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大剣使いの放浪記  作者: 秋凪勇輝
プロローグ ペルナ村
5/24

05 山歩き

 いろいろあったが、やっと山に入れるな。っと、その前に。

 俺は親父の墓の前に向かう。


 行ってきます

 

 よし、出発しよう。



「その大きな剣は何ですか?」


 俺の前にある地面に刺さった大剣をみて、ミラさんが不思議そうに尋ねてくる。

 その剣は、俺の剣よりも更に重厚な造りになっている。


「ああ、これはおや……父親の墓の替わりなんです。生前に大切にしていたので、そのままあの世まで持って行けるように、遺骨と一緒にしているんです」


 埋葬方法は、宗教や土地によって、土葬、火葬と色々あるが、俺と親父が信仰している宗教では火葬が一般的だったので、それに倣い火葬にした。


「…そうだったのですね。余計なことを聞いてしまったみたいです…」


 ミラさんは申し訳なさそうにしている。


「いえ、大丈夫ですよ。こちらこそ気を使わせてしまって申し訳ないです」


 こうなる事は予想できたか……ちょっと軽率だったな…


「とんでもないです」


 ミラさんは続けて言う。


「…私も、お墓参りをしていってもよろしいですか?」


 考えてもいなかった返しが来て、ちょっとビックリしてしまう。


「ええ、構いませんよ」


 ミラさんが参っている間待つとするか。

 ―――――お待たせしました、いえ、というやり取りをしつつ、ミラさんが言う。


「お父様思いのクレイグさんがいて、お父様も嬉しいでしょうね」 


「はは、そう思っていてくれると嬉しいですね」


 本当にそうだとありがたいな。


「さて、出発しましょうか」


「はい。よろしくお願いします」



 山に入る前に一応確認をしておく。


「山歩きは初めてですか?」


「いえ、訓練で何回も歩いたことあります」


「わかりました」


 それならそんなに心配することもないか。

 そこでふと思い出す。さっきルークに言われた『自分の基準でものを計るな』

 短い間だろうけど仲間だし、相談しておいて損はないだろう。 


「一応ミラさんの様子を見ながら歩きますけど、速かったり遅かったり、疲れたりしたら言ってくださいね」


 こんな感じで良いかな?


「ありがとうございます」


 良かったみたいだ。



 山に入り少し歩く。いつもの見慣れた光景だ。親の顔より……は流石に言い過ぎだな。

 そこで、ある植物が目に留まる。そういやコレがあったな。見慣れた光景過ぎて忘れてた。

 ミラさんも知ってるかもしれないが、一応聞いてみるか。


「ミラさん、この草知ってます?」


 俺は、横に大量に生えている草を指さして言う。


「いえ、初めて見る植物ですね。これが何か?」


 ここにはこんなに沢山あるのに…他の場所には無い草なのか?一応共有しておこう。


「この草の葉を靴の中に敷くと、疲れにくくなるんですよ」


「え!?本当ですか?」


 疑うような目で見てくる。そりゃそうだよな。



 この草…って言っても、名前は分からないんだよな。俺たちは【変な草】って呼んでる。

 葉が分厚くて、「弾力がある」とはまた違った、押しても戻ってくる変な感触。それでいて、簡単に切れる。

 俺は子供の頃、やんちゃなクソガキだった。そんな子供が、こんな変な草に興味を示さないわけがない。遊び半分で靴の中に入れて遊んでいたんだ。え?今でもクソガキ?そんなことないだろ!

 今となっては何でそんなことをしたのか分からない。ガキのすることは理解不能だ。

 その状態で、親父に付いていって山に入ったら、「今日は疲れてないのか」って、感心されるくらいだった。それで、もしかしたら…ってな。

 その後、親父も試しに使ってみたんだが、疲れにくかったんだ。

 腐らないし、植物なのに、潰れても水も出てこない。流石に使い続けているとへたってくるんだけどな。その時は新しいのに取り換える。加工も簡単だし、火で燃やして簡単に処理も出来る。

 本当に変な草なんだんよな。

 今じゃなくてはならない物になっているんだけど。



「俺も入れてるんですよ。……ほら」


 靴を脱ぎ、それを見せる。


「へぇー。本当なんですね」


「騙されたと思って一回試してみてください。」


「分かりました」


 俺のもへたってきてるし、新しくしておこう。

 俺は葉を4枚刈り取り、2枚をミラさんに渡す。

 葉に足を乗せ、解体用のナイフで足の形より少し大きめに切り、靴の中に入れ、履いてもずれないように、少しずつ調整していく。こんな感じで…と、ミラさんにナイフを渡す。同じようにミラさんも葉を切っていき、切り取った葉を靴の中に入れて履く。


「うーん…変な感じがします…」


「最初は感触に慣れないかもしれないですけど、履いてるうちに馴染んできますよ」



 またしばらく歩く。ペースも確認したが、丁度いいらしい。ここまで休憩もなく順調だ。このまま行くと、タスクボアの生息域まではもう少しだな。

 空を見る。太陽がもう真上だった。

 丁度良く座れるスペースもあるし、この辺で昼飯にしよう。


「タスクボアのいる場所まではもう少しなので、この辺で一旦休憩にしましょう。時間も丁度昼ですし」


 その後も、昼飯を食いながら他愛のない会話を交わす。

 仲間と旅をするってこんな感じなのかな。悪くない…というより、良い。最近は一人で入っていた山も、今日が初対面だった人とですらこれだけ楽しく感じるのなら、旅への欲求も高まる。

 ……依頼受けてよかったな。


 そういや、さっきの草はどうだろう?気に入らなければ捨てていってもらってもいいし。


「さっきの草の具合はどうですか?」


 気になったので聞いてみる。


「クレイグさんが言ってた通り、最初は違和感がありましたけど、今はもう大丈夫です。それに、いつもより疲れてないですね。少し感動しています」


 そこまでの反応を貰えるとは思ってなかったな。


「お役に立てたならよかったです」


「騎士団でも導入を検討してもいいかも…」


 ええ!?そこまで!? 



 すごいな。あの変な草。

2024/11/06 父親の剣の描写を加筆修正しました。

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