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大剣使いの放浪記 ー創造の円環ー  作者: 秋凪勇輝
王都ヴァレンディア
63/64

63 王都到着!

 今日も馬車に揺られている。

 王都に近づくにつれて、行き交う人や馬車の量も増えてきた。


 ウィルは相変わらず馬車の屋根にいる。

 もうあそこはウィルの特等席といってもいいかもしれない。

 他のみんなは馬車の中で、それぞれくつろいでいた。

 話し声も静かで、揺れにももう慣れたものだ。


 時刻はそろそろ夕方。

 ……王都についたらまずは宿を確保しないとな。

 

 山合の道を抜けると、目の前の視界が開けた。

 陽の光がまぶしくて、思わず目を細めた。

 さわやかな風が頬に当たる。


「おーい、見えたぞー!」


 ウィルの声につられて前を見ると、目の前には大きな城塞都市があった。

 堅牢な防壁に、その向こうに見える大きな城。

 クオルよりもずっと大きいのは、一目で分かった。

 ……一体何人の人が暮らしているんだろうか。

 それくらい、今まで見たどの街とも規模が違っていた。


 都市の手前には大きな川と広がる草原。

 右手には雄大な山、左手には海。

 もう、今まで通ってきた光景とは全然違う。


 目の前に広がる光景に圧倒されていると、俺の横から顔を出したミラが話しかけてくる。


「クレイグは王都は初めて?」


「ああ。昔もここは通ったことがあるはずなんだけど、よく覚えていないな……」


「そうなの? それじゃあ、目一杯楽しまないとね!」


 ミラはぱっと顔を明るくした。


「そうだな。でも、今日はもう陽が落ちてきているから、明日かな?」


「そうね、そうしよ!」


 ミラは見るからに上機嫌だった。

 それを見て、つられて笑ってしまった。





 王都の門まで辿り着くと、そこには長い行列ができていた。

 荷馬車も旅人も、順番に呼ばれて身分や荷を確かめられている。

 橋の時点であれだけ厳しかったんだ。王都の門が簡単なわけないか。

 そう思いながら、カトレアさんと一緒に受け取った通行証に目を落とした。


「それ何?」


 覗き込んできたミラが聞いてくる。


「通行証だよ。リーンデル大橋にいた騎士に発行してもらったんだ」


「へぇ、そんなのまで用意していたんだ」


「あー……これはカトレアさんのお陰なんだ」


「そうなの?」


 ミラはカトレアさんの方を向く。


「本当は冒険者タグだけでなんとかなれば良かったんだけどね。

 あなたたちは事情が少し特殊だから」


「そうだったんですか。ありがとうございます!」


「どういたしまして~」


 



 通行証のお陰で、無事に門を通過することが出来た。

 カトレアさんには感謝しかない。

 もう一度お礼を言っておかないと。


「カトレアさん、色々とありがとうございました」


 俺はそう言って頭を下げた。


「いいっていいって。私も馬車に乗せてもらったし、お互い様よ」


 カトレアさんは笑みを浮かべた。


「カトレアさーん」


 ミラはすがるように声を上げて、カトレアさんに抱きついた。

 カトレアさんはミラの背中に、優しく手を回す。

 ……前にカトレアさんがミラに抱きついた時とは、まるで逆だな。


「そんな顔しないの。私はここでお別れだけど、ミラちゃんの活躍、期待しているわよ」


 ミラは少し間を置いてから、カトレアさんの体を離した。


「はい……。カトレアさんもお元気で」


「それじゃあ、みんな。またね!」


 俺たちがそれぞれ別れを告げると、カトレアさんは笑顔で手を振った。

 そして、人込みの中へと消えていった。


 ミラは、カトレアさんの消えていった方をまだ見ていた。

 俺はその背中に声をかけた。


「ま、ずっと一緒ってわけにもいかないさ」


「うん……」


 返ってきた声は、まだ沈んだままだった。

 まあ、無理もないよな……。

 

