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19 やっぱり目立つな

 俺たちは森を抜け、町に帰っていた。

 今の時刻は夕暮れ前。みんなも帰る時間だろう。


 周りを見ると、ちらほらと町に帰る冒険者の姿が見える。

 数日前はもっと多かったのかな?

 今日の朝に冒険者ギルドに行ったときは、町に来た初日程の人は居なかったように思ったけど…。


 そういえば、宿はちゃんと取れるようになっているのか?

 最近はずっと商工会でお世話になっていたから宿の状況は分からない。

 飯屋は比較的早い時間に入っていたから問題はなかったんだけど…。


 でも、まずはバリオスの馬具の購入だな。

 改めてバリオスを見てみる。

 やっぱりでかいな…。バリオスの背は俺の身長よりも高い。普通の馬の背は、俺の胸の位置くらいなんだけどな。

 良く言えば荘厳。悪く言えば厳つい。

 道行く冒険者たちも、こちらを窺っているのが分かる。

 魔物に間違えられる可能性もあるだろう。町に入れない可能性もある…か?

 

 俺の視線に気付いたのか、バリオスが話しかけてくる。


『どうしたんだよ。そんなにじろじろ見て』


「いや、改めてみてると本当にでかいなって思ってさ。魔物に間違えられる可能性もあるなって」


 現に、俺たちは森の中で会って間違えたくらいだ。俺たちがついているとはいえ、間違えられてもおかしくはないだろう。


「そうね…。それじゃ、町に着いたらクレイグとバリオスは外で待っててもらえる?私が手綱を買ってくるから」


 手綱があればそう簡単に疑われることもないか。今の状態では何も付けていないから余計に目立つし。


「売っている店は分かるのか?」


「ええ。溝掃除しているときに見つけたから大丈夫よ」


 今まで乗馬に関心がなかったから探してすらなかったな…。


「それじゃ頼むよ」


『任せたぜ!』


「任せて!バリオスにぴったりなのを選んできてあげる」


 ミラは自信ありげにそう答え、バリオスの顔を撫でている。バリオスも心地よさそうに撫でられているな。


「ミラは、乗馬はしたことあるのか?」


「少しだけどね。上手いとは言えないんだけど」


 俺は馬具の良し悪しは分からないし、ここはミラに任せておくのが良いだろう。


『乗馬なら俺に任せな。上手く乗れるように指導してやるよ』


 そんなことも出来るのか!俺も乗れるようになりたい!


「頼もしいわね。よろしく!」


「俺も乗れるようになりたいから、よろしくな」



 話をしながら歩いていると、あっという間に町についてしまう。


「それじゃ、私は買い物に行ってくるからバリオスをよろしくね」


「ああ、わかったよ」


『頼んだぞー!』


 ミラは荷物を降ろし、町の中に入っていった。

 俺たちは町の入り口、防壁の外でミラを待つことにする。

 立っているのも変なので、俺たちは適当な場所に座る。


「あまり喋っていると怪しまれるから、最低限だけ喋るようにしような。変な騒動にもなりたくないし」


『わかったぜ』



 ミラを待っている間も冒険者たちが俺たちの前を通っていく。

 みんなバリオスを見て驚いた表情をしている。


 溝掃除で一緒になった人たちも、俺たちの前で一旦止まる。

 挨拶をし、軽く説明をするとみんな関心していた。


 人が去るとバリオスが話しかけてくる。


『やっぱり目立つか?』


「そうだな。ここは町の入り口だし、余計に目立つみたいだな」


『場所、変えるか?』


「これからは一緒に旅をするんだ。これくらいなんともないさ」


『そうか。ありがとな』


 これからもその風貌が故に好奇の目で見られることはあるだろうし、バリオスには余計な気を遣わせたくない。

 一緒に旅をする仲間なんだから当たり前だな。



「お待たせー!」


 その声とともにミラが帰ってきた。


「お帰り」


『おう。待ってたぜ』


 ミラの手にはバリオス用に買ってきたであろう手綱が握られている。


「合うようなサイズが少なくて時間が掛かっちゃった」


 ミラは早速バリオスに近づき、装着している。

 手慣れた手つきで付け終えると、さっきまでと違ってちゃんと躾られた馬に見える。

 バリオスの体毛に合った黒いものだ。

 これなら町に入っても問題ないだろう。


「ありがとな。いくらだった?」


「五百ルアだったわよ」


「へえ、意外と安いんだな。それじゃ、半分ずつ出そうか」


「分かったわ」


 俺はお金を取り出し二百五十ルアを渡す。


『すまねえな』


「いいのよ。流石に鞍は高くて買えなかったんだけどね。バリオスに合うようなのも無かったし」


 いろいろ見てきてくれたんだな。ありがたい。


「鞍っていくらくらいするもんなんだ?」


「物によってまちまちではあるんだけど、そこそこ良いものってなると五万ってところかしら?」


「高っ!!」


 予想よりもかなり高くてびっくりしてしまった。

 村で過ごしていたら半年は余裕で暮らせるぞ!


