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49 同じ方向かよ!

 農場に戻ってきた俺たちは、依頼主の男性に成果を話していた。

 赤髪の男性は、別の討伐依頼のついでに、たまたま見かけた森ネズミを仕留めたらしい。

 二人の話を聞いていると、どうやらこの町の人みたいだ。

 かなり親しげな様子だしな。


「後は、ギルドに報告するだけだな」


「そうだな。仕留めた魔物はここに置いておいていいのか?」


 足元のネズミを見下ろしながら尋ねる。


「ああ。報告すれば、後はギルドの職員が処理してくれるぞ。

 お前、もしかしてこういうのは初めてか?」


「そうなんだ。薬草採取くらいしかしたことなくてな。

 討伐依頼はこれが初めてなんだ。等級も白だしな」


 俺は首から下げていたタグを見せる。

 俺がタグを見せると、赤髪の男性は目を丸くする。


「へぇ~。そんなに厳つい武器担いでんのにな!」


 俺の大剣を見て笑いながら言う。

 かなり陽気な人だな。


「いやぁ、ごめんごめん。お前面白いやつだな。

 俺はウィル。お前は?」


「俺はクレイグだ」


 差し出された手を取り、握手する。


「んじゃ、ギルドに報告しに行こうぜ!」


 そう言って俺の肩を叩く。


「ああ、そうだな」


 俺たちはギルドへと向かった。





 冒険者ギルドに報告すると、査定係らしき人がギルドから出て行く。

 俺たちは査定が終わるまで、時間を潰すことにした。


 いい時間だし、酒盛りを始めている人もいる。

 料理のいい匂いと、楽しそうな話し声も聞こえてくる。

 


 ウィルは気さくに話しかけてくる。


「そういや、いつ冒険者になったんだ?」


「もうすぐ一か月だな」


「へぇ、もうすぐ一か月なのに、討伐依頼は初めてなのか。

 それもまたおかしな話だな。そんなに薬草採取が好きなのか?」


 そう言ってからかい気味に聞いてくる。


「いや、そういう訳じゃないが、たまたま受ける機会がなくてな。

 清掃や薬草採取しか出来なかったんだ」


「ふーん、そうなのか。

 お前、相当腕が立ちそうなのにな」


 ウィルは俺の腕や胸を見ながらそう言う。


「ありがとな。ウィルの方こそ弓の腕は良いんだろ?

 結構な距離からネズミを仕留めていたしな。等級は?」


 俺がそう言うと、さっきまで明るかったウィルの顔が少し暗くなる。


「まあ……そこそこってところだよ。等級も黄色だしな」


 そう言って、タグを見せてくれる。

 黄色ってことは、俺たちよりも二等級上か……。先輩だな。


「十分良いんじゃないのか?

 ギルドの説明じゃ、中級冒険者だろ?」


「ま、上を見たらきりがないからな。

 俺なんて、そこら辺に転がってる石ころみたいなもんだよ」


 なんか、明るいかと思ったら急に暗くなるし、よく分からない人だな。


「クレイグは……仲間はいるのか?」


「ああ、いるぞ。

 俺たちは三人パーティーだ。ウィルはどうなんだ?」


「俺は一人さ。誘われることはあったけど……どうにもな。

 お前たちは仲良くやれよ」


 ウィルはそう言い、俺の肩に手を置く。

 その目はどこか悲しげだった。



「お待たせいたしましたー」


 ギルド職員が声をかけてくる。

 受付をしてくれた人とは別の人だ。


「おう、待ってたぜ」


「あれー? ウィルさん、パーティーを組んだんですか?」


 人懐っこそうな女性のギルド職員はそう言う。


「ちげぇよ。たまたま一緒になっただけなんだ」


 ウィルと職員さんは楽しそうに話をしている。

 俺は職員さんと目が合う。


「――あ、すいません。報酬を渡すのが先でしたね。

 これがウィルさんの分で、これが……クレイグさんの分ですね!」


 それぞれの前にトレーが置かれる。

 俺の方は……千二百ルア。十二匹倒したから間違いないな。

 ウィルの方は百ルア。

 他の獲物は倒してなかったのかな?


「おー、ありがとな」


 ウィルは笑顔で受け取る。


「今日はあの一匹だけだったのか?」


「そうだな。他の討伐依頼を受けていたんだけど、獲物が見つからなくてな。

 まあこんな日もあるさ」


「そういうものなのか。覚えておくよ」


 職員さんは一礼してから戻っていった。



「さて、報告も済んだし、帰るかな」


 ウィルが立ち上がる。

 俺もミラたちを待たせるわけにもいかない。

 ウィルに続いて立ち上がった。


「それじゃ、ここまでだな。

 また会ったらよろしくな!」


 そう言って拳を突き出してくる。


「ああ、こちらこそ」


 俺はその拳に拳を合わせる。

 ウィルの顔が笑顔になる。

 俺も自然と笑顔になった。


 俺たち二人はギルドを出る。


「それじゃあな」


 ウィルが別れを告げる。


「ああ、またな」


 俺も別れを告げる。

 それぞれが思い思いに歩みを進める。


 ―――――。


「同じ方向かよ!」


 ウィルが声を出す。


「そうみたいだな」


 俺たちは自然と笑い合う。


「さっきのやり取りいらなかったじゃん!

