衝動
カネも無く、満足のいく仕事にもありつけていない。
毎日を只々消化するだけの人間、生きている事と死んでいる事の間を彷徨う。
笹井亮介、19歳。
高校は途中で辞め、工場で働いている。
働いているといっても、高校中退の亮介が正社員の筈もなく。
不必要になればいつでも切られる人間、いや機械か。
重労働、しかしながら手取りで16万円の薄給である。
とにかくカネが無い。
遊びに行くカネも気力も無い。
疲れ果てて寝る、そして朝を迎える。
休日。
どこかへ行こうという気力も無く、ただ呆然とテレビを見る。
万札で作った首飾りをプレゼントされる、白スーツを着こなした男。
まるでそう、シンデレラを迎えに来たような格好。
現代版の王子といえば、こういう風になっているのか。
野暮な質問をするアナウンサー。
「給料は一体いくらくらいなんてすか?」
答えるホスト。
「正確には分からないけど、まぁ月で大体200万円くらいじゃねーの」
オイオイ、俺の年収違い稼ぎをたったの一ヶ月で稼ぐのかよ。
亮介はいつの間にか、食い入るようにテレビを見ていた。
これしかない、俺はこんな何もない日々を過ごす為に生きているんじゃない。
カネ、そうとにかくカネを稼ぎたい。
亮介の右手に握られる携帯電話、歌舞伎町に魅せられた男がまた一人。