『どれくらいの価値があるものなんだ?』


「ん-…あなたの好きなニンジンでいうと…八千本くらいかな?」


 そういう風に言われるととんでもなく高いな…。

 バリオスはあまり良く分かってはいなさそうだったけど、なんとなくは理解できたようだった。


「厩舎の場所も聞いてきたから、後で行きましょ」


「そんなことも聞いてきてくれたのか。ありがとな」


『厩舎って?』


「あなたが寝る場所みたいなものかな?」


 ミラはざっくりとバリオスに説明している。

 バリオスが今までどういう風に過ごしてきたかは分からないけど、そういう場所は初めてかもしれないな。


 さて、町に入る準備も整ったことだし、そろそろ入るか。

 ギルドに薬草も届けないとだし。


 俺たちは三人?で町に入った。



 町の中を歩くが、やはり俺たちは注目の的のようだった。

 バリオスが悠然と歩くその様は、どこか神々しく、霊獣っていうのも分かる気がする。

 貴族が飼っているような馬にも引けを取らないだろう…多分。見たことないから分からないけど。


 厩舎の場所は、冒険者ギルドよりも少し奥にあるみたいだから、先にギルドに寄ってから行こうという話になっていた。



 ギルドに着くと、今度はミラがバリオスと一緒にいたいと言っていたので、俺一人でギルドに入ることにする。


 受付の人に受注表と薬草を渡すと、本数に合った分だけの報酬が貰える。


 ―――報酬はどうしようか。


 昨日までは一人当たりの報酬が貰えていたから考えていなかったが、これからはこういう報酬の支払われ方が普通になってくるだろう。

 …ミラと相談するか。


 俺は外に出て、厩舎に向かう道すがらミラに相談してみる。


「なあミラ。今日の報酬なんだけど、分配はどうする?俺は、人数足す一人で割ろうと思ってるんだけど」


 俺は思っていたことを口にする。


「一人分増やすの?」


「ああ。パーティー用の資金だな。その都度出しても構わないんだが、その方が揉めずに済むと思うし、余計な計算もしなくて済むと思うんだ」


「それ良いわね!そうしましょう」


 案外あっさり決まったな。でもこういうのはちゃんと決めておかないと後々困るだろうし。


「それじゃ、これからは四等分だな」


『俺も貰えるのか?』


 バリオスは驚いている。


「当たり前だろ。一緒に薬草探してくれてたんだから」


「そうよ。あなたもニンジン欲しいでしょ?」


『…そうだな。それじゃ、ありがたく貰っておくな。でも、俺は管理出来ないからよろしく頼むぜ!』


「任せとけ」


 管理は俺がすることにしよう。ミラにお願いしてもいいんだけど、リーダーは俺だしな。


 今はまだ少額だから、いつでも取り出せるようにしておこう。

 額が大きくなったらギルドに口座を作るのもアリだな。



 厩舎に着き、手続きを済ませると馬房に案内される。


 管理の人もバリオスを見て驚いていた。


「こんな立派な馬見たことないですよ!」


 と言って興奮していた。


 馬房もたくさんあり、馬もそこそこの数がいるな。

 バリオスは物珍しそうに辺りを見回している。

 やはりこういう所は初めてのようだ。


 馬房に案内されると、バリオスも大人しく入っていった。


「それじゃ、明日迎えにくるからね」


「大人しくしていてくれよ」


『おう、任せとけ!』


 ミラはバリオスを撫でている。


 俺たちが馬房を出るまでバリオスはこちらを見ていた。

 俺たちも別れ際に手を振り、別れの合図を送った。バリオスも嘶き応えてくれる。


 今度は俺たちの宿探しだな。



 明日はクオルに行く日だ。

 そういや、クオルに着いたらミラの事も教えてもらえるんだったな。

 …俺の事も話す時がくるのか。受け入れてもらえるといいんだけど…。


 いろいろ考えてても進まねぇな!



 

 今日も美味い飯を食って良く寝て、明日に備えよう!

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