 お前、ホント面白いやつだな」


 ウィルは笑いながら俺の肩を軽く叩く。


「いや、今回のはたまたまだろ」


「んじゃ、とりあえず行くか!」


 ウィルの声で、俺たちは改めて歩みを進めた。





 宿に戻るまで、ウィルとはずっと一緒だった。

 途中、「いつまで付いてくるんだ?」「お前こそ」というやり取りが何回かあった。

 その度に笑い合っていた。


 宿屋街も、そろそろ端だな。


「んじゃ、本当にここまでだな」


 俺は泊まる予定の宿屋の前に立つ。


「おー! ここに泊まる予定だったのか。

 ちなみに、俺の家は隣だ」


 隣には普通の民家があった。


 俺たちはまた笑う。


「ここは良いぞ。安いし、飯も美味い。俺も後で食いに行く予定なんだ」


「そうだったのか。一緒にどうだ?」


「……仲間いるんだろ? 悪いからいいよ」


 ウィルはまた影を落とす。

 こんな表情をされたら、ここで強引に誘っても悪いな……。


「……分かった。それじゃあな」


 俺はウィルと別れた。



 宿に入ると、ミラとクリスはもうロビーで俺を待っていたようだった。

 俺が一番最後だったか。


「クレイグ遅いよー。私お腹すいちゃった」


 ミラは少し頬を膨らませて言う。


「すまん、初の討伐依頼で時間配分をミスった」


 俺がそう言うと、「いいよー!」と、笑顔で言ってくれた。

 ミラも本気で怒っているわけじゃなくて良かった。


「クレイグさん、何か良いことありましたか?

 いい顔をしていますよ」


「そう、私も思った!」


 クリスとミラはそう言う。


「ああ、たまたま冒険者の人と一緒になってな。

 いろいろと教えてもらっていたんだ」


 俺がそう言うと、クリスは笑みを浮かべる。


「女の人ですか?」


 クリスがそう言うと、ミラの肩が少し跳ねる。


「いや、男だ。どうかしたか?」


「いえ、こういったことを聞くのはお約束かと思いまして」


 いつものひょうひょうとした感じで言う。

 お約束ってなんだよ……。


「ね、ミラさん?」


 クリスはミラにも聞く。


「――? ええ、そうね?」


 ミラはよく分からないといった感じだ。

 ……なんなんだ、このやり取り。


「とりあえず、着替えてくるよ。

 もう少しだけ待っていてくれ」


「りょーかい」

「分かりました」


 俺は部屋へと戻った。





 俺は着替えを済ませ、ロビーへと戻る。


「お待たせ」


「遅いよー。ほら、行こ!」


 ミラは待ちきれないとばかりに急かす。

 クリスは俺たちを見て笑っていた。


「――お!」


 宿の入り口を見ると、ウィルがいた。

 

「おーい、ウィル!」


 俺がそう言うと、ミラとクリスもそちらを見る。


「おークレイグ。さっきぶりだな」


 ウィルはこちらへと近づいてくる。


「この二人が、クレイグの仲間か?」


「ああ、そうだ。ミラとクリスだ」


 俺は二人を紹介する。

 二人は軽く自己紹介をしていた。

 ウィルも二人に軽く挨拶する。


「んで、ミラちゃんがお前の彼女か?」


「違います」


 ミラはまたも、即答する。


「お、おう……」


 ウィルはミラに気おされたようにたじろぐ。


「でも、こういうのはお約束だろ?」


 ウィルが言うと、クリスはウンウンとうなずいていた。

 え、これもお約束なの?


「んじゃ、俺は行くわ」


 ウィルがそう言って立ち去ろうとすると、クリスが口を開く。


「ウィルさんは一緒に食べないんですか?」


「そうそう、クレイグが仲良くなった人でしょ?

 私たちも、お喋りしたいよねー」


 クリスとミラは顔を合わせて「ねー!」と言い合っていた。

 ……仲いいなこの二人。

 俺は二人を見て思わず笑う。


「……だそうだ」


 俺がウィルにそう言うと、少し困った顔をした後に答える。


「そうか……それじゃ、一緒させてもらおうかな!」


 言い終わった後には、晴れやかな顔をしていた。

 結果的に、少し強引に誘ってしまったけど……これで良いよな?


 俺たちは四人で酒場の方へと向かった。

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