第1章 現実への新しい視点
読んでくださってありがとうございます!
ここから本当の物語が始まります。主人公と「彼女」の出会い――それがすべての運命を動かし始めるのです。
濃く深い森。
最初に感じたのは――温もりだった。
それは全身に広がり、肌に染み込み、軽やかさで満たしていく。
だが、目を開けた瞬間、強烈な光が視界を切り裂き、思わず目を閉じた。
頭の中の闇は、少しずつ崩れていく。
手のひらにはざらついた土の感触、耳には風が葉を揺らす音、遠くには小川のせせらぎ。
――自分が誰なのか。ここがどこなのか。わからない。
吸って。吐いて。
体を起こし、ゆっくりと座る。
まるで初めて自分の体を知るかのように、手足を確かめる。
黒いシャツ、擦り切れたズボン、その上にはフード付きの薄いマント。古びてはいるが、不思議と馴染んでいる。
そして草むらの傍らに、それはあった。――筆。
拾い上げる。木製の軸はどこか懐かしい。だが、記憶は霞んで掴めない。
なぜ筆なのか? 自分は画家なのか、それとも……?
深く息を吐き、立ち上がる。
森は果てしなく広がり、巨大な樹々の梢が光を遮り、かすかに差し込む。
鳥の声と、自然のざわめき。人の気配はない。
行く先はわからない。ただ、足は自然と前へ進んでいた。
――自由。
誰にも止められず、誰からも問いただされない。森はただ受け入れてくれる。
数日が過ぎた。
食べられる実や木の実、草を見つけ、飢えをしのぐ。
動物の痕跡はあれど、襲ってくる者はいない。
小川を見つけては水を飲み、火を起こした。不思議なことに、その方法は体に染みついていた。
夜には筆を取り出す。だが、ただ空をなぞるだけ。何も起こらない。
――その時、彼女が現れた。
視線を感じたのは、姿を見た数時間も前だった。
まるで後ろから誰かが覗いているような感覚。
気づかないふりをして、慎重に歩く。
耳を澄まし、影を探す。
夕暮れ、太陽が沈みかけた頃――振り返った。
そこに彼女はいた。
背が高く、白い髪がフードからこぼれている。
体を覆うマントは、木々の影に溶け込んでいた。
しかし、最も異質だったのは――彼女を取り巻く光景だった。
星屑のような光の粒が、彼女の周りで舞っていた。
幾何学模様のように空に描かれ、そして静かに消えていく。
彼女は口元を上げ、首をかしげた。
――「そんなに見つめてどうするの?」
柔らかく、だがどこか嘲るような声。
言葉が出ない。
誰なのか。どこから来たのか。
そして――なぜこれほど現実離れしているのか。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!
グリディスとシェドウ、まだ始まったばかりの旅ですが、これから少しずつ世界の姿が見えていきます。
次の章もぜひお楽しみに!