表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大剣使いの放浪記  作者: 秋凪勇輝
プロローグ ペルナ村
4/24

04 木こりEND

 工房の中で待っていると、ミラさんが思ったよりも早く戻ってきた。

 どこかに預けていたであろう荷物も持ってきている。


「お待たせ…いたしました」


 走ってきたのか、少し息が乱れている。


「おかえりなさい。思ったよりも早かったですね」


 俺は少し笑いながら言う。

 


 戻ってきたミラさんは、剣も盾も装備していて、それは騎士然としたものだった。

 てか、盾がでけえ。構えたらほとんど体が隠れるくらいじゃないか‥?

 それにしても、鎧を着て、こんなに大きい盾まで装備した状態で走ってくるとは‥騎士ってのは噓ではなさそうだ。


「おかえりなさい」


 ルークもあいさつする。そして続けざまにこう言う。


「先ほどは不快な思いをさせてしまって、すいませんでした」


 ルークはそう言い、頭を下げる。俺も一緒になって頭を下げた。

 ミラさんが出て行ったあと、二人で悪いことをしたな。と、話し合っていて、謝ることにしていたのだ。

 するとミラさんは目をまん丸にしてキョトンとしていた。が、俺たち二人に向き直ってこう言った。 


「いえいえ。知らない人が訪ねてきて、素性も明かさないままお願いをするなんて、疑われても仕方ありません。こちらこそ申し訳ありませんでした」


 ミラさんも思うところがあったようだった。

 その後、少しだけ「いえいえこちらこそ」と言い合っていた。知らない人が見てたら、なんだこいつらって思うだろう。

 心のわだかまりが解けて気分が楽になる。やっぱりこういうのは早めに解決すべきだよな。


 さて、出発…しようと思ったが、タスクボアを狩る目的を聞いていなかった。流石にそれくらいは聞いてもいいよな?


「ミラさん、さっき聞きそびれたんですけど、タスクボアを狩る目的を教えてもらってもいいですか?もちろん、言えなければ言わなくても大丈夫なんですが」


「はい。えーっと、上司からタスクボアの討伐の試験を出されていまして、その証として牙を持って来いと言われたのです」


 この手の質問は普通に答えてくれるのね。素性に関するものはダメって事か。


「分かりました。それでは、そろそろ出発しましょうか」


「はい!!!!」


 随分と気合の入った返事だな。山に入るのはいつもの事だが、俺も気合を入れていくか!



 村の中を通り自分の家に向かって歩き出す。

 朝会った行商人の人にまた挨拶をする。

 畑に出ている村の人にも挨拶をする。また飴ちゃんを貰ってしまった。ミラさんも貰ってたし、一体何個持ってるんだ…?



 山を登っていくと、少し開けた場所に出る。

 さて、家に着いたし、余計な荷物は置いていこう。


「寄りたいって言っていたのはここですか?」


「はい、そうです」


 ミラさんは家を見回して感心しているようだった。街のほうとは家の様式が違うし、珍しいのだろう。



 俺もこの家は自慢だ。せっかくならいい家に住みたいと言った、家づくりガチ勢の親父と一緒に、一年かけて建てた家。と言っても俺はちょっと手伝っただけだが。外観も、俺と親父が住んでいるとは思えない程、小洒落た造りになっている。一言でいうと、おしゃれな山小屋だ!

 また話がそれてるって?いいじゃん、自慢くらいさせてくれよ!



「素敵なお家ですね」


 やばい、顔がにやける。また気持ち悪い顔になってそうだ。


「ありがとうございます」


 ミラさんに顔を見られたくないので、顔をそむけて答える。

 何とか耐えたぞ!


「ミラさんも、必要のないものは置いて行っていいですよ」


「それでは、お言葉に甘えて」



 家の中に入る。懐かしくもなんともない。さっき出てきたばかりなんだから。


「へぇー!家の中も素敵ですね!木のいい香りもするし」


 ミラさんは目を輝かせながら家の中を見ている。


「あはは、褒めすぎですよ」


 おい、不意打ちだって。また顔見れなくなるじゃないか。


「どこでもいいんで、好きなところに荷物置いていいですよ」


「ありがとうございます!」


 荷物を置いた後も、家の中が気になるのか、いろいろ見てるな。

 そろそろ限界だ。


「そろそろ行きましょうか」


 耐えられなくなり、そう切り出す。


「わかりました」


 やっと逃れられるぜ。



 家の外に出て、最終の確認をする。


「タスクボアの特徴とかは分かっています?」


 一応は確認しておかないとな。


「大きい猪の魔物…としか…」


 戦うのも初めてなのか。


「分かりました。それじゃあ―――」



 待たせたな、やっとタスクボアの説明だ!


 タスクボアとは、牙のでかい猪の魔物だ。

 体もでかく、パワーもある。好戦的で、そこそこ凶暴な魔物。

 基本、突進しかしてこないが、首の振り回しにも気を付けたい。

 突進を回避して、横からの攻撃がメインの攻撃になるだろう。

 猪の習性上、一回見た場所の付近にいる可能性が高い。毎日山に入っているから、大体の生息場所は把握している。俺にとっては比較的見つけやすい魔物だ。今の季節は春先だけど、猪は冬眠しないしな。

 


「とまあ、そんな感じです」


「わかりました。ありがとうございます」


 こんなにテキトーな説明でも律儀にお礼されるとは。


「何か所かはアテがあるので、近いほうから順番にみていきましょう」


 ウンウンと頷いている。


「まあ二人ならなんとかなるでしょう」


 俺もこの剣の初陣だし、張り切っていこう。

 ん?ミラさんは微妙な顔をしている。どうしたんだ? 


「あのー……」


「どうかしましたか?」


「申し上げにくいのですが、一応この討伐は、試験として課されているので、私一人でやりとげたいのです」


 そういえば試験だって言ってたな……完全に勘違いしてたぜ。


「あ、ああ。そういえばそうでしたね」


「すいません…」


 ミラさんはなんともばつの悪そうに言った。


「じゃあ俺は、危なくなったら手を貸すって事でも大丈夫ですか?」


「はい。よろしくお願いします」


 こればっかりは仕方ないか。邪魔するわけにもいかないし。

 


 ミラさんが悪いって訳ではない。協力するって決めたのは俺だ。


 この件が無事に終わっても、また何かあって出発できなくなるとか……




 そんなことないよな!?




                             ―木こり END―



                  Fin

ネタです…まだまだ続きます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