サイコパスから神?!
ザマールの拠点に運び込まれた負傷者たちの中に、特に重篤な状態の女性がいた。彼女は有力な部族の長、アリー・アブドッラー・アリーミーの一人娘で、名前をリアーナといった。両脚を失い、全身に感染症が広がり、誰もが「助かるはずがない」と思うほどの瀕死の状態だった。
しかし、シンたちが持ち込んだ生命維持培養カプセルの中で、リアーナの体は奇跡的な回復を見せた。
ガブリエルがドローン越しに状況を報告すると、シンがすぐに行動を指示した。
「リアーナを最優先で治療しろ。彼女の回復が、この地域を掌握する鍵になるかもしれない。」
数日後、培養カプセルから出てきたリアーナの姿は、周囲の人々を驚愕させた。彼女は失ったはずの両脚を取り戻し、肌には艶が戻り、感染症の痕跡すら見えなかった。むしろ以前よりも美しく、凛とした姿に生まれ変わっていた。
リアーナの回復を知ったアリー・アブドッラー・アリーミーは、気持ちを抑えきれず、部下たちを引き連れてザマールの拠点を訪れた。
「リアーナ! 本当にお前なのか!足が…肌も…リアーナ」
言葉が震え娘を抱きしめるアリーの目には涙があふれていた。
「父上……私は生き返りました。神が私をお救いくださったのです。」
リアーナは穏やかに微笑んで父親を安心させた。
アリーはガブリエルに頭を下げ、感謝の言葉を述べた。
「これは神の御業だ! お前たちがもたらした奇跡だ! 部族一同、この恩を決して忘れない!」
ガブリエルは丁寧に答えた。
「私たちはできることをしただけです。どうか周りの人々にも手を差し伸べてください。」
アリーは感動し、力強く頷いた。
「もちろんだ。私たちの部族はお前たちに全面的に協力する!」
リアーナもまた、父の隣で深々と頭を下げた。
「この命は、あなた方に救われました。私も父と共に、全力であなた方に協力いたします。」
ガブリエルはその言葉に静かに頷いた。
「リアーナ、君の回復がどれだけの希望をもたらしたか、想像もつかないだろう。これからもその力を貸してほしい。」
リアーナは微笑みながら答えた。
「私にできることがあれば、喜んで。」
「死者が蘇った」「奇跡の治療」「神がザマールに降り立った」
そんな噂が周辺地域に広まり始めた。有力部族であるアリーミー一族の協力を得たことで、他の部族や住民も次々とガブリエルたちに心を開いた。
リアーナの回復がきっかけで、ザマール周辺の部族が結束し、次第にガブリエルたちの影響力は広がっていった。
「シン様、報告があります。」
ガブリエルがドローンを通じて状況を伝える。
「周辺部族の多くが我々に協力的になりました。特にアリー・アブドッラー・アリーミー長の影響力は絶大です。」
シンは画面越しにガブリエルを見据えた。
「いい結果だ。だが油断するな。協力的なうちに周辺を確実に掌握しろ。」
「承知しました。」
こうして、ザマールを拠点としたガブリエルたちは、地域の人心を掴み、着実に勢力を拡大していった。
ザマール周辺では、「神が降臨した」という噂が日に日に広がっていた。その発端には、ジャネットとダミルィ―の容姿が大きく関係していた。
ジャネットは身長167センチ、黒髪に青い瞳を持つ、モデル体型のアラブ系美女。彼女の整った顔立ちと気品ある佇まいは、初めて目にした者に「女神」を連想させた。
一方、ダミルィ―もまた同じく167センチの身長で金髪のウェーブロングを持ち、普段は夜会巻きでその美しさを際立たせている。青い瞳と引き締まったモデル体型を兼ね備え、堂々たる振る舞いが周囲を魅了していた。
この二人が医療活動や物資支援にあたる姿は、ザマールの住民たちにとって圧倒的な存在感を放っていた。
治療を終えて拠点に戻ったリアーナは、ジャネットとダミルィ―の姿を見るたびに深い感動を覚えていた。自分を救ったのがこの二人であると知って以来、リアーナは彼女たちに敬意と感謝を抱き続け、次第にそれが「崇拝」に近い感情へと変わっていった。
ある日、リアーナが彼女たちのそばで物資の整理を手伝っているとき、ジャネットがふと彼女に話しかけた。
「リアーナ、そんなに手を動かして疲れないの? 休んでもいいのよ。」
リアーナは慌てて首を振り、真剣な表情で答えた。
「いいえ、ジャネット様! 私はあなた方のお役に立ちたいんです。命を救っていただいた恩を少しでも返したいんです。」
その言葉にジャネットは少し困ったように微笑んだ。
「私たちはただ、できることをしただけよ。そんなに堅くならなくてもいいわ。」
だが、リアーナの目はまっすぐで揺るがない。
「それでも、私はあなた方を尊敬しています。私だけでなく、街の皆も同じ気持ちです。あなた方は……まるで神のようだと。」
ジャネットが言葉に詰まる中、そばで聞いていたダミルィ―が小さく笑い、彼女特有の余裕ある口調で言った。
「神だなんて、大袈裟ね。私たちはただの医者みたいなものよ。でも、その気持ちは嬉しいわ。」
リアーナを始めとする住民たちは、いつしか二人を「アッラー様」と呼ぶようになった。イスラム教における「アッラー」が神を意味することを考えると、これは敬意と畏怖を込めた表現だった。
ジャネットがそのことに気づき、リアーナに尋ねたことがあった。
「リアーナ、なぜ私たちをアッラー様と呼ぶの?」
リアーナは少し恥ずかしそうに答えた。
「あなた方は、まるで天から遣わされたかのような存在です。傷ついた者を癒し、困窮した私たちを救ってくださる。どうしても、そのようにお呼びしたくなるのです。」
ダミルィ―は笑いながらジャネットに目配せした。
「どうやら私たち、ずいぶんと高く評価されているみたいね。」
ジャネットは苦笑しながらも言った。
「でも、そんな風に呼ばれると、ちょっと気恥ずかしいわ。」
それでも住民たちは二人を変わらず「アッラー様」と呼び、敬意を示した。
リアーナはジャネットとダミルィ―の身の回りを甲斐甲斐しく世話するようになった。医療施設の整理や物資管理、さらには拠点内での調整役まで、彼女は自発的に働き続けた。
ある日、リアーナが物資の補充を手配している姿を見たジャネットが彼女を呼び止めた。
「リアーナ、無理しないで。あなたも少しは休んだ方がいいわ。」
だがリアーナは微笑んで首を横に振った。
「私は大丈夫です。お二人のお力になれることが私の喜びですから。」
ダミルィ―が腕を組みながら言った。
「リアーナ、あまり根を詰めると倒れるわよ。あなたが倒れたら、ここで困る人が大勢いるんだから。」
その言葉にリアーナは一瞬考え込み、素直に頷いた。
「わかりました。でも、少し休んだらまた戻ってきますね。」
「アッラー様」の存在とリアーナの尽力は、ザマール周辺でのガブリエルたちの影響力をさらに高めた。治療や物資支援を受けた住民たちが噂を広め、信頼と協力が次々と得られるようになった。
シンがブリッジで報告を受ける。
「あの二人が神と呼ばれる日が来るとは…本性を知ったら…おっと、今のは内緒だ。効率的に進むなら文句はない。リアーナを含め、うまく活用しろ。」
ガブリエルが応じた。
「承知しました。私たちは全力で周辺を掌握していきます。」
こうして、ザマールを拠点としたガブリエルたちの活動は、神話的な要素を伴いながら拡大していった。




