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16 騙す人と騙される人

 次の日、クエストは継続して受ける予定だけど、一応冒険者ギルドに足を運んでいた。

 ミラも付いてくるって言っていたけど、例のヤツがいるかもしれないと言ったら、待ってると言っていた。


 受付の人に話をすると、後は完了の報告だけでいいよ、と言われた。


 俺がギルドを後にしようとすると、昨日の大柄な男性が話しかけてきた。


「よう兄ちゃん!昨日はありがとな!俺たちも今日から合流するからよろしくな!」


 男性の後ろを見ると、彼のパーティーメンバーらしき人も一緒にいた。


「こちらこそよろしくお願いします」


「おい兄ちゃん。同じ冒険者同士なんだからそんな固っ苦しい挨拶はよしてくれよ!」


 そう言いながら笑顔でバシバシと肩を叩いてくる。あれ?なんかデジャブ…。

 男性のパーティーメンバーも同じような顔をしていた。

 それじゃ、こちらもそういう風にしないとな。


「それじゃあ、よろしく!」



 昨日、作業していたのもあって、商工会への案内を任されてしまった。


 商工会へ着くとミラと担当者が出迎えてくれた。


 担当者は男性たちを案内していき、俺は着替えを済ませ今日の段取りの打ち合わせをしていた。


 

 しばらくすると、着替えた男性たちがロビーに集まってきた。


「そういえば自己紹介がまだだったな」


 リーダーらしき大柄の男性が言う。

 そういやそうだな。勢いが凄かったから流されてしまっていた。


 昨日も声をかけてくれた大柄の男性は【パイオニア】というパーティーのリーダーで、ハリソンさんというらしい。装備はミラと同じ剣と盾みたいだが、剣はミラのよりも大きく、盾はミラのものよりも小さい。

 他には、槍使いのフィリップさんという男性。

 女性は、リーゼさん、マリーさん。それぞれ弓使いと、魔術師らしい。

 等級は全員緑だそうだ。



 俺たちも自己紹介を済ませ、作業の説明に移る。

 昨日作業していた内容を説明し、実際に現場へと向かう。


 現場に着き実際に作業をすると、ハリソンさんに驚いた様子で声を掛けられる。


「おいおい、こんな重そうな石蓋を片手で持ち上げるのか!?」


 昨日作業をしていた時は何とも思わなかったんだけど…やっぱり俺はおかしいらしい。同じくらいの体格をしているハリソンさんに言われてしまうとは。

 ミラの方をみてみると、やっぱりねという顔をしていた。昨日のうちに言って欲しかったな!


「いやーははは…。鍛錬の一環です」


 笑って誤魔化しておいた。



 作業は順調に進んでいる。


 男性が溝を浚っていき、女性が後から綺麗にしていく。

 人数が増えたこともあって、昨日よりもかなりペースが速い。今日でかなり多くの場所を綺麗にすることが出来そうだ。

 これなら担当者の人も喜んでくれるだろう。昨日よりも仕事に対して熱が入る。


 みんなも和気あいあいといった感じで作業をしている。

 俺はハリソンさんとフィリップさんとは気軽に話しできるようになったし、ミラの方もリーゼさんとマリーさんと仲良くなったみたいだ。



「それじゃ、俺はゴミを捨ててくるよ」


「おう、よろしくー!」


 俺は浚ったゴミを処理するために、所定の場所へと向かう。

 下ろすのも結構な作業なんだよな。上げるときよりは楽ではあるんだけど。



 ゴミを降ろしているとスコップに何かが引っかかる。

 なんだろう?


