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47 リーダーって柄じゃないけど

 晴れ渡った空の下、今日もバリオスは馬車を引いている。

 バリオスが言っていたように、あの後、雨は降らなかった。

 流石というか、なんというか……かなりありがたい存在だ。

 これからの旅路でも、頼りにさせてもらおう。



 今、御者台にはミラが座っていて、バリオスと楽しそうに話している。

 俺の向かいにはクリスが座っている。


 そういや、昨日は俺のことについてあまり話してなかったな。


「クリス、昨日話しそびれたんだけどさ……」


「どうしたんですか?」


 クリスは首を傾げる。


「俺、悪意が見える体質なんだ」


 俺がそう言うと、クリスの頭の上には、疑問符が浮かんでいるように見えた。

 そりゃそうだよな。

 いきなり言われても、「なんだそれ」としかならないだろう。


「それは、魔術ですか?」


「いや、俺は魔術は使えないんだ。

 その代わりに別の力があって……って言えばいいのか?

 自分でもよく分かっていないんだ」


「それは興味深いですね! ぜひ聞かせてください!」


 クリスもミラと同じような反応を見せる。

 こういう感じで来てくれると、こちらとしても話しやすい。

 俺は、簡潔に話すことにした。



「――そうでしたか。

 魔術が全く使えない代わりに……と」


 俺はうなずく。


「ミラさんが言う通りですね。

 私もクレイグさんと同じ能力を持った方には出会ったことがありません。

 ……むしろ、喜ぶべきではないでしょうか?」


「そんなもんなのかな?」


「だって、特別じゃないですか。

 変な相手に引っかかりにくそうですし」


 クリスはそう言って微笑む。


「そうそう! クレイグは少し考えすぎる癖があるからね」


 ミラもクリスと同じ意見か。

 ……二人には、話してよかったと改めて思う。


「そうか……。そうだよな」


 俺は胸が軽くなった気がした。



「そういや、クリスはどの魔術が使えるんだ?」


「それ、私も気になるー」


 ミラも、御者台から半身をこちらに向ける。


「私ですか? 私は――」


 そう言って、右手を上げる。


「――シェイド」


 上げた右手からは、黒い靄が出てくる。


「珍しい。クリスは闇魔術なのね」


 それを見たミラが言う。


「ええ。そうですね。

 強力な攻撃ができるわけではないのですが……目くらましくらいには」


「ミラと同じようなものか?」


 俺がそう言うと、クリスの右手に纏っていた靄が消える。


「ミラさんも、そこまで魔術が使える方ではないのですか?」


「そうなの。私は水なんだけど、これくらいかな」


 ミラは「ウォーター」と唱えると、かざした手から水が出てくる。

 それを見て、クリスはニッコリと笑って言う。


「水魔術は旅には必要不可欠でしょう。

 戦場でも、水魔術を使う方は重宝されていましたよ」


 それを聞いて、ミラは照れたように笑っていた。





「そろそろスタッグヘルムね」


 ミラの声で、俺は御者台の横から外を覗き込む。

 さっきまでよりも、人の往来が増えている。

 段々と、町の外壁のようなものも見えてきた。


「スタッグヘルムは、確か狩猟が盛んな町だったよな」


 俺はミラに聞く。


「ええ、そうよ。

 弓が使える人も多いから、もしかしたら仲間になってくれる人もいるかもね」


 そう言って、ミラは微笑む。


 俺たち三人は近接攻撃主体だ。

 いろんな所に行くには、ある程度長距離で攻撃できる人も必要だろうな。


「ああ、そうだと良いな」


 俺たちの様子を見て、クリスも微笑んでいた。





 町に入る時に、バリオス関連でまたひと悶着あったが、クリスが衛兵を見事に丸め込んでくれた。

 精霊教の牧師ってのが大きいんだろうな。


 リーンデル王国は、国教こそ決まってはいないが、ほとんどが精霊教徒らしい――と、親父が言っていた。

 他の国では、また事情が違うんだろうな。


 無事に町に入れて一安心だ。

 バリオスは厩舎に連れていき、そこで別れる。


「後は宿を探さないとな。

 それが終わったら、クリスの冒険者登録か」


「そうね。グノットほど人はいないけど、宿は早めに確保しておきたいね」


 グノットでは人が多くて苦労したからな。

 ミラが言う通り、早めに見つけておいた方がいいだろう。


「宿選びはミラに任せるよ。俺はどこだって眠れるからな」


「そうですね。私もこういったことには疎いもので……」


 俺とクリスはそう言う。


「私が決めて良いの?」


 俺とクリスは同時にうなずく。


「そう……分かった。任せて!」


 ミラはそう言って張り切っている。

 俺たちは宿を探すことにした。





 俺たちは宿屋街を歩く。

 ここまで来ると、冒険者らしき人もチラホラ見える。


 ミラは色々と宿屋を見ている。

 見ただけで分かるものなのかな?

