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第53話「おそば屋なんて」

 なんと村に「おそば屋」さんが!

 お店の前には信楽焼きのタヌキがいます。

 そう、あの「のほほ~ん」とした顔のアレ。

 わたし信楽焼きのタヌキを蹴ったけど…蹴ったけど…

 わたしの足の方が壊れちゃいましたよ、とほほ。


『ダム談合事件については、また新しい情報が入り次第……』

 TVのニュースがなにか言ってますよ。

 あれれ、画面はここです。

「店長さん、TVにここ、映ってますよ」

「うん、ダムに談合疑惑あったんだって」

「談合?」

 わたし、よくわからないけどシロちゃんが、

「先日の銃撃事件も実はそれ絡みだったそうであります」

 ああ、覚えてます、シロちゃんの銀玉鉄砲で犯人をタイホしたんです。(注)

「でも、ダムは埋まっちゃいましたよ」

 そうです、ここのダムは溶岩で水なんか貯まらないんです。

『さて、そんな疑惑のダムにあるお店に話を聞いてみました』

 TV、お店紹介に変わりました。

 女性アナウンサーさんがお店の手伝いをしている子供にインタビュー。

 はわわ、子供店員とおじいちゃん店員、しっぽあります。

「店長さん店長さん、ほらほら、この人達、しっぽありますよ!」

「ああ、本当だ、でもきっとコスプレだよ、コスプレ」

「仲間かと思ったのに~、なかなかかわいい子供店員ですよ」

 なんでもお味噌とお醤油を作って売ってるんだって。

 おじいちゃんは手打ちそばを出してるそうです。

「店長さん……これはもしかしたら、ここのマネとか!」

「え?」

「ほら、ここ、一度TVに出たから、きっとマネしてるんです!」

 ニコニコしながら店長さんがわたしの前に配達のバスケットを置きます。

「ポンちゃんレッドと一緒に配達ね」

「はいはい……これは老人ホームのですね」

 って、レッドがさっきからしっぽをモフモフしてます。

 投稿ついでにはやく配達済ませちゃいましょう。

「はい、レッド」

「なになに~」

「手ですよ、手」

「ほえ?」

「一緒に行くのにしっぽはダメ」

「しっぽすてきなのに……」

「コンちゃんとデートの時は手繋ぐよね」

「……」

「ね!」

「ちぇっ!」

 なにが「ちぇっ!」ですか。

 しっかり手を握って出発です。

 神社前の階段を通り過ぎて、学校の到着……

 学校のある所には役場や公民館や老人ホームが集まってるんですよ。

 そんな中に、嫌な人形が立っていました。

 茶色い巨大な焼き物です。

「あ!」

 レッド、気付くとわたしの手を振り払ってダッシュ。

「なになに~」

 わたしと同じくらいの身長の「タヌキ」の人形。

 あの、おそば屋さんの前なんかに立っているアレ。

「ポン姉、これは?」

「こ、これはタヌキの人形です」

「ふわわ、タヌキさん!」

 ああ、もうレッド、タヌキの焼き物に抱きついてますよ。

 しかしなんでこんな所にコレが……

 わたしがよく見たら、学校の一部が「おそば屋さん」になったみたいです。

 看板も出てますよ「山のそば屋」だって。

「あらあら、パン屋さん」

「あ、村長さん、これは!」

 熟女村長、ニコニコ顔で、。

「うん、おそば屋さんをする事になって……学校の調理場をそのままね」

「そ、村長さん、本気ですかっ!」

「ええ……どうして?」

「これからは村長さんとは口をききません、敵です、仇です」

「は?」

 って、わたし、宣戦布告したのに、レッドは村長さんの手をにぎってます。

 わたしは村長さんを許しません。

 にらみつけ続けます。

「あの……ポンちゃん?」

「ふん、慣れなれしいっ!」

「このお店、ミコ……ちゃんの発案なんだけど……」

「えっ!」

「パン屋さんだけじゃバラエティないから、どうですかって……」

「ミ、ミコちゃんの発案!」

「だから怨まないでね」

「むむ……」

 わたし、おそば屋さんの看板を見て固まります。

 おそば屋さんが出来たら、パン屋さん廃れないでしょうか?

「おはようございま~す」

 あ、生徒が登校してきましたよ。

「ポンちゃん、おはよう……って……」

「あ、千代ちゃんおはよう……って……」

 千代ちゃん、じっとわたしを見つめてます。

 チラチラと視線が……わたしと焼き物で往復してるんですか!

