カモミール
マフラーに埋もれた横顔は
いつもより少し大人に見えた
自販機の灯りが滲んでは軽く点滅する
君は何も言わずに
温かい缶コーヒーを僕にくれた
カモミールの匂いがした
僕の手のひら
伝うぬくもり
うまく言えないけど
もうちょっとだけ
このまま隣にいたいと思った
凍てつくような冬の片隅で
ぼやけて光った一輪
言葉と白い息が混ざりあって
僕の心は静かに音を立てていた
差し出された君の左手
僕が触れるまでもない距離に
白く浮かんでいる
溶けてしまうから言えない
ただ真っ直ぐな言葉が
空に舞い上がる粉雪みたいに
淡く儚くて
花弁を摘んでしまいたくなる




