暗躍!2
イスラエル政府とロスチャイルド家が緊張の中で秘密会議を続ける中、「死の商人」の異名を持つイツハク・ゴルドノフが重々しい足取りで会場に現れた。彼に続いて極右政治家のイタマル・ベン・グビールとメイル・ポルシュも姿を見せる。三者の到着は会議室内にさらなる緊張をもたらした。
ゴルドノフは席に着くなり、大きな声で切り出した。
「もう限界だ!我々はここ数年でどれだけの損失を被ってきたか。兵器の需要は激減し、売上は底を突きかけている。それなのに、政府も、そしてロスチャイルド家も、なぜもっと動こうとしないのだ!」
「慎重になる必要がある。」ジェイコブ・ロスチャイルドが静かに応じた。「相手の力は未知数だ。迂闊に動けば、我々がその報復を受ける可能性もある。」
ゴルドノフはテーブルを拳で叩いた。「報復だと?我々が一致団結すれば、恐れるものなど何もない!ユダヤ人の団結力を甘く見るな。」
その言葉を受け、イタマル・ベン・グビールが立ち上がった。彼の表情には挑発的な笑みが浮かんでいる。
「ゴルドノフの言う通りだ。これ以上の躊躇は、我々の力を相手に見くびらせるだけだ。我々には『モサド』がいるではないか。彼らを使えば、相手の力を測ることなど造作もない。」
「さらに、『フリーメイソン』の協力も得られるはずだ。」メイル・ポルシュが続ける。「彼らのネットワークを活用すれば、我々は一気に優位に立てる。なぜそれを試そうとしない?」
ジェイコブは眉をひそめた。「フリーメイソンの協力を求めるのは最終手段だ。彼らを巻き込めば、事態はさらに複雑化する。」
議論が紛糾する中、ゴルドノフが新たな提案を持ち出した。
「ならば、まずは警告を与えてみてはどうか?我々の存在を示し、事を荒立てるつもりがないことを伝える。それで相手が引けば儲けものだ。」
「警告?」ジェイコブが目を細める。「だが、それで相手が反発し、報復してきたらどうする?」
「その時は戦うまでだ!」ゴルドノフが声を張り上げた。「我々は今まで数えきれない脅威に立ち向かってきたではないか。それが我々の誇りであり、生存の術だ。」
この提案に、ロスチャイルド家内でも意見が分かれた。
「警告を与えるのはあまりに軽率だ。」ギー・ド・ロチルドが反論した。「相手の力を見誤れば、我々が壊滅的な打撃を受ける可能性がある。」
「しかし、このまま手をこまねいていれば、じわじわと追い詰められるだけだ。」エブリン・ド・ロスチャイルドが苛立たしげに言った。「我々は既に深刻な損失を被っている。この状況を打破するにはリスクを取るしかない。」
ジェイコブは両者の意見を聞き、深く息をついた。「いずれにせよ、決定は急ぐべきではない。我々は慎重に計画を立て、可能な限り情報を集めた上で動く必要がある。」
それでも、警告を与えるべきだという意見が次第に優勢となっていった。ゴルドノフが口火を切る。
「我々が沈黙を守ることで、相手は我々を恐れているわけではない。むしろ我々の無策を侮っている可能性がある。警告は、我々がまだこの世界における力を保っていることを示す最良の手段だ。」
「だが、具体的にどのような形で警告を与えるつもりだ?」ガムリエル諜報相が尋ねた。
「モサドに動いてもらう。」ゴルドノフが答える。「彼らは相手の活動を妨害しつつ、我々の力を見せつけることができる。さらに必要ならば、フリーメイソンの資源を使ってさらに圧力をかける。」
ジェイコブは深い思案の表情を浮かべた。やがて静かに言った。「警告を与えるという考えには賛同する。しかし、それをどのように実行するかが問題だ。慎重に計画を立てねばならない。」
最終的に、イスラエル政府とロスチャイルド家は警告を与える方向で動き出すことを決めた。モサドが中心となり、相手の力を測りつつ、適切なタイミングで圧力を加える計画が練られることとなった。
「我々は決して恐れてはならない。」ゴルドノフが会議の締めくくりに言った。「団結する限り、我々に敵う者など存在しないのだから。」
その言葉に、全員が黙って頷いた。だが、それぞれの胸には異なる思惑が渦巻いていた。
イスラエルの極右政治家イタマル・ベン・グビールと、モサド長官ルーヴェン・シロアッフの会談は、薄暗い会議室で行われた。窓のカーテンは閉められ、机の上には簡素な書類だけが置かれていた。二人の表情は真剣そのものだ。
「時間がない。」イタマル・ベン・グビールは低く静かな声で言いながら、椅子から前のめりに身を乗り出した。「相手を躊躇させる必要がある。これ以上の損失は許されない。だが、ただの警告では効果が薄い。奴らの中核に打撃を与え、見せしめにするべきだ。」
シロアッフは冷静な視線を返しながら、無言のまま彼の言葉を聞いていた。その目にはわずかな警戒心が宿っている。
「見せしめか。」シロアッフが口を開いた。「その意味するところは理解しているが、具体的な標的は?」
「ニューヨークに出入りしている“強大な何者か”に関わる者たちだ。」ベン・グビールは声を潜めた。「奴らの中で最も目立つ存在を排除する。それで奴らに恐怖を植え付けるのだ。」
「簡単に言ってくれる。」シロアッフは腕を組み、冷静に応じた。「我々はこれまで何度も敵を排除してきたが、今回は違う。相手は単なる武装勢力でもテロリストでもない。奴らはその実態すら掴み切れていない。下手に動けば、イスラエル全体に報復が来る可能性もある。」
「恐れる必要はない。」ベン・グビールはきっぱりと言った。「イスラエルにはお前たちモサドがいる。そして我々は団結している。それに……」彼は薄く笑みを浮かべた。「報酬は用意している。」
シロアッフの目が鋭く細められた。「報酬だと?」
「そうだ。」ベン・グビールは椅子に深く腰を下ろし、足を組んだ。「この作戦が成功すれば、私は次期首相代理兼法務相のポストをお前に約束する。」
「首相代理と法務相の兼務?」シロアッフの眉がわずかに上がった。「それは大きな話だな。」
「そうだ。」ベン・グビールは自信に満ちた笑みを浮かべた。「だが、それだけの価値があるだろう?お前の手腕でイスラエルを守り、私の政治基盤を強固にする。そして我々が得るのは、国際社会におけるイスラエルの威信の回復だ。」
シロアッフは深く考え込むように眉間にしわを寄せた後、ゆっくりと立ち上がった。そして手を差し出した。
「分かった。その条件を受け入れよう。だが、作戦の計画と実行は全て私に任せてもらう。」
「当然だ。」ベン・グビールも立ち上がり、シロアッフの手をしっかりと握った。「成功を祈っている。いや、成功させてくれ。」
二人の握手は長く力強いものだった。その瞬間、計画の歯車が動き始めた。




