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21 まるで城塞

 クオルが段々と近づき、その姿の全容が明らかになってくる。


 堅牢な壁、その周囲には堀。街の裏手には左右に聳える雄大な山。

 ここまでくると、街というよりは城塞だな。

 街の大きさもグノットよりも明らかにでかい。流石に王都には勝てないとは思うけど。



 街の入り口に着くと、そこには街に入ろうとする人達が列をなしていた。

 バリオスは走るのを止めてゆっくりと歩きだす。

 流石に人が多いな。


「一応並んでおいた方が良いか?」


「そうね、割り込むと他の人たちにも迷惑が掛かるかもしれないし」


「急いでいるって言ってたけど大丈夫か?」


「ええ。バリオスのお陰で早く着くことが出来たし、問題ないわ」


 そう言って、バリオスを撫でていた。


『俺に任せておけって言ってただろ』


 バリオスは自慢げに答えていた。



 俺たちはバリオスから降り、列に並ぶことにした。



 人の行き交いが多いな。俺の住んでいたペルナ村とは大違いだ。これだけ厳重に警備するのも頷ける。

 列に並んでいる間も、後ろに並ぶ人が後を絶たないし、街から出てくる人も多い。


 それにしても高いよな…。

 俺が堅牢な壁を眺めていると、ミラが話しかけてくる。


「壁が気になる?」


「ああ。俺の住んでいた村には無かったし、グノットと比べても高いからな」


 俺は思っていたことを口にする。


「これは街の裏手にある森のせいね」


「森?山じゃなくて?」


 街の左右には山があるのは分かるんだが、森もあるのか?


「ええ。山もあるけど、森の方が問題ね。山の合間にある森には凶暴な魔獣が沢山いるから。ウォールベアもその内の一頭よ」


 ウォールベアはここの魔獣だったのか。

 ミラが知っていたのも頷ける。


「そうだったのか。クオルの騎士団は、いつもそんな危険な魔獣と戦っているのか?」


「そうね。元々この街が出来たのは、危険な魔獣を外に出さない為だからね。だから高くて丈夫な壁が必要だったって事なの」


「そういう事だったのか」


 なるほどな。

 この森の魔獣はウォールベアしか知らないが、あれだけの魔獣が沢山いるなら、この堅牢な造りにも納得がいく。

 あの強さの魔獣を日常的に相手にしているなら、クオルの騎士団…もちろんミラも相当な実力だってことも分かる。

 流石クオルを守っている騎士団と言ったところか。


 俺もペルナ村で狩りをしていたが、魔獣との本格的な戦闘はウォールベアが久しぶりだった。魔獣の数も少なかったし、ミラから学ぶことも多いだろう。分からないことはどんどん聞いていこう。



 そんな風に街の歴史を聞いていると、俺たちの前に待っていた人も少なくなっていった。

 もうそろそろ俺たちの番…というところで俺たちの方に衛兵が駆け寄ってくる。


「おい!その馬は何だ!」


 バリオスを見てそう言う。


 あーやっぱりそうなるよな。

 門まではまだ距離があるが、これだけの大きな馬だ。遠くからでも分かる異様な大きさだし、不審に思っても仕方がないだろう。


「こいつは―――」


 俺が言いかけたところで、ミラが遮る。


「お疲れ様。今戻ったわ」


 衛兵は目を丸くして驚いていた。


「これは…ミラ様、おかえりなさいませ。ご無事で何よりです」


「ええ。いつもきちんと守っていてくれて安心だわ」


 ミラはそんな風に衛兵をねぎらっていた。


 それにしても、明らかに俺たちよりも一回りは上だろう年の衛兵に、これだけの態度を取れるなんて…。

 ミラは騎士団の中でもかなり立場は上なようだ。

 ルークも上等な装備をしているって言ってたっけな。


「この馬なら大丈夫よ。私が保証するわ」


「はっ。わかりました。そちらの者は?」


 衛兵は俺を見て言う。


「私の客人よ。身元もしっかりしているから安心して」


 俺は一応会釈をする。


「かしこまりました。…それにしても、列に並ばれているとは思いませんでした。ミラ様ならすぐにお通しすることも出来たのですが…」


「いいの。他にも並んでいる人もいるし、今は並んでいたい気分だったの」


「そうだったのですか。それではまた後程」


 そう言い衛兵は門の方まで戻っていった。


「流石に警備は厳重だな」


「大きな街だと人の出入りも多いし、良くないことを考える人もいるわ。そういう人が簡単に入れないように警備しているわね」


 ペルナ村とは大違いだな。あの村は誰でもフリーパスだからな。

 

