表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

あどけない死

作者: 祁答院 刻

十歳の日の戦慄を忘れることはない


そのとき私は 遊び半分で息を止めていた

五秒 十秒

奇妙に澄んだ心境だった

十五秒 二十秒

フッと魔が差す 自分を実験している絵が浮かぶ

二十五秒 三十秒 三十五秒

苦しかった

四十秒

私は理性を欠いて 虫のように ただ何かと戦っていた 怖かった


五十一秒


息を吐き 続いて激しく呼吸する そして

ついさっきの恐慌が まちがいなく死の気配だったと確信した

頭に殴られた余韻がある


私はものをつかわなかった

凶器も劇薬もあやとりのろーぷも

では すべての危機の根源は 私にあった

如何なるキラーにも成し得ない ものを使わない殺人が まさしく 私には出来た

家の廊下の奥の暗がりに死神を見つけた気分だった


今 十五歳の夏を過ごす私は あの日よりずっと綺麗になった

息を止めるだけでは死ねないことを知り

死はもっと簡単だと もっと気まぐれだと気付いた

あたらしい花も 咲かせた


それでも ふと暗がりを振り返れば死はたたずんでいる

あの あどけない日よりも ずっと間近に…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