 泥をぬぐい綺麗にしてみると、それは綺麗なブレスレットだった。

 意匠も凝っていて、高そうなものだった。

 落とし物か…。これは商工会へ持って行かないといけないな。

 作業し終わったら持って行くことにしよう。



「ふぅ…。これで後はこれを持って行くだけだな」


 俺は作業が終わり、ブレスレットに目をやっていた。

 すると、声を掛けられる。


「すいません、何をされているんですか?」


 俺はそちらに目をやると、女性が立っていた。

 恰好からして【聖珠教】の神官かな?黒と金でデザインされた服を着ている。



 聖珠教というのは、文字通り聖珠を信仰している宗教だ。

 詳しいことはあまり知らないが【聖国サマイト】の国教にもなっていて結構な数の信徒がいるって話だ。 

 ちなみに、俺の信仰しているのは【精霊教】って宗教だな。まあ今後詳しいことを話すこともあるだろう。



「溝掃除して出たゴミを捨てているんですよ」


「そうだったんですね。それでその手に持っているのは?」


 女性は俺の手に持っていたブレスレットをみて言う。


「ああこれは落とし物ですね。今から商工会に届けるところです」


「へー。見せてもらってもいいですか?」


「ええ、構いませんよ」


 俺はブレスレットを少し綺麗にしてから女性に見せる。

 女性は熱心に見ている。少しして口を開く。


「これ、私のものです」


「そうだったんですね。お返ししたいと思うんですが…このままじゃ汚いので、綺麗にしてからお渡しします。一緒に商工会へ行きましょう」


 持ち主が見つかったのなら綺麗にしておかないとな。


「いえ、このままでいいですよ」


 え?このままじゃ汚いのもそうだが、臭いもするぞ?


「早く返してください」


 俺が少し戸惑っていると女性がまくしたてるように言う。


 そこまで大事なものなのかな?



 俺がブレスレットを渡そうとすると、また声を掛けられる。


「おーい。クレイグ君」


 俺と女性が声のする方を見ると、ロニーさんだった。

 ロニーさんはこちらに近づいてくる。


「いやー、クレイグ君のおかげで町の臭いが少なくなって過ごしやすくなったよ。そちらのお嬢さんは?」


「あ、ええ。これの持ち主の女性です」


 俺はブレスレットをロニーさんに見せる。

 ロニーさんも熱心にみている。


「これは名工だね。大陸の北部で結婚相手に送るものだよ。見つかって良かったね、お嬢さん」


 ロニーさんがそう言う。

 

「え、ええ、そうね。見つかって良かったわ」

 

「でも、聖珠教って結婚出来るようになったの?俺は聞いたことないな」


 え?聖珠教って結婚出来ないのか?

 女性は動揺しているように見える。


 一応()()みるか。


 ……黒いな。



 !?



 鋭い視線が突き刺さる。


 視線の先は…ロニーさんか…?

 ロニーさんを見るが…いつものにこやかな顔だ。

 ……なんだったんだ?



 女性はそのまま何も言わずに立ち去った。


 危ねぇ。俺一人だったら渡してしまうところだった。


「助かりました。俺一人だったら渡してしまうところでした」


「いいんだよ。君はまだ若いから、騙そうとする人もいると思う。気を付けてね」


 今後気を付けるか…。声をかけられたら真っ先に()()事にしよう。


「それじゃ、俺はもう行くから。引き続き頑張ってね」


「ええ。ロニーさんも調査頑張ってください」


 俺はロニーさんに別れを告げてその場を離れた。



 その後は特に問題も無く作業が進んだ。

 落とし物は俺が持って行くことに決まったし、これで問題は起きないだろう。


 俺たち六人は商工会に帰り、風呂に入ってまた合流する。

 ハリソンさんからの誘いで、六人で飯を食いに行くんだ。


 空いている店を見つけて、みんなで食事をとる。

 昨日と同じように豪華な飯を食っていると、周りの冒険者の人たちの質問攻めにあう。

 今回はハリソンさんが説明をしている。みんな昨日のハリソンさんと同じような反応をしているな。


 これは明日には溝掃除要員がもっと人が増えていそうだ。

 商工会の人も町の人も喜ぶし、作業自体もすぐに終わるような気がするな。



 俺は明日からの事に思いをはせていた。


 明日も頑張るぞー!



◇◆◇◆◇



「ああ、俺だ。そっちはどうだ?」


「――――――――――」


「そうか、こっちも順調だよ。あと数日で落ち着くだろう」


「――――――――――」


「そういえば、面白い子がいるんだ」


「――――――――――」


「ああ。《あの力》だ」


「――――――――――」


「そうか。じゃあまたな」

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