「よし!」


 ミラはそう言うと、自分の頬を軽く(はた)いた。 

 そして、こちらへと振り返る。


「もう大丈夫!」


 そう言って、ミラはいつものように笑ってみせた。


「それじゃあ、バリオスの寝床と、俺らの宿を探すか。

 早く見つかれば冒険者ギルドにも寄りたいし」


 俺が言うと、ミラはさっきまで落ち込んでいたとは思えないほどの得意げな顔を見せる。


「ふっふっふ、私に任せてもらおうかしら!」


「お、おう……。俺は全く分からないし任せるよ。

 クリスとウィルもそれでいいか?」


「私も分からないですし、ミラさんに任せます」


「俺も俺もー!」


「それじゃあ、いこっか」


 ミラはそう言うと、馬車へと乗り込んだ。


「バリオスは預けていかなくていいのか?」


「うん、大丈夫。それも当てがあるから」


「そうなのか。それじゃあお願いするよ」


「それじゃあ、バリオスお願いね。道は私が案内するから」


『おう』


 俺は手綱を握り、ミラの案内に従って王都の通りへ馬車を進めた。





 ミラの案内で、俺たちは王都の中を進んでいく。

 外から見た時よりも、実際に中を進んでみると、そのスケールに圧倒される。

 建物はほとんどが石造りだし、道幅も広い。

 二階建てや三階建ての建物が当たり前みたいに並び、人通りもかなり多い。

 道も入り組んでいて、見ているだけでも迷いそうになる。

 これは一人で出歩くときは、ちゃんと目印になるものを覚えておかないとな。


 大通りを進むと、道行く人たちは次々とこちらを見てきた。

 大人は驚いたような顔をし、小さな子供は親の後ろに隠れていた。

 やっぱりバリオスはどこでも目立つか……。

 当の本人は、気にする様子もなく歩いている。

 下手に話しかけて騒ぎになっても嫌だし、ミラの言う場所に着くまでは、このまま進んだ方が良さそうだ……。



 ミラの案内に従っていると、次第に人が少なくなり、立派な屋敷が増えてきた。

 ……この光景、見たことあるぞ。

 クオルの貴族街に入った時と、雰囲気がよく似ていた。

 俺は気になってミラに声をかけた。


「なあ、ミラ。もしかして、今向かってるのって……」


 俺がそこまで言うと、ミラは俺の横から顔をのぞかせる。


「あ、気づいた?」


「まあな。クオルの時と似たような光景だし。

 でも良かったのか? ミラはそういうの、隠したいって言っていただろ」


「うん、いいの。馬車は騎士団のお下がりだし、それに……お父様からも言われていたの。

 王都に寄った時は、タウンハウスを使ってくれって。使用人の人たちにも話は通してあるはずだから」


「そこまで話を通してあったのか……」


「そう、だから遠慮しないで」


 俺とミラの会話を聞いていたウィルが、話に入ってくる。


「え、ミラちゃんの別荘使わせてくれるの?

 すげー楽しみなんだけど!」


 ウィルは目を輝かせている。


「私たちもご一緒してよろしいのでしょうか?」


 今度はクリスも話に入ってきた。


「うん! 私たちはパーティーを組んでいるんだし、それくらい当然よ」


 ミラは胸を張って答えた。

 俺たちは、その好意に甘えることにした。





「着いたよー」


 タウンハウスに着くと、そこには立派な屋敷が建っていた。

 流石にミラの実家ほどではなかったが、それでも、普通の家とは比べものにならないほど立派だった。


「うおおぉぉ! すげえ!」


 ウィルはタウンハウスを見て大きな声をあげた。


「ウィルさん、ここではもう少し声を抑えたほうがいいですよ」


 クリスは周りに目配せをしながら、ウィルに言った。


「あー……そうだな。ついテンション上がっちまって」


 ウィルは恥ずかしそうに頭をかいていた。

 まあ、ウィルが大声を出すのも分かるかな。

 俺だってミラの実家を見た時は大声を出しそうになったんだし。



 バリオスを預けた後、ミラの案内で屋敷の中へと入った。

 ミラの実家ほどではなかったが、中は豪華な装飾がされていて、掃除も行き届いているようだった。

 使用人の人たちも、いつ、誰が来てもいいように掃除をしているんだろう。

 