 グノットの時もミラに宿屋を選んでもらっていたが、快適な宿だったしな。


「こことかどうかな?」


 ミラは、宿屋街の端にあった宿の前で止まる。


「良いんじゃないか?

 ここには、泊まったことがあるのか?」


「いいえ、泊まったことはないんだけど……なんとなく良さそうだなーって」


 ミラは目を輝かせている。

 なんとなく、俺の家に来た時のミラを思い出す。

 クリスも異論はなさそうだ。


「分かった。それじゃあ、入ろうか」


「うん!」





「いらっしゃーい」


 宿に入ると、元気のいい女将さんの声が聞こえる。

 

「三人なんですけど、空いていますか?」


「空いてるよー。何部屋にする?」


 女将さんにそう言われて、部屋割りを決めていなかったことに気づく。


「そうだな……俺とクリスが同じ部屋。ミラは一人部屋でいいか?」


「ええ、大丈夫ですよ」


「私もいいよー」


 あっさり決まってしまった。


「うちでは酒場もやっているから、夕食も食べられるけど……どうする?

 うちで食べてもらえると、部屋の値段も安くなるよ」


 俺たちは顔を見合わせる。


「良いんじゃないですか?

 ご飯屋さんも探さなくて済みますし」


 クリスがそう言うと、ミラもそれに賛同するようにうなずく。


「それじゃあ決まりだね」


 俺たちは料金を払う。

 女将さんの言う通り、グノットで泊まった時よりも安い値段だ。

 なかなか商売上手な女将さんだ。

 

「これが部屋の鍵ね。

 各部屋にシャワーも付いているから」


 俺たちは鍵を受け取り、部屋へと向かう。


「それじゃ、荷物を置いたらロビーに集合な」


「分かったー」


 そう言って、ミラは部屋の中に入っていった。


 俺たちも部屋に入ると、そこはグノットに泊まった時と同等の部屋に見えた。


「やっぱりミラに頼んで正解だったな」


「ええ、そうですね。

 これほどの部屋が、あの値段で借りられるとは思いませんでした」


 俺たちはミラに感謝しつつ、荷物を置いて部屋を出た。



 俺たちは、女将さんに冒険者ギルドの場所を聞いた。

 女将さんは冒険者についても詳しかった。

 なんでも、娘さんが冒険者らしくて、今は世界中を回っているそうだ。

 最近は連絡もよこさないって愚痴っていたな。

 ……俺も定期的にルークに連絡を入れるか。





 俺たちは冒険者ギルドへとやってきた。

 受付でクリスの冒険者登録を済ませ、タグが出来上がるまでの間、周りの様子を窺っていた。

 ミラが言っていた通り、弓を持っている人が結構多い。

 ……けど、みんなパーティーを組んでいるようだった。


「どうするかなー」


「どうかしたの?」


 ミラが聞いてくる。

 思わず口に出してしまっていたようだった。


「あーいや、弓持ってる人が多いけど、みんなパーティー組んでるなーと思ってさ」


 ミラも周りを見てみる。


「本当ね。やっぱり王都まで行かないとパーティーに入ってくれそうな人はいないのかな?」


 俺たちが考え込んでいると、クリスが口を開く。


「そんなに急ぎではないのなら、焦る必要はありませんよ。

 何事も余裕を持っていた方が、気持ちも楽になりますしね」


 クリスはゆったりした口調でそう言う。


「……そうだな。

 まだまだ旅は始まったばかりだし、そんなに気負う必要もないか」


「それもそうね」


 ミラも同意してくれたようだ。


「そういや、スタッグヘルムの滞在はどうする?

 俺は一週間くらいがいいかなーと思ってるんだけど」


「うん、それくらいで良いんじゃないかな?

 私も街を見て回ったりしたいし」


 ミラが答える。


「クリスは?」


 俺はクリスにも話を振る。


「リーダーにお任せです」


 クリスはいつも通りニッコリ笑って言う。

 なんか、リーダーって呼ばれるのに慣れないんだよな……そういう柄でもないし。

 それでも慣れていくしかない。

 二人から、頼りにならないと思われるのも嫌だしな。


「それじゃあ、とりあえず一週間にしようか」


 俺がそう言うと、二人は笑顔でうなずく。

 

 俺は、改めてリーダーとして自覚していくべきだと、心に刻んだ。

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