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40 魔物襲来

 俺は勢いよく教会のドアを開けた。

 急いで教会に入ると、ダリアさんが目を丸くしていた。


「どうしたんだい、そんなに慌てて」


 その声を聞き、クリスさんも出てくる。


「魔物がこの村に近づいています。早く避難を!」


 俺は焦っていた。


「少し落ち着いてください。何があったんですか?」


 クリスさんのその言葉で、少し冷静さを取り戻す。

 俺は一度深呼吸をする。

 頭の中が少し冷える。


 ――そして、バリオスとの会話を伝えた。





「分かりました。とりあえず、村の皆を避難させましょう。

 この教会は石造りですし、一番安全です。

 村のみんなには、ここに集まるよう伝えてください」


 クリスさんは眉一つ動かさず、すぐに話を整理し始めた。

 さっきまで変な人だと思っていたのが嘘みたいに、声も落ち着いている。

 指示を出す声を聞いているうちに、胸のざわつきが少しずつ引いていった。


 説明し終えると、ミラも出てきた。

 説明している間に、ダリアさんがミラを呼んできてくれていたみたいだ。


 ダリアさんは教会に残って村人の安全確保。

 俺とミラ、そしてクリスさんが村の皆に避難を促すことになった。


 俺はバリオスの方へと向かう。

 バリオスは立ち上がって待っていた。


「バリオス、ありがとう。

 魔物はあとどれくらいで村に来そうだ?」


『個体差はあるが、もう少しだ。

 思ったよりも移動が速い。数もそれなりにいる』


「どの方向から来る?」


『向こうだ』


 バリオスは鼻先で指す。

 あの方向は……昼間にクリスさんがいた森の方か……。

 少し不安がよぎるが、今は――


「分かった。まずは村の人たちを避難させる。

 ……その後、魔物を討伐するのを手伝ってもらえるか?」


 俺はバリオスにそう言う。


『おう、任せろ。あいつらに好きにさせてたまるか』


 ――心強い。

 この前の魔術のこともあるが、最初に会った時に感じたあの威圧感。

 そんなバリオスの横で、俺は少し震えていた。


「……頼りにしてるぜ」


『おう』





 身支度を終えたミラと合流し、家を回っていく。

 クリスさんは一足先に教会を出たようだった。


 家を訪ねていくと、思ったよりもすんなりと聞いてくれた。

 俺の薪割りやミラの料理教室、バリオスに子どもたちを乗せたことなど、思っていたよりも村の人たちに受け入れてもらっていたらしい。

 村の人たちは、急ぎ足で教会へと向かって行った。


 俺はミラと合流した。


「あと一件か……」


 俺は、最後の家に向かいながらそうつぶやく。


「そうね、急ぎましょ」


 俺たちは最後の家へと急いだ。





「ごめんください」


 ミラは扉をノックしながら言う。

 すると、家の中から返事が聞こえ、おじいさんが出てくる。


「なんだい?」


 おじいさんは不機嫌そうな声で答える。


「村に魔物が迫っています。今すぐに避難をお願いします」


 ミラは冷静な声でそう言った。


「魔物~?」


 おじいさんは訝しそうにこちらを見る。


「ええ、そうなんです。他の方たちはもう避難しました。

 おじいさんも避難をお願いします」


 ミラがそう言うと、おじいさんは笑い飛ばした。


「この村に魔物~? そんなことあるものか。

 さあ、わしはもう寝るから帰ってくれ」


 そう言って、俺たちを帰そうとする。

 ミラは説得を試みるが、おじいさんは聞く耳を持ってくれない。

 次第に、ミラの声も焦ったものに変わっていく。

 俺は痺れを切らして、声を上げる。


「おい、じいさん。いい加減にしろ!」


 そう言ったところで、ミラに制止される。

 おじいさんは怒り出す。


「いい加減にするのはあんたたちだ!さっさと帰って――」


 その時、森の方からかん高い声が聞こえる。

 おじいさんはその声に驚き、その場で尻もちをついていた。

 俺はおじいさんを急いで担ぎ上げ、近くで待機していたバリオスに強引に乗せる。


「ミラ、早くじいさんを!」


「わかった!」


 ミラとバリオスは急いで教会へと戻る。

 おじいさんは何かを言っていたようだが、俺の耳にはもう入らなかった。


 俺は急いで家の中に入り、他に人がいないか確認する。

 幸い、まだ中の灯りは消えていなかった。

 部屋を一つずつ手早く見て回る。

 全部屋を見終え、人がいないのを確かめてから、外へ飛び出した。

 