「ポンちゃん……ククク!」

「ち、千代ちゃん笑いましたね?」

「そ、そんな、笑ってないよ」

「絶対笑ってます、モウ!」

 わたし、タヌキの焼き物をにらみます。

 なんですか「のほほーん」とした顔して。

 あ、生徒達が集まってわたしと焼き物を見比べてクスクス笑ってますよ。

 こんな焼き物、ブッ壊してやるんだから。

「みんな嫌いっ!」

 わたし、思い切りキック。

 でも、結構頑丈みたいでびくともしませんでした。

 わたしの足の方が泣ける痛さなの、とほほ。


「へぇ、おそば屋さんはミコちゃんのアイデアだったんだ」

「そうなんですよ、店長さん平気なんですか?」

 お昼のお茶、わたし店長さんに報告です。

 でもでも店長さんニコニコしながら、

「おそばか~、いいな~」

「て、店長さん、お客さんとられますよ、工事現場の人とか」

 って、店長さん頭上におそばの想像図浮かべています。

「コンちゃんはどー思っているんですかっ!」

「おお、なんじゃ、ポン」

 一緒にお茶していたコンちゃんに振ります。

 熟女相手に共同戦線張っているから、きっとおそば屋さんに……

「わらわもたまにはおそばが……」

「コラー!」

「なんじゃポン、さっきから怒ってばかりで」

「コンちゃんはわたしの味方でしょ!」

「なんでじゃ」

「村長の、熟女の敵ですよね」

「でも、おそばいいかも、冷たくてツルツル」

 ああ、コンちゃんうっとりした顔になっちゃいました。

 うわ、コンちゃんの頭上には「ざるそば」がモヤモヤしてるよ。

 わたし、立ち上がると足に痛みが!

「あいたた……」

「あれ、ポンちゃんどうしたの?」

「足、ちょっと傷めちゃって」

 店長さん、わたしの足をとって診てくれます。

 靴下ぬいでわたしもびっくり。

 すごい腫れてますよ。

 ああ、さっき焼き物蹴った時のですね。


 次の日の夕方です。

 もう、お客さんもはけちゃって、お店は静かなものですよ。

 駐車場でレッドと千代ちゃんがボール遊びしている声がよく聞こえますね。

 って、コンちゃんシロちゃんが一緒に戻ってきました。

 きっと配達帰りのコンちゃん、シロちゃんと合流したんでしょう。

 お店のドアが開いてカウベルがカラカラ鳴りました。

「おかえり~、一緒だったんだね」

 わたし、ニコニコ顔でお迎えしたつもりだけど、シロちゃん犯罪者を見る目してます。

 どうしてでしょう?

「本官、ポンちゃんを見損なったであります」

「え……なにをいきなり?」

「そば屋のタヌキをどこに隠したでありますか!」

「え?」

 わたしがポカンとしていると、コンちゃんが近付いてきて、

「ポン、おぬし昨日、そば屋のタヌキに危害を加えたであろう」

「ええ……蹴ったけど……」

 わたしの足の方が壊れましたよ、まったく。

「そのタヌキがいなくなったのじゃ!」

「え!」

「焼き物タヌキに恨みを持っていたのはポンだけじゃ!」

 今度はシロちゃんが、

「学校のそば屋のタヌキが行方不明であります」

「行方不明って焼き物だから動けるはずが……」

「動機があるのはポンちゃんだけであります」

「そ、そんな……」

 わたしが二人に詰め寄られたところで、「いいタイミング」でレッドと千代ちゃんがお店に入ってきました。

 千代ちゃん、まじまじと、

「朝、焼き物がなくなっていると思ったら……ポンちゃんだったんだ」

「ち、千代ちゃんっ!」

 レッド、わたしのしっぽをモフモフしながら、

「ポン姉、けってた~」

 うわ、途端にみんなの刺すような視線でチクチク。

 奥から出てきた店長さんが、

「話は聞いた……ポンちゃん今夜はお外でお休み」

 わーん、わたしは無罪なのにーっ!


 ああ、空には青い月がファンタジーな雰囲気。

 でもでもわたしはダンボールの住人です。

 山の夜は寒いのに……

 でもでももっと寒いのはわたしの心ですよ。

 わたし、焼き物蹴ったけど、どこかに持っていったりしていません。

 本当は「違う」って言いたかったんだけど、みんなの目、すごく冷たかったんだもん。

 なんだか「なし崩し」でお外でお休みです。

 むー、でも、本当にわたしじゃないのに。

 だれがあの焼き物を無き者(?)にしちゃったんでしょう。

 今度学校に配達の時、クンクンして臭いを辿って犯人捜査です。

 真犯人絶対見つけるんだから!

 もし、強大な悪の組織と出くわしたらどうしましょう。

 ふふ、わたしには護身用の打ち出の小槌あるんです。

 今だって、わたしの傍らに置いてあるんだから。

 って、だんだん眠くなってきましたよ。

 今日は早くお休みして、明日頑張るとしましょう。

 くくく……名探偵ポンちゃんなんだから!


「ふわ……よく寝た~」

 ダンボールでお休みは、案外清々しい朝だったりします。

 それに寒くて早く目が覚める……って、回りの様子が変!

 わたし、いつの間にかお布団で寝てるんです。

 まぁ……それだけだったら、たまに店長さんが運んでくれてって事もあったんですよ。

 でもでも、今日のお布団は……部屋は……部屋も違います!

 わ、わたしの全然知らない家ですよ、ココは!

「おお、目覚めたようじゃのう」

「!!」

 一人のおじいちゃんがヨタヨタ登場です。

 わたしの前にちょこんと座って深々とおじぎ。

「お待ちしておりました、我らが女王さま」

 えー!

 いきなりなんですか「女王さま」って!


「おお、目覚めたよですね」

「!!」

「お待ちしておりました、我らが女王さま」

 い、いきなりなにを言い出すんですか、このおじいちゃんは!

 しかし全然見た事のないおじいちゃんです。


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