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大剣使いの放浪記  作者: 秋凪勇輝
プロローグ ペルナ村
2/24

02 旅立ちの日 2

1の続きです

 ルークはカウンターの奥の方へ行き、ソレを持ってくる


「よっと、重てえんだよなーコレ」


 成人女性の身長くらいありそうな長さのモノ。

 カウンターの上に置くと ドンッ と、重い音が鳴る。


「リクエスト通りに作っておいたぜ」


「ありがとな。早速見てもいいか?」


「いいぜ。てか、お前の剣なんだから好きなだけ見ろよ」


 ルークは笑いながら言う。

 言われればそうだなと俺もつられて笑う。


 布を取ると、素人目でも分かるくらいの立派な大剣だった。

 俺の注文した剣は、一般的なロングソードを大きくしたような形で、幅広く分厚い両刃の剣だ。

 叩き切ることに特化した剣。

 意匠は全くない。

 無骨だが洗練されていて、機能性重視って感じだ。

 

 やばい、顔がにやけてしまう。気色悪い顔になってないだろうか。


「クレイグ…気持ち悪い顔してんぞ」


 そんなストレートに言わなくてもいいんじゃないですかね?



「ほら、調整いるかもしれないから、さっさと外行って素振りしてこい」


「そうだな。んじゃ、ちょっと行ってくる」


 剣を取り外に向かう。ルークも一緒についてきた。


 両手で剣を構える。

 グリップも手に吸い付くように馴染む。重さも丁度良く、頼んだ通りの調整になっているようだ。


 縦振り、横振り、斜め、突き。


 片手でも振ってみる。


 まるで自分の手足の様に、思った通りに動かせる。振るたびに、フォン、フォンと風を切る音が心地いい。



「どうだ?振った感じ、違和感とかないか?」


「大丈夫だ。寧ろこれ以上ないくらいに馴染んでる。最高の剣だ」


「ハハハ。それは良かった。そこまで言ってもらえると、鍛冶師冥利に尽きるってもんだ」


 腕を組んで、嬉しそうに頷いている。


「お前の頼みで作っておいてこう言うのおかしな話だけど、よくそんなモノ振り回せるな」


 呆れたように言ってくる。


「日々の鍛錬の成果かな」


「鍛錬ねぇ……」


 ルークは俺と親父の鍛錬を思い出しているようだった。

 毎日丸太で素振りしてりゃこれくらい屁でもなくなるもんさ。


「まあ、俺もあれが普通じゃないのはわかってるつもりだよ」


 俺も思い出しながら言う。


「最初にクレイグの家に遊びに行った時も凄かったよな」


「ああ、あれか。丸太でぶっ叩かれてたやつ」


「そうそう。あの時はさすがに目を疑ったぜ」


 防御力を鍛えるっていう理由でよくぶっ叩かれてたな。今でこそいい思い出になるが、当時はかなりきつかった。そのおかげで痛みの耐性はかなりのものだと思う。


「さて、これくらいでいいかな。本当にありがとな。代金は‥」


 言いかけたところでルークが口を開く。


「いいって。それより、前に言ってた話覚えてるだろうな?」


「旅先で珍しい素材を見つけたら持ってくる、って話だろ?覚えてるよ。本当にそんなのでいいのか?手に入れられる保証もないんだが…」


 剣を依頼しに来た時の話だった。


「バカだなー。それだけお前に期待してるし、実力も認めてるってことだよ!」


 俺の肩をバシバシ叩いてくる。


「俺の夢は、まだ誰も見たことのない素材で武具を作る事だ。クレイグの夢は冒険者になって世界中を見て回る事だろ?そんなお前が持ってきてくれたら最高じゃねーか!」


 ガハハと笑い飛ばす。



 俺の旅の不安もなんのその。ルークの態度をみてると、こっちも気が楽になる。

 こういう時のルークの存在はありがたい。一発で不安も吹き飛ぶってもんだ。


「絶対に持ってきてやるよ!」


 俺もルークに応えて言う。


「その時は一番最初に作ってやるからな!」


 俺とルークは拳を合わせて笑い合う。



「調整も要らないみたいだし、そろそろ行くのか?」


 ルークが尋ねてくる。


「そうだな。今日中には町の方まで行って、冒険者の登録まではしておきたいかな」

 町までは距離もあるし、今出て行って宿も取りながら登録もってなると丁度くらいだ。


「また歩いていくのか?」


「ああ、そのつもりだよ」


 はぁ、とため息をついて呆れてこっちを見ている。


「お前、ほんと規格外だよなぁ。普通の人は行商人の人に乗せて行ってもらうぞ?」


「だってなぁ、歩いた方が早いし‥」


「すげえ奴だよ。だからこそ活躍に期待してるってところもあるんだがな。ただ‥」


 そこまで言って言い淀む。


「何だ?」


 ん-と考えながらルークは続ける。


「今後どうなるかは分からないけど、仲間も出来るとは思うんだよ。そういう時、お前基準でものを計るとおかしくなりそうでな。そういう時はちゃんと仲間と話し合えよな」


「今の話みたいな馬車での移動とか?」


「そうそう。他にもいろいろありそうだ。心にとどめておけよ」


「アドバイスありがとな」


「いいって。なんか父親みたいな事言ってしまったな」



 心配してくれていることは分かっているさ。


 いつもの仕返しをしたくなってきたな。ちょっとからかってみるか。


「パパ~!」


 と言って抱きついてみる。

 ぐえぇえと潰れたカエルのような声をあげる。



「あ」


 声をした方を見ると、いつの間にか見知らぬ女性が立っていて、目がバッチリ合ってしまった。

 すると、取り繕うような笑顔を見せながらこう続ける。


「あ、あなたがクレイグさん……?」



 やっべぇ、どうしよう。絶対勘違いしてるぜコレ。

 

2024/11/06 クレイグの武器の描写を加筆修正しました。

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