 外へ出ると、いくつかの影が見えた。

 三、四……いや、もっといる。

 月明かりに照らされた緑色の皮膚に、子供くらいの小さな体。

 手には武器を持っている。


 ――ゴブリンだ。


 俺は背中に背負っていた剣を構える。

 すると、こちらを見るや否や襲いかかってくる。


 動きは直線的。

 俺はタイミングを合わせ、剣を振る。


 剣を伝わり、手に切り裂く感触が伝わる。

 ゴブリンは真っ二つになっていた。


 襲いかかってくるゴブリンを次々と片付けていく。

 ……おかしい。


 普通これくらい倒していたら、他のゴブリンは怯むはずだ。

 どうなってんだ?

 倒しても倒しても、次々と襲いかかってくる。


 いくら何でも数が多い。

 十までは数を数えていたが、そこから先は数える気にもならない。


 ――ッ!


 足に鋭い痛みが走る。

 視線を落とすと、短い刃が脛に刺さっていた。

 刃の根元で、ゴブリンがいやらしく笑っている。


「――おらぁ!!」


 頭部に蹴りを入れる。

 ゴブリンの頭が吹き飛び、体はその場に倒れる。


「はぁ……はぁ……」


 その後は、ひたすら剣を振るうことしか考えていなかった。

 気が付くと、辺りにはゴブリンの影はなくなっていた。


「――教会は!」


 俺は痛みを我慢して教会へと急いだ。





 教会へ戻ると、そこには無数のゴブリンの死体があった。

 剣で突いたような跡、踏みつぶしたような跡……。

 ミラは息が上がっている。

 バリオスは鋭い視線で辺りを見回していた。


 ――良かった……。


 俺は、少し体の力が抜ける。


「クレイグ!」


 ミラの声が聞こえる。

 俺は手を上げて応えた。


「無事なようで何よりだ」


「クレイグは!?大丈夫!?」


 ミラは俺のことを心配してくれていた。

 足に痛みはあるが、まだ戦える。


「ああ、大丈夫だ。

 バリオスもありがとな」


『これくらい当然だ』


 バリオスの方は息も上がっていない。

 流石ウマガミ様だな。


「あとどれくらいいそうだ?」


 そう聞くと、バリオスは辺りを見回す。


『……もう反応はないな』


 バリオスの体に握りこぶしを当てる。

 俺はホッとして頬が緩むのが分かった。

 ミラも安堵の表情を浮かべていた。



「そういえば、クリスさんは?」


 俺は二人に聞く。


「こっちには来ていないわ。そっちにもいなかったの?」


「……俺も合流はしていない」


 顔が冷たくなり、血の気が引いていくのが分かる。

 ミラも顔が青ざめていくのが分かった。


「バリオス、クリスさんのいる方向は分かるか?」


『多分……あっちだ』


 バリオスが指した方向は、やはりあの森の方向だった。


「俺が見てくる。ミラとバリオスはこのままここにいてくれ」


「……分かった。無理はしないでね」


 二人に見送られながら、俺は森へと急いだ。





 森へ入ると、いくつものゴブリンが横たわっていた。

 近寄って調べると、喉元が切り裂かれている。

 ……一撃。それも、全てのゴブリンが同じ状態だ。


 クリスさんがやったのか?

 もしそうだとしたら相当な手練れだ。


 俺は先を急ぐ。

 ゴブリンの死体は、森の奥まで続いていた。

 焦りで、嫌な想像までしてしまう。

 クソッ……!どこにいるんだ!?


 ――その時、男性の悲鳴が聞こえた。


「クリスさん!?」


 俺は声のした方向へと急いだ。





 声のした方向へ進むと、そこには――月光に照らされたクリスさんが立っていた。


 ――!?


 クリスさんの足元には、男性が横たわっている。


 俺の足音で、クリスさんがゆっくりとこちらへ向く。


「おや、見つかってしまいましたか」

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