「それにしても、ミラは騎士団でも偉い方だったんだな」


「そうよ。見直した?」


 得意げな顔になって褒めてと言わんばかりな感じだ。

 こういう所が少し子供っぽいとは思うんだが…それを言うと怒られそうだから素直に褒めておくか。


「ああ、見直したよ」


「そうでしょ、そうでしょ!」


 ミラは上機嫌になっていた。

 さっき衛兵と話していた人とは同一人物とは思えないくらいだな。

 俺は少し笑っていた。



 徐々に俺たちの前に並んでいた人が減っていき、遂に俺たちの番が来た。

 ミラが身元は保証すると言ってはいたが、規則上必要だということで冒険者のタグを衛兵に見せた。

 身元を明らかにするときは、こういうのは便利だな。冒険者になって良かったと思える。

 ミラのお陰もあって、街にはすんなり入ることが出来た。


「それじゃあ、騎士団の方に行くから付いてきて」


 俺とバリオスはミラに連れられて街の中を歩く。


 街の中に入って思うが、本当に大きな街だな。広場や、噴水なんかもある。

 人の数も多いし、店の数も多い。グノットの繁華街が小さく見えるほどだ。

 店からは威勢のいい声が聞こえてくるし、活気があっていい街だな。


 店や、家の建築様式は、基本レンガ造りで、その他にも一般的な木造建築がいくつかある。

 俺の家みたいな丸太造りの家はどこを見てもないな。だからこそミラには憧れがあったのかもな。



 街の中を歩いていると、ミラは少なくはない人に声をかけられる。

 その一人ずつに笑顔で応えていた。

 こういう対応が出来るからこそ、声をかける人も多いのだろう。ミラの人望が見て取れる。


「――人気者だな」


 俺はそう声をかける。


「私は当たり前のことをしているだけよ。街の皆がいるからこの街も活気があるし…そう思うと私たち騎士団がしっかりしなくちゃって思うわ。街の皆が笑顔で暮らせるようにしないとね」


「良い考えだな。誰かを守るっていうのは」


「そう?私は物心ついた時からこういう風に思っていたから」


「俺は守ってもらう側だったからな」


 親父がいる時はずっと守ってもらう側だっかたらな。

 これからは独り立ちしないとな。旅も始めたし。


「そうね…それじゃ、これからは私を守ってね!」


 不意にそんな言葉を掛けられる。

 もちろんミラは仲間だし、守る対象だ。パーティーのリーダーだし、当然だろう。


「ああ。任せておけ」


「頼りになるー!」


 そう言って俺の腕に抱きついてきた。

 予想外の事で、少し戸惑ってしまう。


『なんだ?柄にもなく照れてんのか?』

 

 街に入ってから黙っていたバリオスにもそんなことを言われてしまった。

 鋭いツッコミありがとう。

 喋ると不審がられるだろうから目だけでバリオスに応える。


(あんまり茶化すなよな)


『ふふふ。お前も可愛いところがあるんだな』


 俺とバリオスが目で会話していると、それに気付いたのかミラが「なになに~ふたりしてどうしたの?」と、声をかけてくるが「なんでもないよ」と返しておいた。


 俺にだけ聞こえるように話していたのか…こいつめ。



 しばらく歩いていると、入口とは反対側の門に着いた。


「ここだと街から出てしまうんじゃないか?」


 俺は疑問をミラにぶつける。


「この先が騎士団のある場所なの。危険な魔獣が街に入らないようにもう一つ壁があって、騎士団や冒険者ギルドがある場所と居住区で別れているの」


 徹底して街に魔獣が入らないようにしているんだな。危険な魔獣がいるからそうせざるを得なかったんだろう。しっかりした街だな。


 ミラはまた衛兵に話を付けて、門を開いてもらっていた。


 門をくぐった先には、先ほど通った居住区に比べて遥かにでかい建物が建っている。

 騎士団の訓練場や、宿舎か何かだろうか?冒険者ギルドなんかもあるだろうし、後でミラに聞いておくか。


 その建物の中でも一際綺麗な建物に向かって歩き出す。


「その先にあるのが騎士団なのか?」


「そうね。騎士団に着いたら少し待ってもらうことになるけど…大丈夫?」


「ああ、問題ないよ。色々と報告なんかもあるだろうし、バリオスと待っているよ」


「そう、申し訳ないわね。すぐに済ませるから!」


 道すがらそんな話をしていると、あっという間に着いてしまっていた。



 三度衛兵に話をして、門を通る。

 その中でも大きな建物の前に着き、ミラと別れる。


 待っている間に辺りを見回してみる。

 立派な庭園が広がっていたり、騎士たちの声の聞こえる方には訓練場らしきものもある。

 反対側は宿舎かな?


『人間てのはすごいな。こんな建物を造っちまうなんて。俺では考えられないな』


 そう、バリオスに話しかけられる。

 今は人もいないし、少しくらい話をしていても大丈夫かな。


「俺たちから見れば、霊獣ってのも凄いもんだぜ?」


『そんなもんか』


「そんなもんだよ」


 二人でそんな風に和んでいると、声を掛けられる。


「こんにちは」


 声をする方を見ると、庭師の恰好をした男性が立っていた。年は四十代程だろうか?

 手にはバケツと、大きな剪定バサミ。肩には脚立も担いでいる。ガタイが良く、大柄だ。身長も俺と同じくらいだな。

 騎士団の庭師も訓練してんのか?って思うほどだ。


「こんにちは」


 俺も挨拶を返す。


「お客様かな?」


「ええ、そんな感じです。今は人を待ってます」


「そうなのか。それにしても大きな馬だね。魔獣と見間違うほどだよ」


 なかなか鋭いなこのおじさん。

 元騎士団だったりするのだろうか?


「ええ。ちょっとしたきっかけで連れることになりまして…」


「ふむ」


 男性はバリオスをまじまじと見ている。

 ちょっと気まずいな…。ミラ早く来てくれ!


「お待たせ!」


 ちょうどいいタイミングでミラが帰ってきてくれた。…助かった。


「おかえり、ミラ」


 男性がミラに向かって言う。


「ん?ただいま!お父様も一緒だったのね。丁度良かったわ」


 え?この人が父親なのか。全然似てないんだが。

 呆気に取られていると、男性が口を開く。


「自己紹介がまだだったね。私は騎士団団長のポール・ガーランドだ」





 ………は?

2025/10/15 総帥→団長へと変更しました。

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