 俺たちが挨拶をすると、使用人の人たちは快く案内をしてくれた。

 廊下を歩いていると、ウィルが話しかけてきた。


「なあ、クレイグ。ここに飾ってある壺っていくらくらいすんのかな?」


 ウィルは廊下に飾ってある壺を指をさして言う。


「どうだろうな……俺たちの一年分の稼ぎくらいじゃ買えないとは思う。

 下手に触って壊したりするなよ」


「そんなことしねーよ。

 それにしても、やっぱミラちゃんって、すごいところの子なんだな。改めて思うわ」


「そうだな。それでも、普通に接してくれって言うんだから、変に気を遣うなよ」


「分かってるって。俺は変わらねーよ」


 ウィルは笑顔でそう言うと、案内された部屋へと入っていった。

 さて、俺もさっさと荷物を置いて、ロビーへと向かうか。





 俺たちは荷物を置いた後、ロビーに集合していた。


「それじゃあ、冒険者ギルドに向かうか」


「うん。あ、あとね、今日は料理長が腕を振るってくれるらしいから、晩御飯は外で食べなくていいって言ってたよ」


「マジかよ! めちゃくちゃ楽しみなんだけど!」


 ウィルは大喜びでミラの話に食いついていた。


「いいのか? 今日来たばっかりで……」


 少し施してもらい過ぎじゃないだろうか?


「うん。『いつもは使用人たちの分しか作っていないから、お客さんの分を作れる』って言って喜んでいたよ。ほら」


 ミラはそう言って指をさした。

 その方向には、料理長らしき人がこちらを伺っていた。

 期待に満ちた目で、こちらを見ていた。


「……これは断れそうにもないですね」


 クリスは苦笑いにも似た表情を浮かべて言った。


「そうだな……」


 俺が頭を下げると、料理長は元気よく会釈をして去っていった。


「期待しててね!」


 ミラは笑顔で自信たっぷりに言った。

 これは晩飯が楽しみだ。





 俺たちは冒険者ギルドに着くと、いろいろと見て回っていた。

 クエストボードや、周りにいる冒険者、酒場の様子……。

 やっぱり王都は、どこにいても他の町とは比べ物にならないほど人がいるな。

 俺は少し人混みに酔ったみたいで、椅子に座ってみんなを待っていた。


 そこでふと、カウンターの方へと目が留まった。

 そこには青い髪を頭の横で縛った女性と、受付嬢の人が話していた。


「……今回も駄目でしたか」


「はい……」


「このままだと、降格もありそうですね……」


「……はい」


 今までは昇級しか考えていなかったけど、降格もあるんだな……。

 俺たちも降格しないように頑張らないとな。


 そんな風に考えていると、後ろからウィルに声をかけられる。


「こんなとこにいたのか。ぼーっとしてどした?」


「ああ、あそこにいる女性(ひと)が、クエストを失敗したらしくてさ。

 このままだと降格もあるって。俺たちも気を付けないとなって思ってた」


「ふ~……ん?」


「どうした?」


「……エマだ」


「え? エマって、宿屋の娘さんだったよな?」


「ああ、そうだ。ちょっと待っててくれ」


 ウィルはそう言って、女性へと駆けよっていった。

 声は聞こえないが、何やら話をしているみたいだ。

 すると、女性は走ってギルドを出て行ってしまった。

 ウィルは俺の方へと駆けよってくる。


「悪りぃクレイグ、俺、追いかけるわ!」


「おい――」


 俺が言い終わる前に、ウィルは追いかけて行ってしまった。


 はぁ……。とりあえず待つか……。

 ミラとクリスには俺から言っておこう。

 何もなければいいけど……。

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