08 美味い飯は笑顔になる
村に帰りミラさんと別れ、村の皆と一緒にタスクボアを倒した場所へと戻り、手分けして村へと持ち帰る。
ルークはウォールベアを見て「もう珍しい素材を持ってきたのか!」と興奮していた。喜んでもらえて何よりだ。
素材は全て村に置いていくつもりだ。旅に持って行っても仕方ないし、世話になった村の皆に使って欲しかった。金は…先立つものがないと駄目だろ?これから旅をするんだ。無いよりも有った方が良い。受け取りは、ミラさんの騎士団のあるクオルってところで受け取ることになっている。この村からもそこまで遠くは無いし、予定では通るつもりだったから都合が良かった。
村の広場に戻ると、ミラさんは村の人と話していた。てっきり帰っているものだと思っていたが…疲れている様子だったし、明日帰るのかな?
すると、ミラさんと話していた飴のおばちゃんが話しかけてきた。
「この子、今夜泊る所がないんだって!あんたの家広いだろ?泊めてあげな!」
うおっ、いきなりなんだ!?
村に客が泊まるときは村長の家に泊まるのが普通なんだが…。
「村長はいないのか…?」
「そうなんだよ。【グノットの町】で今度祭りがあるだろ?それで呼ばれたんだってさ。知らんけど」
グノットというのはこの山から程近い場所にある町だ。俺の次の目的地でもある。
朝いた行商人の人も見当たらないし、連れて行ってもらったんだろう。
「それで、どうすんのさ!泊めてあげるんだろ、勿論」
確かに俺の家は広い。親父が飲み会が好きで、よく家で飲み会を開いていた。酔いつぶれた人もよく泊まってはいたが…。いくら広いとはいえ、一人暮らしの男の家に泊まらせるのは…。
「いくら何でも…俺が良いとしてもミラさんは嫌でしょう…?」
近くにいたミラさんに問いかける。
「いえ!!あんな素敵なお家に泊めていただけるなら凄く嬉しいです!!」
両手を胸の前で握り、目をキラキラさせながらそういう。
おいおい…貞操観念とかどうなってんだこの女性。
「じゃあ決まりだね!」
ニヤニヤしながらおばちゃんは言う。相変わらず押しが強い…。もう断れる雰囲気でもないし…。いつの間にか近くに来ていたルークも同じ顔をしている。こいつら……。
「はぁ…わかりました…」
ミラさんとおばちゃんは両手でハイタッチをしている。いつの間に仲良くなったんだよ…。
ミラさんはそういう事に疎そうだし、俺が変な気を起こさなければ間違いは起きないだろう…。まあ間違いなんて起きないがな!俺は紳士だし!
「後でここで宴会するから、手伝って行きな!」
「はいよー」
俺はいいんだが、ミラさんはどうだろうか。
「私も手伝って行きます!」
間髪入れず答えていた。…まあいいか…。
俺やルーク、村の男性は肉の解体に加わり、ミラさんや女性は解体した肉や、野菜を切っている。この村では見慣れた光景だ。俺や親父、他の狩人の人が大物を仕留めた時は、大体村の皆で宴会をしていた。
皆が準備をしている中で、俺とミラさんは座っていた。
「もう手伝わなくていいんですか?」
ミラさんは尋ねてくる。
「いいんですよ。これは獲物を捕らえた人の特権みたいなものなんで」
ミラさんは、へぇー、と言いながら皆の作業を眺めている。
「焼けた肉も一番最初に食べることが出来るんですよ」
「そうなんですね。私、タスクボアの肉が気になります!」
「食べたことないんですか。多少クセはありますけど結構イケますよ!」
「楽しみです!」
「俺はウォールベアですね。熊は美味しいですから」
「ウォールベアも美味しいですよ」
なんて話をしていると、肉が焼きあがったようで、ルークが持ってきてくれる。
「待ってました!」
俺は早速ウォールベアを食べてみる。……美味いな。瘦せていたとはいえ、これは美味い。肥えていたらもっと美味しいだろう。世の中には俺の知らない美味いものがまだまだあるみたいだ。
ミラさんはタスクボアを口にしていた。
「ん-!美味しいです!」
顔をほころばせながら言う。口に合ったようでなによりだ。
「そういや、今日行商人が来てただろ?なんか珍しい食材を買ったとか言っててさ。それも調理してたみたいなんだ。それも持ってきてやるよ。ちょっと待ってな」
ルークは戻っていく。
「珍しい食材ってどんなものなんだろうか」
「楽しみですね」
◇
少しするとルークが戻ってくる。
「お待たせ」
ルークがトレイの上にのせていたのはいたのは、白いものと黒い液体だった。
「何だこれ?」
この辺じゃ本当に見ないものだな。
「白いのがコメ?で、黒いのがショウユ?とかいうのを使ったソースらしい。東国のものだってよ」
「へぇー。ミラさんは見たことあります?」
「こ、これは…」
「…?どうかしましたか?」
「肉を食べるときに、これがセットで出てくるなんて…感激です!」
…気迫が凄い…。そんなに美味しいものなのか…。
「これはどうやって食べるんだ?」
ルークに聞く。
「コメはパンの代わりだってさ。そっちの黒いのは肉をそこに付けて食うんだって」
早速試してみよう。
俺は肉をソースに付けて食べてみる………美味っ!コメも続けて食べてみる……。おいおい、最高かよ。塩とコショウも良いが、これはこれで美味い。美味すぎて顔が自然と笑顔になる。ミラさんも同じだった。
「二人とも良い顔するなー。俺も食べてみようか」
ルークは俺の横に座り、同じようにして食べる。ルークは固まっていた。
「なあクレイグ」
「どうした?」
「お前、世界中を旅するって言ってたよな」
改めて聞いてくる。
「ああそうだが」
俺も返す。
「東国に行ったら…いや、絶対に東国へ行ってコレを買ってきてくれ!!!」
「おお…わかったよ」
コイツも気迫がすげぇな…。
俺も食事は好きだし、世界中の美味いものを食べるっていうのを、旅の目的の一つに加えるのもいいかもしれないな。
いいね!ありがとうございます!
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これからも応援よろしくお願いします!こちらも、ご期待に添えるように頑張りたいと思います!