの人が明日、攻撃があるって」

「!!」


 さて、遠足当日です。

「ニンジャー!」

 ポン吉、朝からハッスルしてます。

 ポン太くんがスケジュールを確認しながら、

「ニンジャ屋敷を案内して、醤油倉を見てからお昼のおそばになります」

「うん、わかった、わたししっかり準備しとくよ」

「ポン姉……お昼を作るの、長老ですよ」

「ですね、わたし配膳で頑張ります」

「カプ!」

「ちょ、ポン吉、なんで噛むんですか!」

 いきなりですね。

 わたしポン吉のしっぽをつかんで「ぶらーん」の刑です。

「ほらほら、しっぽちぎれますよ~」

「うわーん」

「なんで噛むんですか!」

「かまってくれないから」

「ほらほら、ぎゅー!」

「ポン姉、抱くの強すぎだぜ」

「愛情の強さのあらわれなんです」

 ふふ、ポン太くんもつかまえて、二人一緒にぎゅーってします。

 二人ともわたわたしてますよ。

 かわいいですね。

 って、車体を揺らしながらボンネットバスが来ました。

「ほら、ポン太もポン吉も出番ですよ」

「ボク、頑張ります」

「オレもやるぜ」

 二人はニンジャ姿でボンネットバスをお出迎え……って、一番に出てきたのはレッド。

 ああ、レッド、いきなりポン吉に抱きついてます。

「めめめめがねにんじゃ!」

 むう、なんだかレッドのおかげでつかみ、バッチリみたい。

 わたし、レッドに会いに行きたいけど、今は我慢がまん。

「さて、昼の準備が大人数で大変ですね」

 長老が前掛けしながら出てきました。

「長老、今日、攻撃があるっていってましたよ」

 そう、それが気掛りなんですよ。

 だからレッドにも顔見せしなかったんです。

「遠足の時にこわもてさん達来たら、困りますよ」

「うむ……こちらの嫌な時に攻めて来るのが兵法」

「じゃ……このタイミングで来るんですか!」

 わたし、長老を揺すりまくり。

「ダンプに突っ込まれたらここもおしまい」

 それはこの前聞きました……って、長老、なんだか今日はオーラを感じません。

「長老、元気ないですよ、弱気?」

「え?」

「この間、こわもてさん達をやっつけたオーラを感じません」

「そうですか?」

 長老の服から一枚の紙切れ。

 ファックスみたい。

 ふむふむ、なんですと?

「ちょ、ちょっと長老っ!」

「みつかっちゃった」

「みつかっちゃった? なにかわいい感じで言ってるんですか!」

「いや、立ち退いたら一億円くれるって言ってきたから」

「だからなんですかっ!」

「一億円もらって立ち退いてもいいかな~とか」

 だから腑抜けてんですか、この老いぼれタヌキは!

「しっかりしろー!」

 わたし、長老を改めて揺すりまくり。

「おそばにGをいれるような連中ですよ!」

「!!」

「テキトーな事いってだまくらかすに決まってるんです」

「おお! 確かに!」

「目が覚めましたか、ボンクラ長老!」

「むう、ポンちゃんに教えられたのがしゃくですが……」

「な・ん・で・す・とー!」

 もう、長老をチョップしまくり。

 って、遠くからダンプの走ってくる音が聞こえてきます。

「来たようだな」

「わたし、パン屋さんでいつも音聞いてたからわかるけど、かなりの台数ですよ」

「うむ……」

 ニンジャ屋敷の方は盛況みたい。

 さっきから楽しそうな声でいっぱいです。

「遠足、巻き込まれえるのなんとかしないと」

「ポンちゃんの言う通り」

 わたしと長老、お店ののれんに隠れて外を確認……って思ったらいきなり開きました。

 まだダンプの音、ずっと遠くなのに!

「ポンちゃん、まだいるみたいだな」

「監督さん、なんで!」

「ポンちゃんの事だから、まだいるかな~ってな」

「だ、だってどこに行きようもないじゃないですか」

 現場監督さんニヤリとして、のれんを上げるとそこには!

「助太刀に来たのじゃ」

「援軍であります」

「こ、コンちゃん、シロちゃん!」

 強力な援軍、到着です。

 コンちゃんの術があれば、連中なんかイチコロなんだから!


 ニンジャ屋敷の方は、さっきから歓声が続いてます。

 ポン太・ポン吉の「ニンジャー」が受けてるんでしょう。

 でも、道路に面したおそば屋さんの中、張り詰めた空気なの。

「コンちゃん、大丈夫かな?」

「わらわの術をもってすればイチコロなのじゃ」

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